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十二属性戦士物語【Ⅲ】――光と影――  作者: YossiDragon
第一章:五つの封印解除阻止編
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第八話「魔力の消失と五首の龍」・1

 十二属性戦士が、負傷した個所を押さえながら謎の雰囲気を出している広間の中心に集まった。


「どうやら全員無事の様だな」


 雷人が人数を数えて点呼をとる。人数を丁度数え終えたその時、扉が突然開きパチパチと誰かが拍手をしながら足音を立てて入ってきた。――オドゥルヴィア博士だ。


「博士!!」


「クックック……まさかあのV-orgrossを倒すとはなかなかやるな。だが、そいつはまだ実験台の段階……。これから、第二形態、第三形態、と姿形を変えていき、貴様らの行く手を阻んでいく! しかも、進化する度にこいつらは様々な物を備えてゆき、最終形態では殺戮兵器となるのだ!! ……ンフフフフフ!!」


 何かを企んでいるかのように口の端を吊り上げ、不気味な笑い声をあげるオドゥルヴィア博士。すると、その言葉を聞いていた楓が言った。


「どうしてこんなことを?」


「クックック、これは偉大なる実験だよ」


「ていうか、そもそもあれは何?」


「なに? グフフフ、何をバカなことを言っている! あれは実験動物だ!! そんなことも分からんとはついに戦い過ぎて頭が狂ったか!」


 オドゥルヴィア博士が楓のことを小ばかにしたように言うので、ムッとして文句を言おうとしたが、目の前にバッと片腕を上げて制止する者がいた――雷人だ。


「いや、楓の言うとおりだ! 貴様が行ったのは非人道的行為だ! あの男は貴様の仲間なのではないのか?」


「なるほど、あの白衣を見て……そうかそうか! クックック、あれはただの我の古き仲間だ」


 不敵な笑みを浮かべて上を見上げるオドゥルヴィア博士。


「じゃあ……あなたは自分の仲間をさっきの実験台に使ったってこと?」


「そうだが?」


 当たり前だと言わんばかりに見下す目で見つめるオドゥルヴィア博士。その紅蓮の双眸には何一つ罪悪感など微塵も感じられない。


「どうして仲間にそんなことするの?」


「ふんッ! 仲間だ? バカにするな!! 確かにあやつは古き仲間だと言ったが、我にとってはただの研究している同期だっただけだ!! ……それに、我にとってはあいつらなどただの道具にすぎん!」


 オドゥルヴィア博士の言葉に照火が掴みかかる。


「お前、いい加減にしろ! 人を道具なんかに使いやがって!!」


 照火の怒声が部屋に響き渡る。


「……何をそんなに熱くなっている? 貴様らにとっては敵である元クロノスの幹部三チームの一つ、『GAUN』の一人なんだぞ? それでも文句を言うのか?」


 ニヤリと笑みを浮かべて照火に言うオドゥルヴィア博士。


「例え敵だろうと、人間を道具として使うお前を許すわけにはいかないんだよ!!」


「照火の言う通りよ!」


 菫も珍しく怒っているのか、眉を吊り上げオドゥルヴィア博士を睨めつけている。


「グフフフフ、心優しき者共だな……。だが、お遊びもここまでだ!!」


 オドゥルヴィア博士が懐からリモコンを取り出しスイッチを押した。カチッ! とスイッチが入ると、十二属性戦士の体に異変が生じた。自分の体が意思に反して勝手に動き出したのだ。


「クックック、驚いたか? これはついさっき貴様らがV-orgrossに気を取られている間に密かに忍ばせた小型操縦機だ! ミクロの大きさのため気付かなかっただろう? グハハハハハ!!」


 十二属性戦士にそう説明すると、オドゥルヴィア博士はリモコンを操作して十二属性戦士を時計の文字盤のそれぞれのローマ数字の上に立たせた。


「ふふ、これでいい! 今まで研究仲間、一般市民……と魔力を搾り取ってその人間の生命まで奪ってきたが、WWW(スリーダブル)の動力源にはやはり満たなかった。そして我は思った! ならば、魔力を大量に持っている人間を使おう……と! そして、辿りついた結果、貴様ら――十二属性戦士が標的となったのだ!! さぁ覚悟しろ、十二属性戦士……貴様らの大量の魔力はこの我の物だ!! グフフフフ、グフハハハハハハハハハハ!!!」


 オドゥルヴィア博士は時計の長針短針の二つが重なった中心部分の丸いくぼみに魔力吸収装置をはめ込むと、その場を離れて壁の側に隠された蓋を開き、レバーをガタンッ! と倒した。

 刹那――凄まじい電撃が迸り、魔力吸収装置に電流が流れた。すると、時計の文字盤もじわ~っと淡く光りだし、十二属性戦士を順に襲い始めた。


「うぐぅあああああああああああああッ!!!」


 一番最初の犠牲者は照火だった。ただでさえ先程のV-orgrossとの戦闘で体力も残り少ないと言うのに、その上魔力まで奪われるというのであればたまらない。照火は疲れ切った体を魔力で無理やり立たせていたため、殆どの魔力を吸収し尽くされてその場に座り込んでしまった……。

 他の皆もそうだった。それぞれ大量の魔力を魔力吸収装置によって吸収され、殆ど魔力が残らない状態になっていた。足腰が立たなくなってしまった十二属性戦士はその場に座り込んだまま動けなかった。しかし、それだけでは悪夢は終わらなかった。

 オドゥルヴィア博士が指をパチンと鳴らすと、天井の一角に穴が開き、そこから大きな棺桶が降ってきた。茶色に見えるのはどうやら錆びのようだ。

その時、ゆっくりと地響きを立てながら棺桶の蓋が開き、謎の怪物の腕が姿を現した。

 本来ならばその棺桶に入っていられないような大きさの怪物が大きな口を開け、獲物を探しているかのように吠える。そして赤く光る双眸をこちらに向けてきた。

 十二属性戦士は険しい表情でオドゥルヴィア博士を睨み付け、今にも襲い掛かりそうな獣の様な目つきをしていた。しかし、魔力が底をついているため、その場から動くことは叶わなかった。


「グフフフフフフ、これほどまで大量の魔力を手に入れたのだ! これだけあれば十分すぎるほどだ。もう貴様らに用はない! せいぜいその怪物にあの世へ葬ってもらうがいい!! 我は貴様らから頂いたこの魔力でWWW(スリーダブル)を動かし、この世界を完膚なきまでに破壊し尽くしてくれる!! 貴様らの魔力なのだからな、まるで貴様らが世界を破壊しているようなものだなぁ? グフフ、ガーハッハッハッハッハッハッハ!!」


 オドゥルヴィア博士は、十二属性戦士がその場から動けないことをいい事に、完全に彼らをバカにしていた。そして空間を歪ませその場から姿を消した。怪物は今にも十二属性戦士に襲い掛かろうとしているが、その場から動くことが出来ない以上戦うことも出来ない。それどころか魔力が底をついているということは魔力を練るということも出来ないわけだ。本当にヤバい! ――誰もがそう思った。そして、怪物がその長く鋭利に尖った爪の生えた手を振りおろす。絶対絶命――と思われた……が。

 刹那――。


バンッ!!


 大きな音と共に広間に姿を現したのは、さっき罠に引っかかってどこかに消えてしまった暗夜、白夜、夢幻の三人だった。


「大丈夫かお前ら!」


「助けに来たぜ!」


「今行くで!!」


「あ、暗夜、白夜、夢幻……」


 雫は相当なダメージも受けていて声が掠れている状態だった。夢幻が抜刀し怪物の腕に切りかかる。腕は綺麗に切断され、切断面が綺麗に映る。大量の血が怪物の腕から滴り落ち、怪物はその部分を苦しそうなうめき声を上げながら押さえた。それを背後から見ていた白夜が二本の剣を抜き取り、それを互いに両手に持つと、持ち手を変えながら複雑な斬り技を繰り出し怪物の太い首を斬り落とした。


「やった!?」


 時音が口に手を運びながら声を驚きと喜びが入り混じったような声を上げる。しかし、怪物の身に異変が起こった。怪物の首がブクブクと膨れ上がり分裂したのだ。五つの首に分かれ頭部が再生されると、ほぼ同時に攻撃が再開された。


「くっ!?」


 さすがの白夜も五つの顔が相手では全ての攻撃を防ぎきることは不可能だった。それぞれの瞳は赤、青、黄、茶、紫の五色で、それぞれ色が属性に関係しているのか、赤が炎、青が水、黄が雷、茶が岩、紫が毒の攻撃を行ってきた。そう――この怪物は、五つの属性を持っているのだ。


「厄介やな。本来なら基本的な属性を持つお前らの方が有利やねんけど、この状態やと攻撃するのは愚か、立つのもやっとそうやしな……。役に立つんは暗夜くらい……やな」


 夢幻が途方に暮れていたその時、近場の肖像画の一つが五首の龍が立てる地響きによって外れ、裏に隠されていたスイッチが出現した。それを押すと、大きな広間へ通じる通路が現れた。暗夜達が手を貸し、何とか奥の広い広間に出る。怪物は体が大きいため、狭い通路を通ることは出来ない。これで少しの時間は稼ぐことが可能だ。しかし、それでも限界というものがある。動ける者に手を貸してもらいながら通路の奥に行くと、そこには一番奥の壁に大きなモニターがあった。傍にあったリモコンを取りスイッチを押すと、モニター画面に誰かの姿が映った。それは、現在六代目夢鏡国の女王であるフィーレ――よりも、少し若い感じの少女だった。


〈えっ? ……あっ、映ってる? 私映ってる? イエーイ、イエーイ!!〉


〈お姉ちゃん……ふざけてないで。ちゃんと伝えないといけないこと言ってよ!〉


〈あっ、ごめんごめん!! え~と、……十二属性戦士の皆、実は君達に教えなければいけないことがあるの! この映像を見ているってことは、みんな既に魔力を失っちゃってるってことだよね? だったら私が教えることを実際に実行してみて? いい? この近くに文字盤があるよね? でもあれは……あれは吸収する文字盤、そしてこっちが放出する文字盤。近くに蓋があるから、それを開いてスイッチを押して? そうすれば文字盤が光るから、後はそれぞれの位置に立つだけ。それで魔力が戻るはずだよ! じゃあ、後は頑張ってね~バイバ~イ♪〉


〈……お姉ちゃん〉


ブツッ……。


 フィーレ女王が満面の笑みでニッコリと口を開けながら手を振ったところで映像は終わった。時折交じるフィーレをお姉ちゃんと呼ぶ声は恐らく、実の妹である月の神のルナーだろう。今はお姉さまだが、昔はお姉ちゃんだったらしい。

 十二属性戦士は互いに顔を見合わす……。物凄く幼く明るい感じの少女だった。あれが今は凛々しい雰囲気を醸し出しているフィーレ女王の昔の姿だっただとは到底思えない。それほどまでに先程のフィーレは太陽の如く明るい人物だった。ルナーの姿はなく声だけしかなかったが。すると、爪牙がボソッと言った。


「何だかいつもの女王と違ってなかったか?」


「そう? あまり変わらないような気がしたけど……」


「まぁ、あの姿と今の姿は全然違うだろうがな。何せ、映像に映っていた時代のフィーレ女王は成人の儀を行っていないだろうからな。神族は二十歳になって初めて成人の儀を受けられる。そして同時に不死身の肉体と不老の能力を得る。それで今は見た目が変わらない姿になってる……。神のやることは私にも分かりかねる……。まぁ私達の体にも四分の一ほど神王族の血として神の力が宿ってるわけだがな……」


 雷人が周囲の壁面を手で触れながら言った。そんな他愛もない話をしていると、ついに怪物が細い通路を破壊した。今にもこっちにやってきそうな勢いだ。ノッシノッシと床を大きな足で踏みしめながらこちらに近づいてくる怪物。

 十二属性戦士は焦る想いで文字盤の上に乗ると、レバーを夢幻に下ろしてもらった。十二属性戦士の力が戻ってくるのが肌を、自分の体を通して伝わってくる。だが、その間にも怪物はすぐそこまで迫ってきている。白夜が怪物を何とか凌いでいるものの、五首も相手ではなかなか手が付けられなかった。このままでは確実に殺られる――かと思ったが、魔力を取り戻した十二属性戦士にとってさっきまでの強そうな怪物が今ではただの雑魚キャラに見える。

 強力な連続技を叩き込まれた怪物は、ヘロヘロになりながらも怪物の本能として最後まで十二属性戦士に襲い掛かった。フィーレに魔力の回復方法を教えてもらい、魔力を回復した今の十二属性戦士には敵はなかった。そして、十二属性戦士の手によってさっきまで苦戦していたのが嘘の様に怪物は倒された。全員が武器を収め、神々しい雰囲気を出す静寂の間から出て行く。

 来た道を進みながら十二属性戦士はふと思った。


――今頃夢鏡城は大丈夫だろうか?



 と、そんな疑問がふと脳裏をよぎった。恐らく、先程見た映像に出たフィーレとルナーの姿を見たせいだろう。

というわけで、何とかヴィンセント=オルグロスを倒した十二属性戦士にさらに新たな番人が登場。まるでヤマタノオロチの様に首を切ると増えるという。いやぁ八本じゃなくてよかったですね。そして、何故かアファルヴェインの静寂の間で見たフィーレの若かりし頃の映像。今はあんなに冷静で大人びている雰囲気を醸し出しているあの人がまさかあんなにも明るい人だったとは思わないですよね。ホント人って変わる人は変わるんですね。まあ、あの人は神様ですけど。

後半ではいよいよ舞台がヘルヘイムからウロボロスの大地へと移行します!

さて、Ⅲもいよいよ終盤が近いですよー!

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