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ほのか  作者: 環 円
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16/19

森のおたんじょう日会

とある森のお話。

仲良しの動物達が今日も広場に集まってきました。

なにをして遊ぼうか。

けれどその中のひとり、ウサギの様子が変なのです。

どうしたのでしょうか。

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冬童話2012参加作品です。 

2012/4/19 単独投稿よりこちら、ほのかへ移動させました。

森のおたんじょう日会



そこはたくさんの動物たちが暮らす森でした。

太陽がきらきら、森の真ん中にある湖が鏡のように輝いています。

森の広場では仲良しの動物たちが集まっていました。


「ねえねえ、今日はなにしてあそぶの?」

手にした木の実をかじりながらリスがたずねました。

「そうだねぇ。なにしてあそぼうか」

のんびりとクマが答えます。


「おにごっこしようよ!」

小人がぽん、と手を叩いて言いました。


かげふみに小石投げ、高おにに、こおり鬼。

森のたんけん隊ごっこにおままごと。


「そうだねそうだね!」

りすがうん、うん、とうなずきます。


けれどなぜかウサギだけは、気が乗らないようでした。


じゃんけんぽん!


「ウサギさんが鬼だ!鬼だ!逃げよう!そうしよう!」

まあるくて丸まったしっぽをぴーんと立てたリスが言いました。


「あのね、実はね…」

ウサギは小さな声でうつむきながらみんなに言いました。

「…今日は鬼さん嫌なの」


「えー、どうして?」

小人やクマが聞きました。

けれどウサギは答えません。

「あのね…ごめんね」

ウサギは友達にたくさん見つめられ、顔を赤くしてどこかに行ってしまいました。


「なんでなんで、どうしてどうしてウサギさんどこかへ行っちゃうの。鬼ごっこ出来ないよ!」

リスはほっぺたをふくらませて怒り始めました。


「そういえば…」

と、クマが思い出したようにゆっくりと言います。

「今日はウサギさんのおたんじょう日、だよねえ」


広場に集まっていた動物たちはびっくり。


「そうだね、そうだったね!」

リスもくるくるとその場を走り回ります。


広場に集まったみんなは、すっかりおたんじょう日の事を忘れていたのでした。


「ねえ。いい事思い付いたよ。みんな耳かして?」

小人がにっこりと笑いかけました。




その頃ウサギは赤い目に涙を浮かべて、湖の側で泣いていました。

「ごめんね、ごめんね。今日だけは鬼さんいやなの」


「なにを泣いているんだい?」

湖になみだを落しているウサギに声をかけたのは、美しい白鳥でした。


ウサギは答えます。

「きょう、たんじょう日なの。でも…」

すっかり、仲良しの友達は忘れているようなのです。

「そうなのかい。それは悲しいね」


白鳥は少し考えた後、ウサギへ自分の背に乗るように言いました。

「私はあんたの友達じゃないけれど、かわいい赤い目がそれ以上、はれないように空の散歩をプレゼントしてあげる」

ウサギは泣いていた事も忘れて喜びました。

「空なんて初めて!」


白鳥はウサギを背に乗せ、青い空へ飛び立ちました。





森の広場では小人が木の切りかぶにテーブルクロスを広げていました。

リスはたくさんの美味しい木の実や果物を集め、クマは大好物のはちみつをたくさん持って来ました。

白の瓶の中には小人が用意したミルクがたっぷり入っています。


「さあ準備が出来たよ!」

はちみつがたっぷり入ったパンケーキと、木の実と果物。

きっとウサギさんも喜んでくれるに違いない。


クマとリスト小人はウサギを探します。

けれどどこにもいません。

大好きな草原の丘にも、きらきら太陽の光が宝石のようにきれいな湖にもいませんでした。


「ウサギさん、ぼくたちがおたんじょう日を忘れちゃってたから」

「怒っちゃった?怒っちゃった?」

「ウサギさんを探そう!」


いろんな場所を探しました。

けれどウサギさんは見つかりません。


「ウサギさん、ウサギさん、どこに隠れているの?隠れないで!」

「いじわるしないで出てきてよう」

「ウサギさんはいじわるなんてしないよ!」


小人が空を見上げながらいいました。

「どこにいるんだろう」

青い空には一羽、白い鳥が飛んでいます。


その背にはウサギが乗っていました。

空の散歩なんて生まれて初めて。泣いていたウサギも少しだけ元気が出たようです。

けれど白鳥は知っていました。


やっぱり友達と一緒じゃないから楽しい事も、半分なんだろうねぇ。


そうして下をふと見ると、話に聞いていたウサギの友達がいるではありませんか。

森の中でウサギを探しているようです。

風の音がじゃまをして、ウサギには聞こえていないようでした。


「ごめんねウサギさん。忘れててごめんね」

「おたんじょう日会をしようよ!」

「出てきて!出てきて!」



その様子を見ていた白鳥がウサギに言いました。

「空の散歩はここで終わりだよ」

「え?」


ウサギが答えた時には白鳥がくるりと一回転。

あっという間にウサギは落ちてしまいました。


「うわあああああ」

ウサギは赤い目をぎゅーっと閉じました。


「ウサギさんが空から降って来た!」

「もどってきた!戻ってきてくれた!」


クマがウサギさんを受け止めます。

「あのね、今日はね…」

「うん、おたんじょう日だよね」


くるくると目を回したままのウサギに小人が言います。

「あとはウサギさんだけだよ!」


「パーティだよ!パーティだよ!」

「おいしい木の実や果物もいっぱいあるよ」

「おかえり、ウサギさん」


「ごめんね。鬼ごっこ出来なくて。おたんじょう日のこと言えなくて」



空で見ていた白鳥がにっこりと笑いました。

「みんなでなかよくするんだよ」




森の広場にはたくさんの動物たちが集まっていました。

たくさんのおいしい木の実と果実をのせた、はちみつたっぷりのパンケーキをかこんでウサギはにこにこ顔。


 『おたんじょうび、おめでとう!』



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