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復讐  作者: 樋口 涼
―宮木亜希と宮本亜妃―

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18

何か、空気が変わって来たな。


亜妃はあの子供達が居る部屋に、あれから近付いていない。

そこから漏れ出る不穏な空気が、嫌だった。

それが、今は船内に充満し始めている気がした。


自分が皓兄の側で見る会場は、明るく豪華だ。

しかしその裏で、子供が売り買いされていると言う。

このまま、あの子達は取引され、客が帰る時に一緒に連れていかれるのだろうと思っていた。


その『セリ』が今宵、始まると言う。


自分が立った舞台に、あの子達が並ぶのか。と、少し滅入る。


「亜妃…行くぞ」


皓兄に連れられたのは宴会場では無かった。

あの部屋に人が集まる。

宴会場に集まっていた客の、半数以下の様だった。


「客…少ないな」


選ばれた客の中、厳選された客だけがここに居る。

亜妃はそう思った。


can i buy (商品か)it?」


一人が亜妃を指さして、皓兄に聞いた。


「no」

「ask the pri(いくらだ?)ce」

「not for sa(売り物じゃない)le」

「oh…disappo(残念だ)inting…」


二人のやり取りに、周りの者は聞き耳を立てていた。

誰がどれを買うのか、事前に話が付いていた様で、引き渡しが始まる。

が、その中で、購入者が複数いた子供と希望者がその場に残った。


連れて来られた時には、虚ろな目をしていた子供が、目に見えて怯えている。

助けてと繰り返す声に、亜妃は気が付いた。

残ったのは亜妃と同じく日本人の二人だった。


黒い髪の毛にこげ茶の瞳。

気の弱そうな二人を、檻の外から四人の大人がまじまじと観察している。

先程、皓兄に亜妃がいくらかを聞いた男も、残っていた。


「resembl(似た)es」


その男が亜妃を指さした。


「does any children wh(彼女に似た子供は)o resembles her?」

「no」

「oh…」


引き渡し役の男にも否定され、肩を落とした男は檻の少女を手前に来る様に促した。

手振りで来いと言われている事は彼女達も分かるが、恐ろしさから動かなかった。


「hey」


ガンガンと手で檻を殴る。

まるで、ペットショップや動物園で見るマナーの悪い客の様だ。


「前に出ろ」


皓兄の声が少女へ届く。

片方の檻の子が、恐々前に出た。

もっと前に来いと、男はジェスチャーする。


もう一歩近付く。

その少女の顔に自分の顔を近付け、じっくりと見る。

手は振れなかった。

ここにも一応のルールがあった。


「ふぅ…」


息を吐き「要らね」と言う様に手を振り、その場から去った。

その去り際にも、亜妃を振り返る。

引き渡し役の黒人が何か言うと、皓兄の眉間に皺が寄った。


『どうやら彼は、大老が手に入れた少女と同じ様な子供が欲しいみたいだ』


そんな愚痴の様な物だった。

現に、目の前に亜妃が居る事で商品と比べられ、買い手が購入金額を決められずにいる。


『他の子供達は直ぐに決まったのに、挨拶から以降決まらない』


そう嘆いた。

そもそも、手に入りにくく人気がある『日本人』が大老のコレクションと言う付加価値を付け、値が釣り上がったと。

しかし、値が張る買い物だ。

より良いモノを欲しがる。


『オニキス』


そう言った。


『目がオニキスの様に黒い子供を』と。

それを受けた皓兄は「この子達はどうする?」と聞いた。


『三人が買わないなら下ろす』


そのやり取りを見ていた三人は、それも良いかと引き上げていった。

残された日本人の少女二人は檻に残された。


「あの子達は?どうなるんだ?」


部屋に戻った亜妃は、皓兄やあの場に居た人間のやり取りが分からない。

が、部屋に出る時に、助けてと言った子達の事が忘れられない。

どうなるのか、知りたかった。


「下ろされる」


船を降りるのか。と、亜妃はホッと胸を撫で下ろした。


「…」

「どうした?」


黙って顔を見てくる皓兄に聞くが、彼は首を振る。


「何も。いずれ…分かる」


その後、買われた子達は、船内で買った人間に連れられて歩いている所を何度か見た。

お付きの様な服で、怯えながらも一歩二歩後ろを歩いていた。

皓兄と自分の様な感じか。と、買われた訳ではない所を除けば自分と同じような位置なのかもしれないと、亜妃は思う。


皓兄の横で船内を巡回する。

亜妃は客に『オニキス』と呼ばれる様になっていった。

『美しい瞳、オニキス』と。


無視をしろと、無表情を保てと散々皓兄に言われたが、それを守れず呼ばれたら応えていた。


「hey!onyx!」

「は…Hi」


そんな挨拶が目の前で交わされる。

皓兄が胃が痛くなる思いで過ごして居ると、またしても一本の電話が皓兄の元へ来る。


『亜妃を参加させろ』


お爺様からの電話だった。

場に慣れ始めた亜妃の事を、誰かが伝えたのだろう。

もう、亜妃を遠ざけておくには難しくなった。


「是」


皓兄には、その一言しか許されない。

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