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十二属性戦士物語【Ⅲ】――光と影――  作者: YossiDragon
第一章:五つの封印解除阻止編
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第一話「七小衛星大爆発!!」・1

 ここは、十二属性戦士及びたくさんの人族が住んでいる惑星『ウロボロス』。この星には『七小惑星(ヘプタゴン)』と呼ばれる衛星がある。この衛星は名前にもある通り全部で七つあり、夜になるとそれぞれ一つずつが太陽の光に反射して、七色の虹のように光り輝くと言われている。

 その衛星の一つ一つの何ヶ所かに、チッチッと動いている時限爆弾があった。

 そして、今日は十二月三十一日。まさに二年の歳月が過ぎ去ろうとした次の瞬間、巨大な大爆発は起きた。

 そう、衛星は粉々に粉砕されたのだ。それと同時にたくさんの衛星の破片が飛び散り、隕石となって流れ星の様に夜のウロボロスへと降り注ぐ。それを夢鏡城から望遠鏡で眺めていた瑠璃が、異常な量の流れ星を見て何かに気づき、急いでハンセム博士の元へと向かった。




――▽▲▽――




 その頃、当のハンセム博士はというと、研究室で新しい発明品を作っていた。

 とそこへ、瑠璃――ではなく、世界四大神の一人である月の神『ルナー=R(ロルトス)=ナイトメア』が現れた。


「そこで何をしてるのですか?」


 ルナーがローブ姿でうさ耳付きのフードを深く被ったまま、ハンセム博士に訊く。


「ん? ああ……月の神か。発明品を作っている。空中を走る事の出来るスクーターでな、なかなかこれが便利なのだ。まぁ、見てれば分かるさ」


 そう言ってハンセム博士はルナーに話しかけられて止めていた手を動かし、作業を再開した。


「そうなんです――っぐ!?」


 突如、ルナーの首筋に激痛が走る。その痛みに苦悶の表情を浮かべ、慌ててその場所を押さえてその場に座り込んだ。


――な、何なのです、この痛みは……っ!? いや、私はこの痛みを知っている……あっ、そういえば二年前のオドゥルヴィア博士封印の際に、首筋を何かに刺された様な……。まさか、これが!?



「ん? どうかしたのか?」


 ハンセム博士が途中で声が途絶えたルナーのことを不審に思い尋ねる。しかし、ルナーはいらぬ心配をかけたくないと、何ともない様子を取り繕い、声を発した。


「い、いえ……何でも――うっぐっ!?」


 だが、それを許すまいとするように、ルナーの首筋に更なる激痛が走った。これには堪らず彼女も激痛に叫び声をあげざるを得ない。


「ぐああああっ!?」


「ど、どうしたんだ!?」


 流石のハンセム博士も、作業中のその手を止めた。背後からのルナーの叫び声が、あまりにも気になったからだ。見るとルナーは、首筋を押さえながらその場に蹲っていた。


「お、おい……首に何かされたのか?」


 急ぎ傍へ駆け寄り、少し心配そうな表情を浮かべ、頬から冷や汗を垂らしながらハンセム博士がルナーの身を案じた。

 しかし、ルナーは苦しそうな呻き声を上げたまま、一向に顔を上げない。

 さすがにこのままではルナーの体が危険かもしれないと感じたハンセム博士は、彼女の肩に手を触れた。すると、その手にルナーが自分の手を重ねる。その行動に、疑問符を浮かべ顔をしかめるハンセム博士だが、事件はまさにその瞬間起きた。


グサッ!!


 突如響き渡る鈍い音。肉が貫かれ、直後周囲に血飛沫が飛ぶ。


「な、何ッ!?」


 予想外の出来事だった。さっきまで苦しんでいたルナーがその呻き声を止めると、すくっとその場に立ち上がると同時、ハンセム博士の腹に魔力で作り上げた剣を突き刺したのだ。


「ごばッ!!」


 血反吐を吐き、床に片膝を突くハンセム博士。歯ぎしりをしながら傷跡を押さえ、ルナーを見上げ睨めつける。ローブのフードと、長く綺麗に切り揃えられた銀色の前髪に隠れた綺麗な瞳は濁り、目には光がないことから、彼女が正気でない事はハンセム博士にもすぐに理解出来た。

 太刀傷でズキズキと痛む腹を押さえ、その傷口に一瞥くれてからルナーに視線を戻し口を開く。


「一体、何がどうしたんだ!? まさか、先ほど月の神が押さえていた首筋……。まさか、二年前にオドゥルヴィア博士に何かされたのかッ!?」


 腹部を押さえながら、額から滲みでる脂汗をもう片方の手で拭い、ハンセム博士が考えられる可能性を口にする。すると、ルナーから含み笑いが聞こえてきた。


「ふっふっふ……ご名答。よく分かったな、若造!」


 口を開き、語り出すルナー。しかし、その口から発せられた声音はルナーの物ではなく、父の代からストライプス家に恨みを持っているオドゥルヴィア博士のものだった。そう、即ちハンセム博士の実父であるティリマン博士の師である。


「月の神の体に何をしたッ!?」


「な~に、二年前の我が封印されかけた時、苦し紛れにこの小娘の首筋に我が力を注ぎ込んでいたのだ! 封印の効力が弱まった今こそが絶好の時……。我がこの世界の大地に、再びこの御足を付ける時だッ!! グフフハハハハハ!!!」


 高笑いするルナー。だが、ハンセム博士の目には、しっかりとオドゥルヴィア博士の憎たらしい顔が見えていた。


「くッ!」


 歯噛みするハンセム博士は、側にあった拳銃を取り出した。


「くらえッ!!」


バンッ!!

 

 撃鉄を起こし、引き金を引くハンセム博士。同時に彼の持つ拳銃の銃口から一発の銃弾が放たれた。だが、オドゥルヴィア博士は焦ることなく冷静沈着に口元に笑みを浮かべる。


「ふん、あまいわッ!!」


 そう言ってオドゥルヴイア博士はルナーの体を操り瞬時にその銃撃を躱すと、ハンセム博士の背後を獲り、彼の首に自身の腕を巻きつけ、一気に締め上げた。


「ぐぅッ! っく……!!」


「ふっ、死ねぃッ!!」


ゴキュッ!!


 首の関節が嫌な音を立てる。暗がりの無音の研究室に響き渡るその鈍い音は、どこか不気味な感じがした。


「が……はッ!?」


 気を失ったハンセム博士は前のめりに倒れた。それと同時に、顔から黒縁メガネが外れて跳んでいく。


「フッフッフ……さてと、我が体を取り戻しに行くとするか」


 ルナーの体を乗っ取ったオドゥルヴィア博士は、その体で瞬時に移動し、夢鏡城の屋上へと繋がる階段――があった場所にやってきた。

 それから壁に突き刺さっている剣に手を伸ばす。

 この剣は二年前、ルナーが封印を施した際に使用した剣で、ここから先の場所を封印する鍵代わりのような物だ。

 そして、ついにその手が剣に触れようとしたその時、同時に凄まじい電撃が走った。


「あぐっ!? こ……これは、結界かッ!?」


 忌々し気に呻き封印の剣を睨んだオドゥルヴィア博士は、色白で小さな手をもう片方の手で優しく擦った。スラリと伸びた細長い五指を持つ手の平には痛々しい火傷の痕が残り、煙を上げている。


「こしゃくなァアぁああッ!!」


 諦めることなくもう一度その剣に手を触れるオドゥルヴィア博士。しかも、今度は両手で――。無論、電撃は容赦なくルナーの体全身を駆け巡った。凄まじい電撃にローブがビリビリに破れ、穢れを知らなさそうなその無垢な色白の肌のあちこちに、ミミズ腫れの様な痕が刻まれていく。


「うっ……っくッ!!」


 しかし、オドゥルヴィア博士は痛みに堪えたまま、剣を封印した時とは逆に回し、ついにその剣を抜き取った。


「うらぁあああァアああッ!!」


 一気に抜き取られた剣が、引き抜かれると同時にその手を離れ、放物線を描いて床に落ちる。同時にその剣は、役目を終えた使い魔の様にその場から霧散して消えた。


「はぁ……はぁ! おのれ、まだ我はここで倒れるわけにはいかんのだ!!」


 荒い呼吸を整えながら、オドゥルヴィア博士はルナーの体を使って封印の場となっている屋上へと上がって行った。

 屋上に到着すると、そこには夢鏡と入れ物と蓋の間からどす黒いオーラを漏らしている壺があった。夢鏡には、オドゥルヴィア博士の体――即ち()れ物。壺には精魂、つまり魂が封印されていた。


「……ついに見つけた、これで我が体を取り戻せる!!」


 震えるボロボロの手で壺に触れるオドゥルヴィア博士だが、そこで彼の手の動きが止まった。そう、この体の持ち主――ルナーが、意識を取り戻し動きを止めたのだ。自分の体を乗っ取っているオドゥルヴィア博士に、ルナーは必死に抵抗した。


「くうぅぅッ!! おのれ、小娘が! 邪魔をするなッ!!」


 ルナーの鳩尾に拳を喰らわせるオドゥルヴィア博士。しかし、はっきり言ってその行為は自分へのダメージの蓄積にもなる。無論、ルナーの体にもダメージはあるのだが。


「はぁ、はぁ……。この体は、私の……物なのです! ……あなたはさっさと、私から出て行って……くださいっ!!」


 そう言って神の力を体内から発生させるルナー。その力には、オドゥルヴィア博士もさすがに顔をしかめた。


「おのれ小娘……。ここまで来て、引き下がるわけにはいかんのだぁあああッ!!!」


 こちらも反抗とばかりに、禍々しいオーラをぶつけるオドゥルヴィア博士。そして、とうとうルナーの体を使ったオドゥルヴィア博士が、壺から封印の札を引きはがした。同時、蓋が自動的に吹き飛び、中からルナーの体表から出ている禍々しいオーラと同様の物が溢れ出し、彼女の体に入って行った。

 少量のオドゥルヴィア博士の精神ならば、まだ少し抵抗できる力の残っているルナーにも倒すことは可能だが、これほどの禍々しいオーラを持った相手には、さすがに抵抗することは出来なかった。その結果、悲しきことにせっかく夢鏡に封印した封印の鎖も引きちぎられ、鏡面からオドゥルヴィア博士の肉体が出てきた。


「ようやくだ……ようやく取り戻したぞ、我が肉体を……」


 ルナーの体から出て来たオドゥルヴィア博士の精神が、空っぽのオドゥルヴィア博士の容れ物へと入って行く。

 ようやく自身の体を取り戻したルナーは、その場にフラつきながらも立っていた。目の輝きも戻り光もある。正気に戻っている証拠だ。

 いつの間にかルナーのローブのフードが外れていたため、髪の毛から表情までの全貌が露わになった。

 フィーレとは相対的な碧眼を持ち、髪の毛の色は月とは言わないが星の様にキラキラ光り輝く銀髪のストレート。長いパッツンの前髪は少し長く、風になびいてなければその綺麗な双眸が隠れて見えない程だった。


「はぁ、はぁ……くっ! 間に合わなかった……ようなのです」


 膝に手を突き、肩で息をするルナー。


「フッフッフ、フッハッハッハハッハ!!! ついに、ついにこの時が来たッ!! この時をどれだけ待っていたことか……」


 オドゥルヴィア博士は、天を仰ぐ様に両腕を上に掲げ、手の平を天に向け自身も顔を真上にあげた。目を見開き、片眼鏡が不気味に光り輝く。

というわけで、ようやく本編第一回目です。アクセス見て見てくれてる人が結構多い事に感激しつつ第一話の前編を修正して載せました。

二年の月日が経過して、雷人が言っていた通りの予言が実現し復活を果たしたオドゥルヴィア博士。ルナーの体を使って封印を解き放ち、夢鏡の中から出てきました。いやぁ、Ⅱの時に首筋に噛まれたアレが伏線だったワケです、はい。

魔法で精製された剣で腹部を貫かれた挙句神様に首絞めされて気絶するハンセム博士。いや、なんの力も持ってない無属性者にこれは酷い仕打ちですよね。

どんだけストライプス一家に恨み抱いてるんですかねこのじいさんは。

そして後編ではようやく二年の修行を積んだ彼らが登場します!

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