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十二属性戦士物語【Ⅲ】――光と影――  作者: YossiDragon
第二章:食い止めよ、災厄の陰謀篇
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第十二話「白衣の裏に隠されし過去と陰謀」・1

 オドゥルヴィア博士はふわりと宙に浮かびながら骸骨の広がる足場に降り立った。そして、目を瞑ったまま頭を上げしばらくすると、十二属性戦士に向かって邪悪な紅蓮の双眸を見開かせた。その眼力は凄まじく、目に宿っているかのようなオーラが今にも十四人の戦士に襲い掛かってきそうな勢いだった。


「どうやら、そっちも本気という感じだな……オドゥルヴィア博士!」


「無論だ……。我もあまり時間が無いのでな! 貴様らには早く死んでもらわねばならぬのだ!!」


 その言葉に雷人はメガネをカチャリと上にあげ、真剣な面持ちでオドゥルヴィア博士に言った。


「どうしてこんなことをしたんだ? 貴様はあの有名なクロノスの研究員の一人だったのだろ?」


「だから何なのだ?」


 馬鹿にしたようなオドゥルヴィア博士の言い方に雷人はムッとしながら言った。


「あのオルグロスだって元々は人間だろ? ついでにとオルグロスという名前も少しばかり気になったので調べさせてもらった。それによれば、オルグロスというのは同じ研究員だったんだろ? クロノスに存在する三つのグループ、GAUN、WORLD、JACKの内、GAUNに所属していたのがオルグロスだ」


「その話は前にも聴いたわッ!」


 口調を強めてオドゥルヴィア博士はそう口にした。眉間にシワを寄せ、恐ろし気な表情をとる。しかし、次の瞬間、フッと鼻で笑うと口の端をニヤリと吊り上げ、十二属性戦士を見渡すと口を開いた。


「そんなにも気になるのであれば教えてやろうではないか。もう間もなく消え去るこの世界の消滅と共に冥土の土産にでも持っていくがいい。そう、あれはもう何十年――否、もしかすると何百年も何千年も前の話になるかもしれん。我は、いつものように早朝に起床し朝食を摂っていた。研究仲間の者共と毎日毎日楽しく研究の日々を続けていた。そんな毎日の中で我は思った。――もっと面白い研究がしたいと。そして、その何気ない希望がついに叶う日が来たのだ! それはほんの少し後のことだった。一人の老いた老人と、三人の若そうな連中がやってきて我らクロノスにある設計図を見せたのだ。あの時の事は今でもはっきりと覚えておる……。そやつらこそが、あの有名な大神と世界四大神だということは後になって判明した。その四人は我らとは遥かに違う技術を持ち合わせており、その力は今の現代科学では証明出来ぬ物ばかり。クロノスの幹部格である我も含めて三チームではそれぞれ議題が持ち上がった。どうやってこの設計図に書かれてある兵器を作り出そうかとな」


 ふと天を仰ぎ見るオドゥルヴィア博士。白い歯を見せ、口元の端を吊り上げ不気味な表情を浮かべるその姿はまさに魔豪鬼神。人間の皮を被った獣だった。

 オドゥルヴィア博士は続ける。


「ある日、老人が死んだ。厳密的には、壊れたと言った方が正しいのかもしれん。老人――大神は既に死んでいたのだ。何でも仮の肉体に魂を入れていたらしくてな。肉体を失った大神は姿を消し、世界四大神の三人は途方に暮れ設計図の話をもちかけようと取り次いではくれんかった」


 大神と世界四大神という言葉を聞いて少し表情を険しくさせる十二属性戦士。つい先刻、行方不明だと言われていた闇の神に出会ったからである。しかし、オドゥルヴィア博士は十二属性戦士の気持ちなど完全無視で話を続けていく。


「……光と影計画による兵器の制作は突然破棄となった。理由を問い詰めたが、答えてはもらえんかった。設計図は極秘に処理されたが、我は諦められず、何とかして兵器を作り出したいと心の内で何度も願いに願った。すると、我が願いが届いたのか、ある日、後から判明した未完成状態の設計図が完成形で届けられた。それを世界四大神の目を盗んで欲望のあまり設計図を盗み出してしまった我は、無論、欲望に(まみ)れた邪悪な手による暗黒の一筆を加えてしまった。そう、プログラムを書き換えたのだ。必ず、この設計図に書かれた兵器を我の物にしようと……な。それから半年の月日が流れた。神々の目を盗んで制作は順調に進んでいき、クロノスのメンバー全員と協力し合ってようやくその兵器は完成した!! その兵器こそ、本来世界を美しく変えるために創られるはずだった創世破壊兵器『Wenabekal・Walmgant・Wilyveras』……、通称『WWW(スリーダブル)』と呼ばれし物だ!!」


 高々と両手を大きく開き、威張るように堂々と仁王立ちするオドゥルヴィア博士。同時に天から大音量の轟音を鳴らしながら雷鳴が大地を揺らした。その音に怖がりな一部の女性メンバーが悲鳴をあげてその場に蹲る。

 オドゥルヴィア博士は天から降り注ぐ大量の雨など気にも留めていないようでくつくつと笑い出した後、再び話しだした。


「時は満ちた。我はその設計図に細工をしておいたおかげでいとも簡単にそれを自分の物に出来た!! そして、この世界を自分の物にするための計画を進めた……。それこそ大神達が立案した『光と影計画』を利用して考え出した災厄なる陰謀『世界の理破壊計画』。その計画を進める中で、我はある人間を失った。我を作り出したと言っても過言ではない男――レイヴォル。この男があったからこそ、今の我がいる。古の昔より存在した七体の魔豪鬼神。そして、新たなる時代に誕生した魔豪鬼神オドゥルヴィア。我はあらゆる力を掌握するために誕生したのだ。数千年も前に生まれた我は多くの力をこの身に宿した。今や我は神族の力をも得ている。力を得るためであれば我はどんな非人道的な事も平気でやり遂げて見せよう! 貴様らが戦ったであろう闇魔法結社、あれは元々我が生まれた時代に誕生した組織の生まれ変わりよ。不要になったために、蛇の頭を失った奴らを上手く利用してはみたものの、やはり役立たずは役立たずだな。ロクな仕事もまともにこなせやせん。我が計画は順調に勧められた。駒を次々に進め、邪魔をするものは誰であろうと殺す。だが、大きな反乱はそこで起きた。首謀者は、あろうことか――我の弟子であるティリマンだった。あやつは、あやつだけは信じていたのに……。いつも我の意見に賛同してくれていた。今回の意見にもあやつは賛成してくれると信じていたのに――あやつはそれを易々と裏切ったのだ!! その瞬間、我の冷静さは失われた――理性と共にな。ヴィンセントが密かに勧めていて禁止とされた研究の実験に我は手を出した。我の心は黒く汚れていた。もしかすると、その心をWWWは喰らっていたのかもしれん。今ではそう思う。そしてヴィンセントと共に研究して完成した薬品――それが『OV―Ⅰ(オドゥルヴィア=ヴィンセントのワン)』、今では『V-orgross』と呼ばれる物だ。そして、研究に実験は必要不可欠……だろ? そこで我は考えた。どうせなら我が災厄の陰謀に非協力的である者へこれを投与してくれようと。その最初の相手がオルグロスだったのだ。だが、無理からぬことであろう? 裏切り者には相応しい罰――制裁を与える必要がある! だからこそ我はこれの実験台としてやつを使ったのさ!! ……グフフフ、グフフハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」


「何てヒドイ事を! その人もただ陰謀に参加したくなくて協力していなかったのに、それなのに……そんなことのために実験台にされるなんて、あんまりだわ!!」


 楓の言葉にオドゥルヴィア博士は青筋を立て、紅蓮の瞳を一層邪悪に光らせ罵声を上げた。


「黙れッ! 黙れ……だまれだまれだまれだまれぇええええエエェェエエエエエッ!!! 貴様ら十二属性戦士に何が分かるッ! この我の苦しみが分かるのか? ただ力を追い求めることしか知らぬこの我にどうしろというのだ! 我は力を得てこそ最強でいられるのだ! この腐敗した世界を書き換え、破壊し新たなる世界を創造する! それが我が災厄の陰謀にして野望! そしてレイヴォルの夢だッ!! あやつの我が生みの親の願いを叶えんために我は奮闘する! 貴様らに邪魔はさせん! 我からレイヴォルを奪った三代目十二属性戦士の子孫である貴様らにはッ!!」


 今までに思いに思っていた言葉を全て吐き捨てたようなそんな感じがした。オドゥルヴィア博士は声を枯らさんばかりに叫び、肩で息をしながら十二属性戦士を強く睨みつけた。その目には明らかに憎悪の念が見られる。


「クックック、まぁそのおかげでV-orgrossは完成し、最終形態までも進化を遂げた! 無論、他の裏切りメンバーにも投与したさ……男女関係なくなッ!! そして災厄の陰謀を進めるためにはあの場所はあまりにも窮屈すぎる。だから滅ぼしてやった! クロノスなど我には不要な組織だったのだ! 我の巨大な器にはあの場所は狭すぎる! 素晴らしかったぞぉ? 我が持ったあらゆる力を駆使して無能な無属性者共を嬲り殺していく様は……。ジェシカもアリスも、ノイズもアダムも……あらゆる者達がこの我に許しを請うた。あの泣き叫ぶ女共の声……悲痛な声をあげ、男のクセに情けなく泣きすがる者共……傑作であった。グフ、ガハハハハハハハハハハッ!!!」


「く……て、てんめぇぇぇぇえええええええええええええええッ!!」


 奥歯をギリと噛み締め今まで耐えに耐えていた照火だったが、さすがに我慢の限界を迎えたのか、拳に炎を纏わせオドゥルヴィア博士の顔を思い切り殴り飛ばした。

 殴られた博士はそのまま宙を舞い地面に倒れ伏した。


「ッく……! ふんッ、そんなもので気が済むのならば殴ればいいッ!! 我は痛みなど感じはしないッ!! このまま夢鏡王国が消えようが構いはせん!! この世界は新たな世界――新世界として生まれ変わる。あらゆるものが平等となる世界! そしてその美しい世界で最強となった我は最強の力を持って世界を支配し、世界が我が物になるのだ!! ンフフ、グフ、グヒ、ヒヒヘ、ヒヒ、ギャハハハハハハハハハハハハ!!!」


 だんだんと言葉がおかしくなりつつあるオドゥルヴィア博士。目的意識がよく定まっていないのだ。世界を平等にしたい。しかし、世界を自分の物にしたい。それでは平等ではない。最強の力を得たい。世界を支配したい。それでは人々の不満は取り除けない。だが、言葉をかけようにも完全にオドゥルヴィア博士は狂い始めており、高笑いも別の物になってしまっていた。博士はゆっくりと立ち上がり、手を空に向けて掲げ笑った。

 刹那――天空の稲光が凄まじくなり、天が怒っているように思えた。しかし、世界を、あらゆる万物を馬鹿にするかのようなその嘲笑を、目の前の怪物はやめなかった。


「これで分かっただろう? 貴様らにこの我は止められはせぬッ!!」


 そう言ってオドゥルヴィア博士はポケットからスイッチを取り出すと、そのスイッチを押した。


「貴様らのしつこさは今までこの目で見続けてきた……。だからこそ、こやつで貴様らの息の根を直に止めてくれるわ!! こいつは貴様らも戦ったことはあるまい? ……V-orgross第四形態だ!!」


 目を激しく血走らせその場から動くと、先程まで博士が立っていた場所に、体が赤褐色に染まった怪物の姿があった。しかし、肝心な顔が存在しない。胸の部分には真っ赤な真紅のコアが埋め込まれ、まるでそのコアが瞳の様にさえ思えた。十二属性戦士はその瞳を見ると、なぜか顔や頬から冷や汗が流れた。


「くっ! なん、だ? 今までとは訳が違うようなオーラを、肌に感じる……」


 暗夜が手に付いた脂汗を見て言った。

 V-orgross第四形態は唸り声もあげないが、その腕は凄く逞しく人間に近い感じがした。


「なんで、これ……頭がないの?」


 輝光の疑問に感じて呟いた一言に、オドゥルヴィア博士は不気味な笑みを浮かべながら答えた。


「せっかくだから教えてやろう。この第四形態は――実は一つではないッ!!」


 その言葉に皆が驚愕した。


「どーゆーことだ?」


 白夜が刀で怪物の腕に切りかかりながら言った。


「ここにいるやつはV-orgrossⅠ第四形態。だがそれだけではない。貴様らは二年前に修行をしにとある場所へ趣いた事があるだろう?」


「確かにあったけど、V-orgrossなんていたっけ?」


 オドゥルヴィア博士の言葉に細砂が過去の出来事を振り返る。


「厳重な金属製の扉から出て来た暗黒物質の様な怪物のことだ! 我が密かに手配していた怪物でな。封印された後も我が仲間が準備を進めていたのだ。第一の封印、第二の封印が解かれていたのも我が仲間のおかげといえよう」


「そうか。白無龍、ドヴァースが言っていたあの御方ってのは貴様だったのか」


 合点が言ったと、雷人が手を叩く。すると、ようやくオドゥルヴィア博士に与えられたヒントに時音がハッ!となって思い出したらしく、やや確信をついていないような感じの口調で言った。


「ま、まさか……あの目が三つあって頭と腕のある怪物のこと?」


「グフフ。ご名答。その通りだ! あの怪物こそ、V-orgrossⅡ第四形態だ!!」


 オドゥルヴィア博士が手を広げ誇らしげに言う。


「V-orgrossⅡ第四形態……」


 楓はその名を呟きながら怪物を一瞥したが、やはりイメージが少し違う。


「要するに、あれがさらに進化したのが私達が戦った、あの巨人ゴーレムみたいなやつ?」


 菫が怪物の攻撃を躱しながら大声で訊いた。


「ほう? 冴えてるな、猛毒雲菫。その通りだ! 顔から胴体が出現し、さらにそれが育って最終形態――あの大男が生まれたというわけだ。つまり、瞳が胴体に移動した際に五つに増えたというわけだ!! その名残として、尻尾にⅡ第四形態の面影や緑色の痕が残っていただろう?」


 オドゥルヴィア博士の言葉に皆が一度間合いを取って記憶を振り返る。


「た、確かに……」


 雷人が拳銃に弾を詰めながら緑色の痕のことを思い出した。そして弾丸を装填すると、怪物のコアめがけて引き金を引いた。しかし怪物は、自らの強靭な腕でそれを防御した。


「やはり、あの動きからしてあのコアは弱点のようだな」


 まるで先程撃った銃弾はオルグロスのコアが弱点であることを確認するために撃ったのだ、と言わんばかりの口調で雷人は喋った。他のメンバーもそのことを理解し、十二属性戦士はそのコアをなるべく狙うようにして攻撃を再開した。十二属性戦士はとりあえずオドゥルヴィア博士のことは放っておいて、目の前の怪物――V-orgrossⅠ第四形態を倒すことに専念することにした。


「ところで、どうすればあいつを倒すことが出来るの?」


 輝光が武器を持ってオルグロスの体中を眺めたが、やはり弱点と思われる部分はあのコアの様な目だけだった。しかも、さっきよりも目が赤くなり怒りを表しているように見える。腕はうねりながら動いていて、関節がまるでくっついていないかのように怪物と化したクロノス研究員の体は怪物の意思に任せ人間としての動きをしていなかった。むしろ原型を留めていないといった方が妥当だろうか……。そんな哀れな姿を見る十二属性戦士の目はとても悲しそうだった。

 そんな中でオドゥルヴィア博士は、相変わらず何かを企んでいるかのような笑みを浮かべていた。

というわけで、オドゥルヴィアの過去を明かしました。まぁ、全てはありませんが大まかに。そしてその過去で結構いろんな登場人物が出てきましたね。ヴィンセントとかオルグロスとかティリマンとか。後はジェシカとアリスですかね。一応、ヴィンセントとオルグロスはそれぞれノイズとアダムと同一人物です。クロノスの三チームのメンバーです。Ⅳで出ます。そして、結構重要な鍵を握るのがこの人、レイヴォルです。Ⅳで出ます。ここで名前を出したのはその布石です。はい、フラグです。

そして今回の回はえらくオドゥルヴィアの台詞が長くて自分でもびっくりしました。途中で区切っていますが、最初は一気に全て台詞喋ってたんです。いやはや、長ゼリフお疲れ様です。

さて、次回は後半で大きく物語が終盤に近づきます!

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