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十二属性戦士物語【Ⅲ】――光と影――  作者: YossiDragon
第二章:食い止めよ、災厄の陰謀篇
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第十話「『Wenabekal・Walmgant・Wilyveras』の進撃」・2


――▽▲▽――


 北の方角。ここには暗夜と白夜と夢幻の三人が来ていた。目の前にはやはり機械で出来た龍が立ちはだかっている。口からは風が発生しており、鎌鼬をくらったりしようものなら死んでしまうかもしれない――そう思った。

 三人は一斉に武器を取り出し、相手に剣先を向ける。それを見た龍は荒げた声で叫び強風を作り出した。ギリギリでそれを躱した三人は、連係技を使い龍に叩き込む。暗夜の斬撃が龍の首根に刻みつけられ、そこからオイルが血のように噴き出す。白夜と夢幻の二人も斬撃を繰り出し、龍はボロボロの状態になった。そして、トドメとばかりに白夜が脳天に向かって得物を深々と突き刺した。悲痛にも似た雄叫びをあげ、ボロボロの首をクネクネ動かしながら龍は力尽きたように倒れた。


「ふぅ~! これでこっちもええな。残りは向こうの方やけど、他のやつらちゃんとやっとるやろな~?」


「お前じゃないんだから大丈夫だろう」


 暗夜のバカにするような言い方に少し夢幻はムッとなって言い返そうと口を開く。

 と、その時、東の方角の火山が突然活動を始めた。


「まずいぜ兄貴! このままだと噴火の際に出た隕石や噴き出した溶岩に殺られる! ――逃げねぇと!!」


「そうだな」


 暗夜と白夜が逃げる場所を探していると「お~い! 二人ともこっちや!!」と、夢幻が大きく手を振りながら二人を呼んだ。


「今行くッ!!」


 暗夜と白夜は急いで夢幻の元に走って行った。後ろからは噴き出した溶岩がこちらに迫っている。

 細い抜け道を通り三人は森に逃げ込んだ。溶岩の高熱に焼かれ燃えていく木々……。被害はそのまま南北にも進行していった。北の山が溶岩の川の様になり、南では大量の氷が高温の溶岩に溶かされ水蒸気と化していく。その度にシューシューと蒸気を上げる氷。溶岩はスピードを緩めず、次々とウィリヴェラスの体の上に溶岩を広げていった。だが、氷も負けてはいなかった。高温の溶岩の温度を、カチコチに凍っている氷が冷やしているのだ。炎と氷の戦いは凄まじく、ついに溶岩も負けを認めスピードを緩めてついには動きを止めた。しかし、南の被害は甚大だった。一面の白銀に広がる雪景色は失われ、氷柱も溶けてしまっていた。さらにその氷は溶岩に溶かされ水となったため、ウィリヴェラスの体の一面に水たまり――否、小さな海を作り出した。次元の力が働き、ウィリヴェラスの体の中心へと重力が働いているため、海の水はなくなることはない。だが、この酷い有様では十二属性戦士の安否は分からなかった。


――▽▲▽――


 バラバラに散らばっていた十二属性戦士は、雷人と時音の待つ中心の山の(ふもと)に戻り、それぞれ水浸しになったウィリヴェラスの体に生えた丈夫な木にしがみついてその難を逃れていた。


「どうやらもう大丈夫のようだな……」


 雷人が下の様子を確認し言う。雷人に合わせて他のメンバーも木からスルスルと降りて行く。バシャバシャと水音が生い茂った森に響いた。少し遠くの方からはバチバチと火花が散る音が聞こえる。どうやら、まだ溶岩の影響で燃え盛っている木々があるようだ。まるで辺境の星に降り立った人間が、初めて見る物に目を輝かせるようにその景色はさっきまでとは全く違った。木が生えているのはこの辺りだけで、その他の木は中心に聳え立つ山の上の方に生えている木以外なかった。どれも溶岩の熱にやられたか、燃えてしまったようだ。その光景には植物と対話する不思議な力を持つ葬羅にはさぞ辛かったらしく、物凄く悲しそうな顔をしていた。


「それで、これからどうするん?」


 夢幻が目的を失ったダメな人の様に次の指示をもらおうと、背中を見せている雷人に訊いた。


「ん? ……そうだな。本当はこの中心に聳え立つ山から中に入ろうと思っていたのだが、さっきの溶岩の熱で扉が変形して開かなくなってしまったのだ。もうここから中に入ることはできない。何か別の方法を考えるしかなさそうだ」


 雷人の言葉に皆は少し残念そうな顔をしている。

 その時、ふわふわと奇妙な音を立てて何かが近づいてきた。ウィリヴェラスの顔に取り込まれていたスモーキング・スカル――の仮面だった。


「まだ生きてやがったか……。しつけぇヤローだ!!」


 爪牙がハンマーを抱え上げ、宙に浮いている仮面を激しく睨み付ける。


「まぁ待て。ここは全員で戦うよりも分かれて戦った方が得策だ! それにあいつ、さっきよりも強くなってるみたいだぞ? 見ろ! 最初よりも仮面が少し大きい。あれは恐らく、WWW(スリーダブル)から与えられた魔力を使っているのだろう。だからこそ、慎重に動くためにここは冷静に対処するんだ!!」


 その説明を聴いた爪牙は、「はぁ~」と嘆息しハンマーをおろした。すると、自身の危機を感じ取ったのか、仮面が一瞬にしてその場から姿を消した。


「それで、どうするの?」


 爪牙が大人しく武器をおろしてホッと安堵した楓が単刀直入に雷人に訊いた。


「ああ……。私がここで皆に指示を出す! この設計図を見ればある程度の位置は解るからな。この小型無線機を耳につけてくれ。今まで使っていたトランシーバーみたいなのは手がふさがって面倒だからな。このタイプに変えさせてもらった。この方が役立つ場面も多いはずだ。周波数はあらかじめ合わせてあるから、くれぐれもいじらないでくれよ?」


 雷人が各々に小型無線機を配布しながら忠告する。


「私達の今回の目的はこのWWWを倒すことにあるわけだが、そのためにはまずあの二枚の仮面を破壊して邪魔者を始末する必要がある! だからここは協力してくれ!! では発見したら私に報告してくれ!!」


 そう言って雷人は近場の木陰に隠れ設計図を広げると、他のメンバーを見送った。


――▽▲▽――


「にしても、あんなに大きい仮面でも、いざ探すとなるとなかなか見つからないもんッスね。一体どこにいるんスかね……」


 ボソボソと独り言を呟く残雪は、一人寂しく先程爪牙と輝光を含めた三人で戦った南の方角へとやってきていた。氷属性であるためか、先程の雪景色をもう一度見ようと思っていたのだろう。が、目的としていた雪景色は完全に失われ、見る影もない状態になってしまっていた。

 その時、ある物を視界に捉えた残雪は、サッと(すす)けてしまっている木の陰に身を潜めた。


「あ、あれは……さっきの仮面ッス!! そうだ、雷人に連絡連絡っと!」


 慌てる残雪は、急いで耳に着けた無線に手を伸ばし、スイッチを入れて雷人に連絡した。


「あっ、もしもし雷人ッスか? 俺ッス! 残雪ッス!! 実はそのかくかくしかじかで……」


〈何、本当か!?〉


「はいッス! 今、俺の目の前にいるッスよ!」


 はしゃぎながらも小声で雷人に目の前の現場を伝える残雪。


〈分かった。お前の近くにいる照火を向かわせるから、それまで何とかその場所にいるようにしとけ! 頼んだぞ?〉


「り、了解ッス!!」


 ビシッと敬礼し、大きな声で返事をする残雪……。


【ビーッ! ビーッ!】


 残雪の敬礼する声に気付いたのか、仮面の一枚が残雪に襲い掛かった。


「うわッ!!」


 仮面は徐々に残雪との距離を縮めると、目から強力なビームを発射した。赤い閃光が残雪の足元を直撃し、さっきまで残雪が立っていた場所は、黒く煤けて丸く穴が開いたような状態になっていた。


「あんなのにやられたらひとたまりもないッスね! ……にしても、まだ照火は来ないんスか?」


 残雪が武器を使わず魔法で攻撃するが、いまいち攻撃性に欠けていた。ここは俊敏で軽く、攻撃範囲のリーチが長い照火に早いトコ来てもらいたいところだが、当の本人はどこで道草食っているのか、なかなか残雪のいる南の方角へ来なかった。

 それからしばらくして、魔力がだんだん底をついてきて危険な状態になったところでようやく照火が手を振りながらやってきた。


「お~い、残雪~!!」


「遅いッスよ! 何やってたんスか、照火!?」


 プンプン怒りながら照火に詰め寄る残雪。


「悪い! ちょっと向こうの方で道に迷ってな……」


 案の定だった。


「ちゃんとしてくれないと困るッスよ!!」


 腰に手を当て、残雪が眉を吊り上げ言った。


「後は俺に任せておけ!! 今、こっちに他のやつらも向かってるはずだからな……」


 照火が残雪の肩を叩き、背中を向け武器を構える。炎のような剣が紐のような鎖で結び付けられ、振るわれる度にまるで蛇の様に波打つ。照火は素早い手首のスナップを利かせ仮面を攻撃した。しかし仮面はそう安々と攻撃を受けてはくれず、浮遊したままフワリフワリと軽やかにダンスでも踊るかのように照火の攻撃を躱していった。逆に向こうもビームで対抗してくるものの、多少力を溜めるのに時間がかかるのか僅かな間が存在する。その隙を狙い、照火は次々と連続技を叩き込んだ。

 しばらくそれを続けていると、仮面の右端に亀裂が入った。どうやらダメージの蓄積の賜物のようである。


「もう少しッス!!」


 残雪が握り拳を作ってテンションを上げながら声をあげる。が、加勢はしない。

 その時、背後から爆音が聞こえた。


「向こうでも誰か戦ってるんスかね?」


 気になるような表情で煙の上がっている方角を見る残雪……。


――▽▲▽――


 その頃、もう一枚の仮面と戦っていた十二属性戦士は、雫よりも薄い水色の長い髪の毛を靡かせていた――雫の義妹である楓だ。

 ゴツゴツした岩肌を風がすり抜け吹き込む北の方角で涼んでいる所に現れたのを見つけ、戦っていたのだ。しかし、戦いの最中に仮面の思わぬ攻撃に目を見開いた。残雪の情報を雷人を通して知っていた楓は、目から出るのはビームだけだと高を(くく)っていたのだ。だが、それが相手にとっての思うツボだった。仮面が目から出したのは、ビームではなく超巨大な爆弾だったのだ。まだ若く素早い動きが可能で、尚且つ瞬発力のある楓はそのことに後から気付いても何とか対応できたが、他のメンバーであれば少々危険だったかもしれない。目をオロオロさせながらすぐ近くの現状を目に焼き付ける楓。その視線の先に広がっていたのは、地面がメリ込み水が少し溜まっている地面だった。僅かながらに煙もあがっている。淵の部分には爆弾によって真っ黒な(すす)がついている。

 楓はギリギリの所で避けていた。後もう少し反応が遅ければ、自分も今の爆発に巻き込まれていただろう。そう思うと、楓の頬から一筋の汗が流れた。手汗も酷く、袖で額の汗を拭うと服が少し湿っていた。鉢巻を一度外し、もう一度気合を入れ直すかのように眉を吊り上げてキュッと鉢巻を締めた。

 その時、応援が駆け付けた。


「楓ー!」


「楓お姉ちゃ~ん! 私達も手伝うよ~!」


 元気よく楓を助けに来たのは、ターバンや砂除けのマント、マフラーを巻きつけた茶髪の髪の毛を持つ細砂と、金色の髪の毛を振り乱しながら走ってくる忍者の様な格好をした幼い少女、輝光だった。


「あ、ありがとう」


 楓はゆっくりその場に立ちあがり、側に落ちていた自分の武器を拾い上げた。


「ふぅ……行くわよ!」


 一度深く深呼吸し、それから真剣な面持ちで仮面を睨み付けた。


「分かった!」


「うん!」


 細砂と輝光も返事をして一斉に動き出した。

 仮面は三百六十度あらゆる方向から一番近い標的を探し出し、その敵を一瞬にして攻撃し死に追いやろうとしてくる。ビームを一回転させるなど、仮面の攻撃方法は様々だった。


「くっ!」


 楓達は自分達の軽い身のこなしを巧みに使いこなし、ビームを躱した。

 仮面はその意思を持たぬただの抜け殻の様な目で標的を探した。すると、目の前に輝光を見つけた。それからその双眸を光り輝かせ始める。今までで一番魔力を溜め込んでいる様子から恐らく盛大な一撃を放とうとしているらしい。それを見ても輝光はその場を動かず、ただじっと相手を見つめていた。


「何やってんの輝光! 死にたいの!?」


「だって私がおとりになればその間に細砂や楓お姉ちゃんがあの仮面を簡単に破壊することが出来るじゃん!!」


 その必死な顔を見た細砂は、輝光の頭に手を置き優し気な眼差しで言った。


「そんなことしなくても、今他のメンバーが助けに来ているから平気だよ!」


「そ、そう?」


「うん! だから輝光が身代わりになることなんてないよ?」


 そう言って細砂は片方の手に武器を取り付け、その鋭い鋭利に尖った鉤爪で仮面に攻撃を繰り出した。素早い動きと柔軟性を活かした攻撃はなかなかのパワーを持っており、仮面に深い亀裂を入れさせ大ダメージを与えた。


「後もう少しだわ」


 ボソリと呟いた楓は、魔力を体中から溢れさせ、周囲の空気を使って風の刃を生み出した。


「くらえ、『風刃』!!」


 両手を振るい楓が放ったのは、細かく繊細な風を極力薄く尖らせた風の刃だった。風刃と呼ばれる風の刃は、周りの空気を巻き込みながら勢いを増していき、そのまま仮面に向かって突っ込んで行った。そして風の刃はそのまま仮面に命中し、あんなに大きかった仮面は嘘の様に細かく砕け散り、辺りに飛び散った。地面に当たる太陽の光が仮面の破片で反射しキラキラと光っている。


「す、すごい」


 細砂は感動すると同時にあまりにもの驚きで硬直状態に陥って動けなくなっていた。輝光は仮面が倒されたことを確認し、義兄の雷人に連絡を取った。




《お兄ちゃん、聞こえる?》


「ああ……どうかしたのか? そっちの方で空気を裂くような奇怪音が聞こえたが……」


 雷人はコンピュータのキーボードをカタカタと打ちながら義妹に質問した。


《ついさっき仮面の一枚を倒したの。それで今、北の方角にいるんだけど、これからどうすればいい?》


「そうだな。では話があるから側にいるやつと一緒に戻ってきてくれ」


《分かった!》


 輝光は明るく返事をすると、無線の回線を遮断した。


「ふぅ~。……後は照火達の方の仮面か」


 丁度いい形の木にもたれかかり頭の後ろで手を組んだ雷人は、だんだんと薄暗くなってくる空を見上げた。


「一体、何が起ころうとしているのだ? この世界で」


 暗雲の中でピカピカッ! と光る雷の光。そしてゴロゴロビガーッ!! と、大轟音を鳴り響かせる雷鳴。

 その時、ポツッ! と、雷人の鼻先に滴が落ちた。それを人差し指で拭い取り、黒縁メガネをもう片方の手で少し上に上げて目を細め自身の目で確かめる。


「ん? ……雨か」


 雷人はもっと木の生い茂っている辺りで雨宿りすることにした。


「あいつら……大丈夫だろうか」


 そんなことを小さな声で呟いていた雷人は、一人寂しく他の十二属性戦士の帰りを待つのだった……。

というわけで、Ⅱで登場したスモーキング・スカルの仮面がここでも登場です! 制裁をくらったあの人がまさかここでこんな登場の仕方をするとは誰も思わなかったでしょう。そして、目から出すといったら定番の目からビームですね。まぁ、この仮面の場合目から爆弾も出すみたいですが。

次回はいよいよ内部へと突入します! 中はもっと凄いことになってますので、その辺りも注目してください。そして、どこから内部に入るのか、そこもしかと確認ください。それでは。

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