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十二属性戦士物語【Ⅲ】――光と影――  作者: YossiDragon
第二章:食い止めよ、災厄の陰謀篇
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第十三話「天の神、降臨!!」・2

「まだ決着がつかないのか?」


 雷人が急かす。


「まあ、そう焦らずにもう少し待ってて!!」


 セイラが必死に弁解する。その表情は切羽詰っていて明らかに焦りの色が見え隠れしている。するとオドゥルヴィア+オルグロスが言った。


【そろそろ手がなくなってきたのではないか?】


 せせら笑うその言葉にセイラがムキになり対抗する。


「そういうあなたこそ、四本の手が一つになって猫の手も借りたい状態なんじゃないの!?」


【ふんッ! バカにしていられるのも今の内だ!!】


 オドゥルヴィア+オルグロスは手に持っているランスを思いっきりアドラスに向かって投げつけた。アドラスは間一髪でそのランスを自慢の歯で食らいつくとそのまま二つにランスをへし折った。そして次の瞬間、アドラスは己が習性に身を任せ、オドゥルヴィア+オルグロスに喰らいついた。


【ぐわぁああああああああぁああああがぁあああああああッ!!! お、おのれェエエエエ! 放せ、放さんかッ!!】


 必死に残っている一本の腕で最後の抵抗をするオドゥルヴィア+オルグロス。しかし、一度狙った獲物は決して逃しはしない。それがアドラスの特徴の一つでもあった。


「いい加減諦めたらぁ~? もう、あなたの負けは確定しているのよ?」


 セイラの言葉と同時にその目つきが、オドゥルヴィア+オルグロスの激しい抵抗の動きを一瞬止めた。


――何故、だ……。どうしてそんな目をする。その眼はあいつの――レイヴォルの――レイヴォル=カオス=フィグニルトの目だ。レイヴォル、我は間違っていたのか? この世界を我が手にする。この世界で最狂――最強の力を手に入れる。そんな馬鹿げた夢は、やはりこの我には無理だったのだろうか。もしもこの我がお前と再びあっちの世界で出逢うことが出来るのならば、もう一度この我の良き理解者に、なって……くれ……。それが、今の我の――俺の一番の、……夢、…だ。



 V-orgrossⅠ最終形態と化したオドゥルヴィア+オルグロスの体は元の姿を取り戻し、生えていた角もその痕も綺麗さっぱりなくなっていた。しかも、肌の変色した色も元に戻って血の気を帯びてむしろ赤みがかっているくらいだ。

 オドゥルヴィアは何かを十二属性戦士に伝えようとしたのか、彼らの方に視線を向け無理に笑みを浮かべて何かを口パクで喋ると、アドラスに食らいつかれたまま息絶えた。そのことを確認したセイラがアドラスに合図を送ると、アドラスは鋭く尖った歯の生えている大きな口を閉じ、口をモグモグと動かしてオドゥルヴィアの死体を噛み砕いた。凄まじいグロテスクな音が周囲に鳴り響く。そういう系統がてんでダメな時音や菫にとってはとても耐え切れるものではなかった。その場に耳を塞いで蹲ったり、両手で顔を覆って視界を遮るなどしてその場から離れる中、セイラは口を少し細めてその光景を神をバカにした罰と言わんばかりの眼差しで見ていた。相変わらずの蔑んだ視線を向ける中、他のメンバーの中には悲しそうな表情をしていながらも、安堵のため息をついている者もいた。


「みんな…お疲れ様。大変だったでしょ? もう周囲に戦力となる敵はいないようだから安心していいわよ?」


 セイラの言葉に皆はその場に力が抜けてしまったかのようにヘナヘナと座り込んでしまった。


「ところで、その……WWWはどうするのだ?」


 雷人がセイラの話を途中で遮ると、キレて死に追いやるということを先程の一連で理解したため、注意深く話の終わりを探りながら訊いた。


「何? 気になるの? それとも探究心が疼いちゃう?」


「いや、そういうわけではないが」


「ふぅん、まぁどっちにしてもダメー。解剖とか解体とかさせてあげたりしないんだから。それに、これはこっちで――」


「このわしが責任を持って片づけておこう!」


 そのドスの利いた声に十二属性戦士は二つの意味で驚いた。

 一つは、こんなに大きなWWWを、しかも全て回収するという気前の良さ。もう一つはセイラの話を途中で遮って死への恐ろしさを知らないのか? という意外さ。それらが十四人を二つの意味で驚かせていた。その姿を一目見ようと暗闇に立っている一つの人影に目を凝らす。そこに立っていたのは、黒いローブに身を包んだ一人の老人だった。白髪に白い口髭と顎髭。さらにローブの右袖を肩まで捲り上げ、その程よい筋肉のついた肩の部分から二の腕辺りまでに謎の刺青が入っていた。中でも一番印象的だったのが、その見るだけで平伏し跪いてしまいそうな威圧感放出しまくりの真っ赤な真紅の双眸だった。しかも、体からは一本の長い尻尾の様な物が飛び出している。


「何だ、この尻尾みてぇなのは?」


 爪牙が訊く。どうやら、この男はただ者ではないらしい。だが、だとすれば確率は二分の一。だが、一つは確実にありえない……となれば、残るのはもう片方……即ち、この男は神族の者に違いない。そう思った十二属性戦士は、少し後ずさりし後ろへ後退した。セイラはというと、話を途中で遮られイライラを押さえられずにいる。顔を俯かせ体をプルプルと震わせまさにキレかかっている状態だ。怒りのパラメーターが今にも頂点に達し、火山が噴火するような勢いだった。


「……っく、ちょっと何なのよあんた!! 私の話の邪魔するんじゃないわよ!!」


 セイラがオドゥルヴィアの時と同様手から亡びの魔力を極限に練り込んだ波動をローブの老人に向かって放ってきた。しかし、その老人はニヤッとヒゲの中に隠れた白い歯を見せると、片方の手をかざしその波動を掴むと少し力を込めてプチッ! とプチプチのように握り潰した。それには十二属性戦士だけでなく攻撃を仕掛けたセイラ自身も驚いていた。


「その力、あなたまさか!?」


 セイラが何かを思い出したのか、急に顔色を蒼白に染めた。すると男が喋り始めた。


「どうやら自分の親の顔も忘れてしまったらしいな。最近監視の状態がすっかり悪いと思ったら、随分と自分の力に自信を持っているようだ。わしが留守中の間は、天界の力バランスはお前が保たなければならないというのに……。ただでさえ大神――ゴーミスト亡き今、お前を含めた兄妹三人がしっかりしなければならんのだ! それなのに、お前と来たら全く……監視も様にならないのか!!」


 老人の怒りと同時に空から雷が大轟音と共に落ちた。落雷の場所が近かったのか、大轟音が割と大きく耳元に聞こえてくる。


「ご、ごめんなさい……お父様。でも、私も少しは頑張ってるのよ? だって、兄さんよりかは少し劣るかもしれないけど、ゴウラやナミよりかは私の方が――」


「黙れェ! 人と比較するな!!」


 ドスの利いた声が、セイラの体を(すく)ませた。その声に大地が震える。


「お前は大神の次に生まれた神だ。大地の神と海の神と兄妹関係であるからこそ、兄妹の絆を利用して上手くバランスを取らなければならないんだぞ? 本来ならば大神も加わって天・海・地・魔の四つで丁度いいバランスを作らなければならないというのに……」


 セイラの父親だという老人の話はすごく長く、十二属性戦士もただ大人しく聴いているのは退屈だった。しかし、途中で話しかけようとすると鋭い目つきでこちらを睨み付けてくるからたまらない。十二属性戦士にとっては敵よりも恐ろしい相手かもしれない――そう思った。

 その時、ふと葬羅が空を見上げた。急に周囲が暗くなってきたことに気付いたのだ。そして、空を見るや否やあることに気づき、側に居た楓の肩をポンポンと叩いて呼び、空を指さした。それを見た楓がつられて視線を上にあげると、そこには不思議な現象が起きていた。太陽に月が重なり、綺麗な光り輝く円形が出来ていたのだ。まるでそう――巨大なリングの様に。


「何あれ?」


 楓の声に気付いた雷人が、空を見上げると「な~んだ」という様に言った。


「ああ。あれは皆既日食だ」


『カイキニッショク?』


 葬羅と楓の二人が声を揃えて言う。他の皆は、セイラと老人の会話に夢中で雷人達の話が耳に入らないようだ。


「太陽と月の二つが重なり合って出来るこの現象は、そう何度も起きる事がじゃなくてな。しかも、その時に出来るダイヤモンドリングがとても美しいという話だ。道理でさっきから少し辺りが暗いわけだ」


 雷人が腕組みをしてうんうんと頷く。

 その時、セイラ達の方から大きな声が聞こえてきた。


「お願いっ! それだけは勘弁してぇ~!!」


 三人が振り返ると、そこにはセイラが何かを必死に拒んでいる姿があった。


「どうかしたのか?」


 他の十二属性戦士に説明を求める雷人。


「何でも監視の状況も甘く、世界の力バランスを(おびや)かした罪とか何とか言って罰を与えるらしいんだが」


「何なんだ、その“罰”というのは?」


 雷人がセイラ達を一瞥して爪牙にさらに訊いた。


「俺にもよく分かんねぇ。だが、どうやらあの顔の表情からして相当嫌な物のようだぜ?」


 爪牙の話を聴いていた雷人は考え込んだ。セイラは首の後ろの部分の服を掴まれ、まるで猫のようになって引きずられている。


「ねっ、お願い! せめて“あれ”じゃなくて他の罰に――」


「媚を売ろうと無駄だ。他の兄妹はこの罰を受けてきたというのに、お前だけまだ一度も受けていないだろう! 一度くらいはこの罰を受けろッ!!」


「そ、そんなぁ~!?」


 セイラが目をウルウルさせて手をスリスリして媚を売り続ける。首根っこを掴まれたように見えるその図とセイラのあげる猫撫で声からまさに猫にしか見えない。しかし、老人は頑として首を縦に振らず罰を強制的に受けさせようとして聴かない。十二属性戦士も下手に火の粉を飛ばされては適わないので口は挟まずずっと黙ったままでいた。そんな中、セイラは心の中で思った。


――このままじゃまずい! ただでさえ父さんは怖いのに、その上よりにもよって私が一番嫌いな“あの罰”だなんて。例え今一番兄妹の中で上だったとしても、無理無理絶対に無理っ!!



 一生懸命心の中で否定の言葉を上げ首を振るセイラ。

 その時、セイラの頭に一つの考えが思い浮かんだ。同時にひらめきランプに明かりが点く。


「そうだっ! ねぇねぇ父さん。少しで良いから姪のフィーレに会いに行っちゃダメ? ホント少しでいいの!」


 娘の言葉に老人は少し口を閉ざしたが考えを改めるつもりはないらしく――


「駄目だ!! フィーレに逢いに行くのは罰を受けた後でも良かろう!!」


 という冷たい一言だけを娘に浴びせた。


「そ、そんなぁ~……!! い、いやあああ!」


 その時、耐え兼ねた暗夜が前に進み出た。


「おい、いい加減分かってやれよ! そいつはな、この世界の秩序を乱してたオドゥルヴィアって魔豪鬼神を制裁しに来ただけなんだって!!」


「素人に口出しされるわけにはいかんな!! 第一、例えこいつが秩序を乱す者を制裁していたとしてもバランスの役目、及び監視を怠っていたことに変わりはないッ!! 何せここまで来るのに何もこいつは手を加えて来なかったのだからな……」


 その言葉に対してすかさずセイラは言い訳した。


「そ、それは天界でもいろいろ事件があって!!」


「言い訳は神界に戻って思う存分ゆっくり聴いてやる」


 そう言って男はニヤリと白い歯を見せ、神界への扉を開いた。ふと中を覗くと、神界というからすごく神々しい感じがするのだろうと思っていたが、実際には予想の斜め上をいくものが見えた。骸骨だらけの殺風景な部屋。まるで、仕置部屋とでも言わんばかりである。そして、最初の一歩を踏み出したその時、雷人が真剣な面持ちで言った。


「ところで、一つ訊いていいか?」


「ん、何だ?」


「あんた、名前は?」


『えええぇぇぇっ!!?』


 雷人以外の十二属性戦士メンバーが声を揃えて驚きの声をあげた。


「ちょっと、いくらなんでもこんな状況でその質問はないんじゃないの?」


「そうだよ! セイラさんのこともちゃんと考えてあげてよ!」


 細砂と輝光の二人がいまいち空気の読めていない雷人に文句を言う。


「いや~、さっきから名前がすっごく気になっててな。いつ訊こうかずっと迷ってたんだ。そしたら何か帰ろうとしてるし、いつ訊けばいいんだ? とずっと迷ってたら『……今でしょ!』という天の声が聞こえて来てな」


「ま、まさか。さっきから唸ってたのはそれが原因だったんスか!?」


「そうだ」


 残雪の言葉に雷人は当たり前だと言わんばかりの真顔で縦に頷いた。


「……サイテー」


 ボソリ、セイラがそっぽを向いてそう呟いた。そんな会話を終えた所で老人は自分の名を言った。


「わしは破壊の神『ザキュリス=ヘブルス=ド=ウィリアムズ』だ」


 その言葉に訊いた本人が驚いた。


「誰なのそれ?」


 雫が小声で雷人に訊く。


「死の目を持つという噂で有名な破壊の神だ。しかしまさか、その神が天の神や大神達の父親だったとは……」


――破壊の神の孫にあたるブラックやフィーレなどのことを考えると信じられないことだが、娘であるセイラにおいては確かに納得出来るかもしれない……。あの眼にあの表裏の激しい性格。それらを見れば誰でも思う事だろう。



 そんなことを顎に手を添えて心の中で思う雷人や目を丸くしている十二属性戦士メンバーをよそに、ずっとブツブツ愚痴っているセイラを引きずる破壊の神――ザキュリスは、そのまま神界へと消えて行く。そして入口が閉じようとしていた瞬間、セイラが大声で十二属性戦士に叫んだ。


「すぐに戻ってくるからそこで待っててよ!?」


 セイラの言葉に皆は黙ったままだった。そして十二属性戦士以外誰もいなくなった頃には、皆既日食も既に終わっていた。


「それで、これからどーすんだ?」


 爪牙が訊く。


「無論夢鏡城に戻るさ。今までの記録や報告などをしないといけないからな!」


 雷人の言葉に時音が「えっ? セイラさんは待たないの?」と、眉毛を少し下げながら訊いた。


「な~に、神なんだ。すぐに追いつくだろ?」


 ダルそうにそう返答した雷人は、時音の疑問を促すと夢幻に話しかけた。


「お前確か、空間の力を少しばかり持っていたよな?」


「よう知っとったな。ああ、持っとるで?」


 夢幻が持っているということを確認し終えると、急いで皆を集めた。そして夢幻に合図を送った。


「よっしゃ! 全員揃ったみたいやし、瞬間移動すんでぇ~? 準備はええか? 三……二……一――」


 零を心の中でカウントすると同時に瞬間移動しようと力を込める。しかし事件は起きた。


「……うっ、んっ! あ、あれ? さっきと同じ場所だ。本当にここが夢鏡城なの?」


 恐る恐る瞼を開けた輝光が周囲の景色を見渡して訊く。


「いや、これは――瞬間移動していない!?」


「どういうことだ?」


 今度は照火が訊いた。


「私にも分からん」


 雷人が悩みながら辺りを見ていると、残雪が「ああああああああああああ

ッ!!?」と絶叫めいた大声をあげた。


「何事だ騒々しいッ!!」


「あれッ! 照火の頭の炎が消えてるッス!!」


 それを聴いた十二属性戦士は一斉に視線を照火に向けた。なるほど確かに、いつもの頭の炎が消えている。これは一体どういうことだろうか? メンバーは頭を抱えて悩んだ。原因は何か分からないが、どうやら瞬間移動の失敗に照火の頭の炎の消失という点から、十二属性戦士メンバーは力を失くしてしまったようだ。だが、このままでは夢鏡城を守ることは愚か、敵からの襲撃にも対応出来ない。何せ、今までは力を持っていたため並の戦闘能力はあったものの、今の力のない彼らなどただの平均十五歳の子供なのだから……。

 十二属性戦士はその場で沈黙してしまった……。

というわけで、天の龍アドラスに喰われオドゥルヴィアは儚い最期を遂げました。こうして脅威は去ったわけですが、そんな救いのヒーローとも言える天の神の苦手とするお父さんこと破壊神のザキュリスがやってきました。

死の目を持つと恐れられるこの人の血を引くだけあって娘のセイラもキレると怖いのですが、そのセイラを怯えさせるほどザキュリスは倍怖いようです。しかし、そんな彼に対して冷静に名前を尋ねられる雷人は勇者ですね。

そして、突如力を失い使い物にならなくなってしまった十二属性戦士。

果たして原因は何なのか。また、天の神セイラが酷く嫌がるあの罰とは一体。てなわけで、次回最終回です。お決まりの登場人物紹介はエピローグ後に載せます。

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