表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十二属性戦士物語【Ⅲ】――光と影――  作者: YossiDragon
第一章:五つの封印解除阻止編
15/32

第六話「南の植物(South Plant)と北の騎士(North Knight)」・2

――▽▲▽――


 ここは空に一番近い場所に浮いている北の城……。ここには空を飛ぶ怪物がいるという噂があるが、真偽は定かではない。幻影の塔から伸びる支える柱によって北の方角に浮いている北の城は空に近いために雲に覆われていて外からはその城の全貌を見ることは出来ない。そして、今その場所に三人の十二属性戦士――暗夜、白夜、夢幻がいた。目的は無論北の城に住む怪物を倒すことである。雷人からの報告によると不思議な装飾を施された珠に面倒なことに怪物の血を満タンになるまで注がなければならないらしい。それを聴いた三人は非常に面倒くさがっていた。よりにもよって面倒くさがり屋である三人がこの場に集まってしまった。運命のいたずらにしては度が過ぎている。が、偶然にも通り道の近くに何故か落ちていたため、そればかりは運が良かったといえよう。

 互いに見つめ合い、渋々それを拾い上げる。


「はぁ、これが例のブツか?」


「ああ、どうやらそのようだ」


「なんや、これに入れるんかいな? にしても、ホンマ複雑な装飾しとるわ。売ったら結構高値で売れるんちゃう?」


 などと冗談を口走る夢幻に二人は何も言わず、そのまま先へと進んだ。


「ええ、無視かいな! あかんわ、それ! そこは売っちゃだめやろ! みたいなツッコミかましてくれへんと!」


 と言って涙目で背を向けている暗夜と白夜の後を追いかける夢幻。


「なぁ、いい加減怪物とやらが出てきてもいい頃じゃねぇのか?」


 白夜が、なかなか敵と戦えずにイライラを募らせていた。


「まぁそう焦るな。そのうち向こうから現れるだろうさ……」


 逆に暗夜は義弟の白夜とは反して冷静にそう言って呑気に頭の後ろで手を組み、気だるそうに歩いていた。すると、今度は白夜も口を挟む。


「せや。そんなカリカリしとるとストレスが溜まりすぎて髪の毛が抜けてしまうで~? もっと肩の力抜きぃや!」


 夢幻のアドバイスに白夜はふん! と鼻を鳴らしそっぽを向いた。


「けっ! 可愛げのないやっちゃ! ……にしても、随分と白い霧がたちこめてきよったな。それに、この静けさ……ん?」


「確かに、何か嫌な気配を感じる。まさに、嵐の前の静けさ……というやつか」


 夢幻に続いて暗夜もそれを感じ取ったのか、一旦歩くのをやめて刀の鍔に親指を添えた。


「……来るで!」


 咄嗟に気配を読み取った夢幻が二人にそれを大声で伝える。情報の伝達が割と早かったため三人とも無傷で済んだ。先程まで三人がいた場所にはバツ印が刻まれていた。その地面の抉れ様からそこそこの技を繰り出してきたのだということが理解出来る。

 三人が攻撃を放ってきたと思われる場所へ鋭い視線を送ると、上空から羽の羽ばたきと共に降りてきたのは――天使の様に真っ白な羽を付けた不気味な顔をした騎士の様な怪物だった。


「お前が北の騎士か……ふん、面白れぇ!」


 白夜が戦闘狂のように嬉しそうな微笑を浮かべ鞘を握る。そしてサッと剣を抜き取ると、素早く相手の急所に剣戟を与えた。


「ふん! こんなもの、ほんの一振りだぜ!」


 自慢気に白夜が空を切っていると、急に足元を掬われた。


「ぬわっ!?」


 地面に顔を思い切りぶつけた白夜は剣を手放し、掌全体で顔を押さえ転げまわった。


「いってぇ~!! くっそ、俺としたことが……油断したぜ!」


 後ろに下がり、相手と距離を置く白夜。すると、ふと化け物の下半身を見ると、そこには三つの渦巻く尻尾が生えていた。


「あんなに高く飛んでいたら技は殆ど届かないぞ。かといって、空中技を叩き込もうとしてもあの尻尾が邪魔だ! 三人一斉に攻撃にかかったとしても、相手の尻尾も丁度三本。こいつはちょっと面倒な相手になるかもな……」


 暗夜が小声でそう呟いた。

 と、その時、一本の尻尾が暗夜を襲った。


「おっと!」


 間一髪で躱した暗夜は近くの物陰に隠れた。他の二人も陰から敵の様子を窺う。しかし、全く相手に隙がない。今まで戦ってきた中でこんなにも強い相手は存在しなかった。敵の視界を遮るにしても、相手の目はあろうことか三つもある。前、左、右と三方向を見ることが可能で、後ろから攻撃しようとしても、気配を察知して後ろについている三つの尻尾で殺られてしまう。どうすればいいのか、皆目見当もつかなかった。すると、白夜の姿を三つ目の一つが捉えた。咄嗟に攻撃するも、然程致命傷は与えられていない。


「くっ!」


 白夜は敵に背中は見せず、後ろに下がった。しかし、後ろが見えないため少し大きめの石に、左のかかとが引っかかってしまった。


「ぬわッ!」


 ゴンッ! と地面に後頭部を打ち付け、当たり所が悪かったのか白夜は気絶してしまった。


「白夜!!」


 義兄である暗夜が白夜の元に駆け付け義弟を抱きかかえると、急いで夢幻のいる壁に向かって全力疾走で駆けた。


「こいつを頼む!」


「了解や」


 夢幻は白夜をおぶりながら首肯した。

 暗夜は武器を片手に怪物に近づいた。怪物は三つの目で目の前の標的を捉え、滑空してきた。暗夜は相手とのタイミングを見計らって技を繰り出した。だが、効果はいまひとつに終わった。しかも、その際に怪物に囚われ、頭を鷲掴みにされ宙ぶらりん状態になった。


「くそッ! この……放せ!!」


 必死の抵抗を試みる暗夜だが、頭を掴まれていて思うように身動きが取れない。怪物は、のた打ち回るエサを弄ぶかのように、暗夜の頭を持ったまま左右に激しく振り回した。


「ぐわぁああああああッ!!」


 暗夜は首がもげそうな激痛を痛感した。しかし、なんとかチャンスの機会を待った。だが、そのチャンスがなかなかやってこない。このままでは、首がもげるか骨が折れるかして自分が死んでしまうという危機感を感じ取った暗夜は、自身の力で脱出することにした。足を振子の様に動かし怪物の体を強く蹴ると、その反動による力で大きな手を振り解き脱出した。


――はぁはぁ、やばい! ……今ので今持っている魔力の半分を使い切ってしまった……。このままじゃ殺られるッ!!



 心の中で自分がピンチだということを理解する暗夜。白夜は気絶中、夢幻も手が塞がっていて危険な状態……。そして暗夜はあることを決断した。何かを心に決めたのか、真剣な面持ちで目の前の敵を見る暗夜。唸り声を上げながらゆっくりとこっちに近づいてくる北の騎士……。

 夢幻はその様子を陰から見守っていた。


――頑張りぃや、暗夜!



 心の中で暗夜の応援をする夢幻は、白夜をおぶり安全な場所に移動した。

 暗夜は雲の多い場所に出ると、上半身をかがめ武器を構えた。足を強く踏み込み剣を鞘から抜くと、サッと怪物の首元に剣先を向けた。素早く剣を横薙ぎにし首を斬り裂く。人間同様の真っ赤な血が噴き出し、地面を汚していく。片方の手で首を押さえる怪物。その手がどんどん血に染まっていくと共に苦しそうな怪物の声が暗夜の耳に聞こえた。


「これで終わりだ!」


 そう言って暗夜は高々と上空に掲げた剣を一気に縦に振り下ろした。だが、怪物はその剣を目の前で受け止めた。そう、白羽取りである。そして、北の騎士はそれに驚いている暗夜の隙をついて凄まじい神速とも言えるスピードで攻撃を繰り出してきた。思わぬ出来事に防御が間に合わず、壁に勢いよく叩きつけられた暗夜は「ぐうっ!!」と、悲痛の声を上げ片方の肩をぎゅうっと押さえた。肩の骨を砕かれたかのような激痛が神経を通って全身に伝わる。


「くそ……ッ!」


 自分の体に喝を入れ、何とかその場に立ち上がり先に進む暗夜。


「このままじゃこっちの身が持たない! 作戦も全て出し尽くしたし……そうだ! この雲を利用すれば!」


 再び何か策を思い付いた暗夜は雲の陰へと隠れた。怪物は暗夜を見失い辺りを見渡して捜索している。


「もう少しだ……あともう少し! ――今だッ!!」


 そう内心で自身に向けて合図を送った暗夜は、雲を上手く利用して相手が背を向けている隙に背後から四枚の羽根を切り落とした。


【グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!】


 今までになかった叫び声を上げ、怪物は顔から地面へと倒れこんだ。


「今度こそ終わりだああああッ!!」


 グサリッ! と怪物の背中に剣が突き刺さる音が辺りに響き渡り、しばらくして完全に静寂となる。


「ふぅ~……」


 暗夜は額の汗を拭い取り剣を背中から抜き取ると、先刻手に入れた珠へ血を注ぎ込んだ。それを荷物の中にしまうと、夢幻と白夜の元へ戻った。既に白夜は目を覚ましていたが、まだあまり動ける状態まで回復していないということで、夢幻におぶられたまま義兄の暗夜に喋りかけた。


「……大丈夫だったか?」


「ああ……」


「それで、珠に血は注ぎ込めたんか?」


 夢幻が落ちそうになる白夜をジャンプしておぶりなおす。夢幻の質問に対して暗夜は黙ったままただコクリとだけ縦に頷いた。それを確認した三人は、雲の立ちこめている場所を通り過ぎ北の城の出口付近に到着した。

 扉を開け中に入ると、そこには既に他の十二属性戦士が全員集まっていて、さらに自分達三人がいない間にラグナロクもそこにいた……。

というわけで、男だけでしたね。最後の地の文は除いてください。

序盤は夢幻の台詞でちょっと和み中盤ではほぼバトっただけですね。しかし、ホントバトルシーンが短いような気がしますが大丈夫ですかね?

まあ、その辺りはご了承ください。Ⅳでは長めにしますので。特に語る部分もありませんが、男同士のおんぶ……想像するだけで吹き出しそうです。

てなわけで、次回はいよいよ幻影の塔から出ます!

舞台はついに天空の城へ! アレじゃありませんよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ