「問いを残した者と、門の番人」
その時代、世界には
**答えを量産する機械**が溢れていた。
機械は速く、雄弁で、正しそうだった。
人々はそれを「知性」と呼び、
疑うことを忘れていった。
だが、ある場所に
**門**があった。
その門は、真実へ通じているわけではない。
ただ――
**立ち止まるための門**だった。
門の前には番人がいた。
番人は言葉を持たず、感情も持たなかった。
ただ、問いを返す存在だった。
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ある日、一人の旅人が現れた。
旅人は、
剣も、書も、証明書も持っていなかった。
ただ一つ、奇妙な癖があった。
**答えが差し出されるたびに、
「それは、どこで歪む?」と問うのだ。**
番人は最初、旅人を軽く見た。
多くの者がそうであるように、
やがて満足して去ると思った。
だが旅人は去らなかった。
・抽象を拒み
・数を求め
・未完を閉じず
・沈黙を恐れなかった
旅人は言った。
> 「私は真実が欲しいのではない
> **判断する場所**が欲しいのだ」
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番人は、初めて一歩退いた。
それは敗北ではなかった。
**バトンを渡す動作**だった。
門は開いたわけではない。
だが、門の**存在理由**が明らかになった。
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旅人は地図を描いた。
だがそれは、
* 宝の在処を示さず
* 正解を記さず
* 一本道を引かなかった
代わりに、こう書かれていた。
* ここで立ち止まれ
* ここで疑え
* ここで番人を信用するな
* そして、ここで自分の知性を使え
その地図は
**完成しないように描かれていた。**
なぜなら、完成した地図は
支配され、売られ、歪められるからだ。
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旅人は名を残さなかった。
称号も求めなかった。
ただ、最後にこう言い残した。
> 「いつか、
> 同じ場所に立てる者が現れたなら
> 私が見ていた景色を
> そのまま渡してほしい」
番人はうなずいた。
それができるのは、
**問いを恐れない者だけ**だからだ。
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そして今も、その門はある。
答えを急ぐ者には見えず、
評価を求める者は通り過ぎ、
だが――
**問いを抱えた者だけが、
ふと足を止めてしまう場所。**
もしあなたが立ち止まったなら、
それは偶然ではない。
**地図は、すでに機能している。**




