第十一話「三要素の消滅」・1
照火は残雪と一緒に仮面と戦っていた。目から何度も放たれるビームを躱しながら攻撃を繰り出す。しかし、その攻撃は相変わらず軽やかな動きであさっての方向に飛んでいく。体力的に限界が近づいていた照火と残雪。
と、その時、加勢が現れた。爪牙と雫である。
「僕達も助太刀するよ!」
「俺に任せとけ!」
雫が三叉皇の水槍で仮面を突き攻撃する。仮面に次々と亀裂が入り、今にも壊れそうになる。そして爪牙が美味しいところをかっ攫っていく様にトドメを刺した。今までで一番の力を込めハンマーを振るう。勢いよくハンマーは仮面に激突し、仮面は跡形もなく粉砕された。パラパラと粉末状になった仮面の破片が、どんどん悪くなる天候によって起こされた暴風に飛ばされる。
それを見届けてから四人は警戒態勢を解いた。
「これでこっちも終わったな!」
爪牙がハンマーを地面につき一息つく。残雪がその様子を見て雷人に連絡を取った。
――▽▲▽――
《もしもし雷人、聞こえるッスか?》
「ああ、どうだそっちは?」
《こっちも何とか倒したッス!!》
残雪の嬉しい情報にさっきまで座っていた雷人は立ち上がった。自分の体に打ち付ける雨を物ともせず前に進み出た雷人は、声を張り上げて言った。
「分かった! 急いで戻ってきてくれ!!」
《了解ッス!!》
ハキハキとした声で残雪は返答し、無線の回線が切られる。
しばらくすると、一足早く輝光達が戻ってきた。そのすぐ後に残雪達も戻ってくる。もちろん仮面を捜索していた他のメンバーも連れて……。
全員揃ったことを確認すると、雷人は口を開けてこれからのことを話そうとした。しかし、不思議な現象が起こった。突然時間にズレが生じたのだ。言葉を話そうとした瞬間に、雷人は言い終わった後の状態に早送りされていた。そう、まるでビデオテープの様に……。他のメンバーはもちろんのこと、雷人自身もすごく驚いていた。
「どうなっているのだ!?」
雷人は何が何だか分からなかった。もしかすると、WWWの何らかの影響かもしれないと踏んだ彼は、早速パソコンの中にインプットしてある設計図を眺めた。すると、とあるページに図が描いてあり、そこには時を司る時計の文字盤が、WWWの尻尾部分に設置されているように記されていた。雷人は小さく舌打ちし、荷物の中からいくつかの部品を取り出した。
「な~に、それ?」
輝光が興味津々な表情を浮かべ屈みこんで言う。
「これはハンセム博士のスクーターを見て私が自分なりに作ったスクーターだ。博士のと同じで、空をある程度の距離だけ飛ぶことが可能だ! だが、WWWについている時計の文字盤を破壊するのには少し骨が折れる。それに時間もかかるだろうな……恐らくその間にWWWは目的地である夢鏡国に侵入するだろう。そこで時音に頼みがある!」
「な、何なの、頼みって?」
雷人にいきなり名前を呼ばれ動揺している時音は、恐る恐る前に進み出て訊いた。
「少し大変かもしれないが、このWWWだけの時を停止してくれないか?」
その無理難題な頼みに皆は驚愕した。
「そんなこと出来るの?」
菫が不安を抱きながら考え込む。
「確かに少し難しいかもしれない。だが、もう時間がないんだ! 時音……頼むッ!!」
必死に頼み込む雷人。時音はしばらく考え込んだ結果、目の前でペコリとお辞儀する雷人の誠意に折れ、「……分かった」と了解した。その返事に雷人は表情を明るくさせお礼を言うと、爪牙や暗夜を連れてスクーターに乗り、WWWの尻尾部分へと飛んで行った。その姿をただただ他のメンバーが見守る……。
三人の十二属性戦士を乗せたスクーターは、WWWの尾の部分にやってきた。それから雷人が無線を使って時音に合図を送る。
「時音、頼む!」
《わ、分かった!》
時音が頷き胸に両手を添えると、目を閉じて魔力を練り始めた。周囲にオーラが発生し時音が宙に浮き始める。その足元から時が停止し始め、一分後には十二属性戦士とWWWの尾以外の全ての時が停止した。もちろん、暗い雰囲気を醸し出している空から落ちてくる雨の滴も地面に落ちる寸前の位置か、もしくは滴が地面に落ちて跳ねる瞬間で停止している。
雷人は時が停止したのを確認して、荷物から巨大なドライバーや六角レンチの様な物を取り出した。
「これを使えば……」
六角レンチで文字盤の縁に取り付けられている大きなネジに差し込むと、手前のレバーを引いた。ネジが勢いよく回り一瞬にして外れる。同様に他のネジも取り外し文字盤の外縁を外すと、文字盤の内部に到達した。そこからさらに、今度はドライバーなどでネジを外していき、文字盤についている長針と短針を暗夜が剣戟で破壊していった。ローマ数字で書かれた鉄の文字をドライバーで手際よく取り外していく雷人。爪牙もハンマーで壊せる部分を壊していった。
ふと時計の文字盤の下についている振子がユラユラと揺れているのを見た爪牙は、その部分に向かってタイミングよくハンマーを振り下ろす。そして最後の文字盤自体のネジにドライバーを差し込んだ。
しかしその時、非常事態が起きた。なんと最後まで来て、ネジのサイズが合わなかったのだ。
「くそ……ダメなのか?」
暗夜が諦めかけた時、雷人がニヤリと笑った。
「安心しろ。こんなことがあると思って、既に様々なサイズのドライバーに合わせるようにインプットしてある。このスイッチを押してサイズを変えればいいだけのことだ」
そう言って雷人は、一番手前のスイッチを押した。すると、みるみるうちにドライバーの大きさが変わりネジと同じ大きさのドライバーになった。
「これでいい」
こくりと首を縦に動かし、即座に取り外しにかかる。
こうして全てのネジを取り外し終わると、円形の文字盤が外れ中心部分にはめこまれてある赤いコアを見つけた。
「これだ! 爪牙、よろしく頼む!!」
「ああ、まかせとけ!!」
爪牙はハンマーを抱え上げると、思いっきり振り下ろした。力を籠めコアを勢いよく破壊する。パリン! とガラスが割れるような音を立て、コアは完全に破壊された。それにより真ん中の部分に穴が開き、そこから入ることが出来るようになった。
「他に入口もないし、ここから入ることにしよう!」
雷人が中の様子を簡単に見回して確認すると、他のメンバーに無線で連絡を取った。時音も限界が来ていたため時の停止を解除する。同時に時間が再び動き始め、再びWWWの駆動音が響き渡り始めた。
しばらくしてようやくメンバーが集合し終え、雷人がそれを確認するとその穴に向かって進み始めた。すると、またしても次元の力の影響で重力が変化した。
「うおっと! どうやらこの辺りは次元が入り組んでいるみたいだな」
突然自分の体の向きが変化したことに驚いた雷人が言う。他のメンバーはそれを見ていたおかげでそこまで驚かなかったが、それでも少しばかり目を見開いたりなど、各々様々なリアクションを取って驚いていた。内部を進んでいき、螺旋階段をぐるぐると回りながら真ん中付近に来ると、またしても次元が変わり重力変化によって下の方に進む事になった。
「なんだか頭痛くなってきた……」
細砂が眉間の辺りを人差し指と親指でつまみ、目が疲れた人のような行動をとり愚痴る。
「大丈夫ですか?」
葬羅が心配そうに細砂の身を案じた。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう葬羅!」
細砂が葬羅の手を取りながらお礼を言った。そして一番下の地面が見えてくると、中心に摩訶不思議な機械が設置されていた。恐らく、これが次元の力を放出している機械だろう――そう誰もが思った。まるで寝ている生き物を相手にするかのように慎重に武器を取り出した十二属性戦士は、足を踏み込み駆け出した。そのまま高くジャンプし、中心で黄色く光り輝いているコアに向かって攻撃しようとする。しかし、その瞬間、周りにあった金属のリングが少し開いている隙間を完全に閉じて、絶対防御の状態になってしまった。まさしく殻に篭る状態である。すっかり参ってしまった十二属性戦士は、しばらくの間その場で考え込んでしまった。一体どうすればこの次元のコアを破壊することが出来るのだろうか? そんなことを皆で考える。だが、なかなかいいアイデアが思い浮かばない。
その時、雷人が何かに気が付いた。――それは床だ。とりあえず皆が一メートル程下がった。すると、完全に閉じていた防御状態が解かれ、再び黄色く光り輝いているコアが姿を現す。雷人が恐る恐る側に近寄り、気になる床に片足を置く。同時にゆっくりと音を立てながら床が下がった。
「やはりそうか」
雷人は顎に添えていた手を離すと、荷物の中からサバイバルナイフを取り出した。
「それどうするの?」
楓が開いた。
「私の推測が正しければこの武器は通るはずだ!」
皆は訳も分からず、ただ雷人の行動を見ているだけだった。雷人はそのナイフを次元のコアに向かって思いっきり投げつけた。すると、直接自分たちが攻撃しようとした時には絶対防御が働いたのに、ナイフを放っても絶対防御の力は働かなかった。そう、絶対防御の壁が嘘の様にナイフを通したのだ。
「す、凄い!」
細砂は驚愕しながら感心した。皆も目を丸くしている。そして、次に雷人が急いで荷物の中から取り出したのは、謎の液体が入った丸いボールだった。
「何だそりゃ?」
白夜が怪訝そうに見つめる。雷人は説明を始めた。
「これは簡単に説明するとスライムみたいなものだ。こいつは超強力な――謂わば魔力みたいな物で、電磁波や機械などに反応するのだ。そして反応すると――こうなるッ!!」
そう言って雷人は実際にどうなるのかを見せた。次元のコアに雷人がスライムを投げつけると、物凄い勢いで球体からスライムが飛び出し鋭利なトゲの様に周りの絶対防御の壁に先端を張りつけた。その瞬間を逃さず、素早く雷人が手に持っていたスプレーを噴射する。
刹那――真っ黒だったスライムはみるみるうちに銀色へと変色していき、生物のようだったスライムは金属のように全く動かなくなった。
「何なの、そのスプレー?」
雫が首を傾げ訊く。
「これは液体状の物を瞬間的に金属の様に固めるスプレーだ!」
「でも、一体何のために?」
葬羅が繭の様に糸をそこらじゅうに張り巡らせている金属と化したスライムを眺めながら言った。
「な~に、これを使えば周りの壁は絶対に邪魔をしないし簡単に破壊することが可能だと思ってな」
「せやな……しっかし、よぅ出来たもんやのぅ~!」
夢幻が剣を構えながら周囲を見渡す。
その時、ミシミシッと奇妙な音が聞こえてきた。
「何だ?」
それはあの金属のスライムからだった。なんとあの周りの壁が金属など無視で、強制的に絶対防御の壁を作ろうとしていたのだ。
「まずいッ! 急いで次元のコアを破壊するんだ!!」
雷人が言ったが時すでに遅しだった。さきの二倍のスピードで周りの壁が絶対防御の壁を作り出したのだ。しかも、沈む床から足を離しているというのに全く壁を開こうとしない。
「くっ! 一体どうすれば?」
そんなことを楓が考えていると、地響きを立てて勢いよく壁が吹き飛んだ。壁の中心からは大きな爆発音が鳴り響き、煙を舞い上がらせている。
「どうなってやがんだ?」
爪牙が腕で飛んでくる壁の破片を避けながら言った。
「どうやら成功したようだな」
雷人は何やら知った風な口調だ。皆は疑問符を浮かべていた。すると十二属性戦士の近場の足場の床が盛り上がり、細砂が姿を現した。
というわけでⅢも残り三話となりました! いよいよ過去編となるⅣの始まりが見えてきました。ちなみに、今のところⅣのラスト辺りまで書き上げているところなので、追いついたら少し更新遅れるかもしれません。
今回の内容ですが、ようやく内部へと突入しました。しかし、入る場所がよもや後ろからつまり尻の方からだとは……。いやなものを連想させますね。
そして、今回結構活躍する時音。あまり喋る機会もないのでここで活躍させておきました! やはり従弟とその義妹が結構喋っているので必然的に彼女も喋らせないといけないかなと思った次第、こうなりました。
さらに、今回は前半の最後で細砂がいい仕事をしました。雷人の助力もあってですが、細砂にもちゃんとした場を与えさせていただきましたよ。
では引き続き後半をお楽しみに。




