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十二属性戦士物語【Ⅲ】――光と影――  作者: YossiDragon
第一章:五つの封印解除阻止編
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第四話「東の龍(East Dragon)」・2

――▽▲▽――


「グフフフ……。この我の手にかかればこのコンピュータにかけられているセキュリティーなど意図も簡単に解いてくれるわ!!」


 オドゥルヴィア博士は不気味に片眼鏡のレンズをパソコンの画面の光で反射し光らせ、下劣な笑みを浮かべていた。そして、あっという間にセキュリティーが解除され、パスワードが目前に露わとなった。


「クックック、わざわざご苦労な事だな。これで封印を解くことが出来る! 蘇るがいい、東の龍(イースト・ドラゴン)よ!!」


 オドゥルヴィア博士はそう叫びエンターキーを押した。プログラム解除のバーが画面中央に出現し、そこに緑色の光が左から右に向けて伸びていく。ゆっくりと封印が解かれていくまでの時刻が減っていく。


「オドゥルヴィアッ!!」


 爪牙が勢いよく扉を開けたが一足遅かった。


「フンッ! 下賤な輩め……偉大なるこの我を呼び捨てだと? 無礼者がッ! 我はオドゥルヴィア=オルカルト=ベラス!! 今すぐにでも神にのし上がれるこの我へ対する礼儀を正せッ!! 我の事はオドゥルヴィア様と呼ばんかッ!!」


「黙れッ!! 散々好き放題してくれやがって!」


 オドゥルヴィア博士の紅蓮の双眸の目力に怯むことなく、なお立ち向かう爪牙。すると、その姿勢に何を思ったのかオドゥルヴィア博士が口元に笑みを浮かべて口を開いた。


「……ククク、崖淵爪牙……一足遅かったな。鳴崎雷人がいない貴様らに、このプログラムを解くことは出来ん!! 諦めろ、グフハハハハハ!!」


 攻撃を仕掛ける三人を軽くあしらい、オドゥルヴィア博士は笑いながら窓辺にササッと移動しその窓から外へと飛び出した。飛び出すと同時にガラスの破片が三人を襲う。それを服の裾で防御しオドゥルヴィア博士の後を追うが、そこにはもう彼が戦艦のハッチから内部へと乗り込んでいる姿しかなかった。


「……それでは御機嫌よう、十二属性戦士? グフフハハハハハハハハハ!!」


 ハッチから大笑いしながら三人を見下し、その場から逃げていくオソマツ博士とクロノスの衛兵二人。そして戦艦。


「くっそ、待ちやがれ!!」


「ダメだよ爪牙兄ちゃん! 今はあいつよりもこのプログラムを何とかしないと! このままだと本当に東の龍が蘇っちゃう!!」


 爪牙を制止し、一台起動しているコンピュータの画面を指さす輝光。その眼には焦りの色が感じられた。


「どうすんだ?」


「分かんないッスよ!!」


「ちょっといい?」


 困惑する二人の間に割って入る様に言うと、輝光がパソコンのキーボードをカタカタと打ち始めた。


「お前、パソコン使ったことあんのか?」


「昔、少しだけやった様な記憶が微かにあるの……何ていうのかな、体が覚えてるって感じ……かな?」


 曖昧な言葉を口にしながら雷人程ではないものの、それ相応のスピードでキーボードを叩く。輝光の言葉を信じて爪牙と残雪は見守った。だが、何をやっても意味が無かった。パスワードが外れる音が何度も聞こえてくる。三人のこめかみから汗がタラリと垂れた。

 その一方で、東の龍が封印されている奥の建物では、龍の封印が少しずつ解け始めていた。


――もうそろそろだ!



 と、オドゥルヴィア博士が幻影の塔の空中を戦艦で旋回しながら封印が完全に解けるのが今か今かと待ち望んでいた。


――▽▲▽――


 爪牙、輝光、残雪の三人の十二属性戦士は、プログラムを解除するのは諦め別の手段を考えた。それは東の龍を倒すこと。プログラムを止めることが出来ないのであれば、殺すしかない。だが、そんな簡単にいくのだろうか? 三人の心には不安が募るばかりだった。しかし、それでもやらなければならない。第三の封印が解けるのも時間の問題だ。誰かがやらなければ周囲に被害が出るということは、自分たちがよーく理解している。何よりも、全ての発端は自分達が何も知らぬまま封印関係の物に手を出してしまい、封印を解いてしまったのが原因だ。だとすれば、自分達でケリをつけなければならない。

 そう決意した三人は、塔から飛び出し奥の建物へと急いだ。

 ガラスで出来た分厚い扉を開け少し長めの通路を抜けた先には、緑色の鎧を身に纏った銅像があった。


「何処に化け物がいんだ?」


 爪牙が辺りを見回す。しかし、広い円状のホールには三人の十二属性戦士と謎の銅像だけで、他には誰もいなかった。すると、地鳴りが起こり銅像がゆっくりと動き始めた。

 そう、銅像の正体こそが封印されていた東の龍だったのだ。

 凄まじい唸り声が大きなホールに響き渡り、木霊して三人の耳に届く。天井から垂れている黒い鎖が鋭い爪を持つ龍の手に結びついているが、龍の力に負けているのかだんだんと鎖が嫌な音を立てだし、天井にも亀裂が入って鎖が引きちぎれた。鎧の中から赤い双眸が三人をギロリと睨み付け不気味に怪しく光り輝く。激しい咆哮が壁に反響し、周囲に木霊した。そして、ついに東の龍が動き出した。体が大きいためか、一歩進むたびに床に亀裂が入る。尻尾の先にはサイコロの様な四角い箱がくっていていて、さらにその箱に車のタイヤの役割を果たすかのように歯車がついていた。体のあちこちに取り付けられた謎の緑の鎧は、重たそうではあるがそれ以前に何か危険を感じさせる物があった。三人は息を呑んでその光景を見続けていた。

 その時、東の龍の標的がこちらに向けられた。


「いよいよ来やがるかッ!?」


 爪牙がサッと武器を構える。すると、いきなり相手は凄まじい豪腕を使いこなし、襲い掛かってきた爪牙を一気に一番奥の壁まで弾き飛ばした。

 一瞬の事だった。

 輝光と残雪は唖然としている。目にも留まらぬ速さで壁に叩きつけられた爪牙は、口から血を流し体中傷だらけになっていた。


「なかなかやりやがるな。さすがは東の龍と呼ばれるだけのことはある……。こいつはそんじょそこらの敵とは訳が違ぇみてぇだぜ?」


 手の甲で血を拭きながら言う爪牙の忠告に、二人は恐れ(おのの)いた。

 東の龍は未だに大きな叫び声を上げている。すると今度は残雪が大きくジャンプし、空中から攻撃を繰り出した。


「くらえッス!!」


 残雪の攻撃が東の龍に当たる――が。

 刹那――三人が見たのはありえない光景だった。

 凍っているはずの敵の体は凍っておらず、それどころか鎧に取り付けられている赤い水晶体から姿を現した小さな龍が、残雪に向かって炎を吐いて攻撃してきたのだ。


「どうなってるの?」


 輝光は驚愕のあまり口をポカンと開けて呆然としている。


――▽▲▽――


 爪牙や残雪が戦い始めて約一時間が経とうとしていたその時、輝光に連絡が来た。


〈もしもし。輝光、聞こえるか?〉


 その声の主はハンセム博士だった。


「聞こえるけど……博士、どうかしたの?」


〈ああ、実は先程雷人から報告があってな。何でも四体の化け物がそれぞれの城にいて、なかでも東の龍? とかいうのがとてつもなく強いから気をつけろと言っていた。それを伝えたかったんだが――〉


 ハンセム博士は途中で一旦話を区切ると、しばらく間を開けて咄嗟に訊いてきた。


〈……ところで、さっきから爆発音の様な音が聞こえてくるのだが、何かと戦っているのか?〉


 それを聴いた瞬間、輝光がすぅ~と大きく息を吸い通信機に向かって大声で叫んだ。


「今戦ってるのがその最強とかいう東の龍だよっ!!!!」


 罵声にも似たその叫び声は、通信機を通ってハンセム博士の鼓膜に大ダメージを与えた。


〈ッくぅ~……そこまで怒らなくてもいいじゃないか。それにしても、そうか、やはりな〉


 ハンセム博士が心当たりのある様な言い方で言った。


「……何か手があるの?」


 急に態度を変えてワラにもすがるような気持ちでハンセム博士に訊く輝光。


〈雷人が今、時音と一緒にそっちに向かっているらしい。だから雷人に直接訊いてくれ〉


「嫌だよ! 今すぐ訊きたい!! だって、爪牙兄ちゃんも残雪も限界まできてるんだよ?」


 輝光の必死な言葉に折れたのか、ハンセム博士は嘆息すると言った。


〈……分かった。そこまで言うのなら今から俺が即席で作った連絡装置で雷人と交信する。それまで何とかして持ちこたえてくれ!〉


 ハンセム博士の説明を聴いた輝光は、静かにコクリと頷いた。爪牙が今まで戦ってきた相手は、ことごとく馬鹿力で何とか出来ていたが、今回の敵はそうもいかなかった。

 いつもならふっとばせるはずの力でも、龍の腕に攻撃した場合反対に自分がふっとばされてしまうのだ。


「くそ。何て硬い体なんだ!」


 想像を絶する力の差に爪牙は平伏していた。


「だんだん体力も限界に達してきたッス……」


 残雪も額から落ちる汗の量が多く、脱水症状を起こしている様に見える。

 その時、輝光に再び連絡が入り慌ててそれに応答した。


「はい!」


〈やっと繋がった! 私だ、雷人だ!! どうだ、そっちの様子は?〉


 義兄――雷人の質問に、輝光は自分の前で必死に戦っている二人を見る。二人とも呼吸を乱しとても万全の状態とは言えない。


「それが、どうもヤバそうな感じなの……どうすればいい、お兄ちゃん?」


〈そうか、分かった。いいか? あらかた調べた結果、スピリット軍団の情報の中からとんでもない攻略法を見つけだしたんだ。だが、それには続きが無い。そこで、その情報源となっていた時空元の塔に今来ている。そこで見つけた壁に書かれた文字とを照合した結果の文書を今手元に持っている。詳しく説明してる暇もなさそうだからかいつまんで説明するぞ? そいつの弱点は鎧に取り付けられた三十個の水晶体だ。それを全て壊せば、後はそいつ自身を叩けばいい! 水晶体一つ一つの色が属性と関連していて、それが属性の役目を果たしてるんだ。だから、そいつは三十個の属性を持っていることになる。だが安心しろ。そいつは見た目は強そうに見えるかもしれないが、水晶体自体にそう防御力は備えられていない。だが、かといってこの情報全てを信じるなよ? 何しろ、この情報ははるか前の物だからもしかするとその後に書き換えられている可能性も考えられる。それに、時空元の塔にある壁面に書かれた文字も全て解析し終えていないのだ。十分用心してかかれよ? ではな……〉


 そう言って雷人からの通信は途絶えた。


「爪牙兄ちゃーん! 残雪ー!! そいつの弱点が分かったよ~!!」


 声を張り上げる輝光の大声に気付いた二人は、急いでその元へと走っていった。


「それで、あいつの弱点は何なんだよ!」


 爪牙の質問にコクリと頷きながら輝光が説明した。


「――分かった?」


「なるほどな、分かった! うっしゃ、行くぜ残雪!」


「了解ッス!!」


 アドバイスを聴いた爪牙と残雪は、今までの疲労が全て吹き飛んだかのように素早く立ち上がると、武器を構えた。


「行くぜ!!」


 爪牙は足を踏み込み、スピードをつけた。素早い動きによりさっそく一個目の赤い水晶体が砕け散る。同時に龍が叫び声を上げた。


「グギャァアアアアアア!!!」


 耳の鼓膜が破れそうな甲高い叫び声が三人を怯ませる。しかし、そんな物に三人は屈したりしない。爪牙だけでなく残雪も戦いに加勢しはじめ、次々と水晶体が破壊されていく。そして、ついに龍が身に着けている鎧についていた水晶体は全て破壊されてしまった。龍は未だに苦しそうに唸り続ける。三人とも武器を構え攻撃態勢を保つ。すると東の龍は、大きく口を開き咆哮を放った。三人は慌てて避けたが、その後には鋭い突起物が床を抉るような傷跡が真っ直ぐ綺麗に残っていた。


「こいつは……ヤバイッスね」


 残雪が息を呑み、顎から垂れそうな汗を手の甲で拭う。しかし、爪牙は違った。既に相手の急所を見つけだしていたのだ。その場所とは――そう、胸の水晶体だった。不気味な眼差しがずっと爪牙を見つめているのに気付いたのだ。しかも、微かにだがあの場所から心臓の鼓動の様な物を感じる。間違いなくあれが心臓部分に違いない。爪牙はそう思い、カウンター等を使いこなして武器を巧みに使用し、それを打ち貫いた。

 水晶体は見事に貫かれ、背中から丸い水晶体が弾き飛ばされた。真っ赤な血に染まっている水晶体は未だに鼓動を続けている。しかし、おかしなことに龍は死んでいない。


「どうなってんだ!?」


 爪牙は目を丸くしている。

 東の龍はさらに苦痛の声を上げ、爪牙に襲い掛かってきた。


「くっ!?」


 危機一髪で残雪が救い出したものの、爪牙本人は悔しがっていた。


――あれが急所じゃないとしたら奴の心臓は一体どこにあんだ?



 そう心の中で呟きながら爪牙は武器で自分の体を支えて相手の心臓を探した。だが、どこにもそれらしき物は見当たらない。

 その時、東の龍の頭に水晶体があることに気付いた。


――ま、まさか!?



 爪牙はやけくそになり、二人を集めると小声で話した。


「いいか? 恐らくやつの心臓部はあの頭にある水晶体だ!!」


「ホントなの?」


 怪訝そうな顔で訊いてくる輝光。そんな彼女に対して爪牙はきっぱりと言った。


「間違いねぇ! 俺達は体ばかりを攻撃してまだやつの頭を攻撃してねぇ! 間違いなくあれが急所だ!!」


 はっきり言う爪牙に、輝光は嘆息しながら言った。


「……分かった。でも、あんなに高い場所だと一発でキメるしかないよ?」


「だったら、ジャンプ力の一番高い奴が行けばいいんじゃないッスか?」


 残雪の言葉に爪牙が腕組みをして考えた。そして、ふといい考えが閃く。


「そうか! この中で一番体重が軽いのはてめぇだ、輝光!!」


「えっ? わ、私!?」


 当の本人は驚愕の表情を浮かべた。


「確かに、この中でジャンプ力が高そうなのも輝光くらいしかいなさそうッスもんね!!」


 残雪も肯定し、仕方なく輝光が攻撃することになった。だが、こんな重要な役本当に自分なんかに務まるのだろうか? そんな不安が、輝光の小柄な体にのしかかってくる。しかし、それでも自分しかやる人がいない。

 そう自分に言い聞かせ、決心した。

 爪牙が輝光を出来るだけ高く飛ばすためにジャンプ台の役をすることになり、援護役は残雪になった。


「うおおおりゃああああああああああッ!!!」


 氷の魔法で龍の足を凍らせ、何度も足止めをする残雪を見届けた輝光が助走を付け始め、作戦が開始された。

 輝光の足が爪牙が構えている手元に来たところで爪牙がバレーボールを上空に飛ばすように輝光を高々と飛ばした。

 体重も軽い輝光は、フワリと空高く飛び上がりそのまま回転しながら勢いをつけ龍の額めがけて光の魔力を纏わせたクナイを深く突き刺した。

 ズブリ! という肉を刺し貫く音と水晶体の割れるパリン! という効果音の二つが重なり周囲に響いた。

 落下してきた輝光を受け止めた爪牙は、サッと後ろに身を引いた。龍が体をよろめかせ凄まじい叫び声を上げると、グラッと前屈みに倒れ掛かりそのまま地面に頭を打ち付けると共にその叫び声は消え去った。

 真っ赤な血が床に流れ、周りに広がっていく。すると、またしても連絡が入った。

――雷人からだった。


「どうかしたの、お兄ちゃん?」


〈いや、新たに分かったことがあってな。そいつの心臓部は頭部にあるんだが、実はもう一つ尻尾の先にある箱の中のコアを破壊しないとそいつは完全には死なないんだそうだ。それともう一つ、封印を解くために血を採取しないといけないんだが、どこかでいろんな装飾をされた綺麗な丸い球体はなかったか? もしも見つけたならそれに入れろよ? おっと、そろそろ時間だではな!〉


 一方的に喋るだけ喋って雷人の通信は途絶えた。


「装飾された綺麗な丸い球体……って、もしかしてこれのことかな?」


「ん? どうした?」


「いや、今お兄ちゃんから連絡があって、この東の龍が尻尾の方にあるコアを破壊しないと完全に死なないらしいんだ……」


 それを聴いて三人は黙り込んでしまった。一体どういうことだろうか? 様々な考えが脳内を駆け巡る。すると、さっきまで聞こえていなかった東の龍の唸り声が再び聞こえ始めた。爪牙は焦ってハンマーを龍の頭に向かって振り下ろした。


ゴンッ!!


 鈍い音を立てて龍は目を回し再び気絶した。輝光は残雪を連れて四角い箱に近寄った。


「この中にコアがあるの?」


「そうみたいッスね……」


 残雪が箱に触れ、中から鼓動の音が伝わってくるのを感じて言った。


「だったらこいつを使え!」


 そう言って爪牙が長剣を放り投げてきた。剣の切っ先は地面に突き刺さり僅かに振動していた。


「どうしたのこれ?」


「な~に、道中で銅像の一つによさそうな形の剣があったから取ってきただけだ。これなら、相当強度もあるみてぇだから簡単にコアとやらも突き刺せるはずだぜ?」


 爪牙のアドバイスを聴いて輝光は剣の近くに寄りそれを残雪に手渡した。


「お、俺ッスか?」


 人差し指を自身に向け訊く残雪。


「うん♪」


 満面の笑みを浮かべ頷く輝光。


「……り、了解ッス」


 一際大きく嘆息しながら残雪は四角い箱に近寄って行き、まるで今まで心の中にたまっていたストレスを全て吐き出すかのように大声を上げて剣を振り上げると、四角い箱を長剣で深く貫いた。すると、東の龍は突然カッと目を見開き大きく口を開けて叫ぶと、首をグニャグニャと歪に動かし再び倒れこんだ。三人がその様子を見届けると、輝光の荷物が光り始めた。


「何?」


 持ち主である輝光は荷物の紐を解き中身を確認した。光っている物の正体は、歯車に挟まっていた丸い球体だった。


「やっぱりこれだったんだ!!」


 爪牙は急いで東の龍の血液を手で掬い取り、輝光が持っている珠に満タンになるまで注いだ。ちなみにその珠は蓋を開ける部分があり、そこから注ぎ込めるようになっていた。

 そして、輝光から受け取った珠の蓋を閉めると再び輝光に返した。


「いいか? こいつは封印を解くために必要な大事な鍵の一つだ。絶対に落とすんじゃねぇぞ?」


 用心深く輝光に忠告し、三人はその場を出ようとした。

 と、その時、床に大きな亀裂が入った。


「一体何事ッスか!?」


 突然の出来事にパニくる残雪。他の二人も近くの柱にしがみつき、その同時に起こる揺れに耐えていた。

 天井の瓦礫が次々と地面に落ちてきて、とても危険な状態が続いた。

 三人はしばらくその場で大地震が収まるのを待つしかなかった……。

というわけであっという間に倒されてしまう東の龍。バトルとしては物足りないかもしれませんが、今回のラスボスはあくまでも別にいるので他の怪物とのバトルはなるべく短くしました。申し訳ありません。

Ⅳではなるべくバトルを取り入れたいと思っています。

 にしても、ハンセム博士の発明品のネーミングセンスはどうにかならないんですかね。まぁ、雷人もなかなかですが。そして、輝光が意外にもパソコンを使えるという新事実。

次回は西に向かいます。出てくるメンバーは楓と雫と菫です。

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