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復讐  作者: 樋口 涼
―宮木亜希と宮本亜妃―

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7

学校の給食室にあるテーブルよりも大きなテーブルが、案内された部屋には有った。

片側に二脚、片側に三脚と人数分の椅子が並び、その間に飲み物が置かれたワゴンが置いてある。


三脚の真ん中に亜希は案内されると、ぎこちなく座った。

亜依と悠衣は、各々の横に付いた女性に椅子を引かれ、タイミングよく座る。


え、こけないの?


亜希はいつも通りの慣れた様子の二人に驚く。


私は…座れなさそう…。


引かれた後、自分で座る時に前に引っ張った亜希。

びっくりさせてしまったかも知れない。と、自分の後ろに居る女性を思う。


ごめんなさい…知らなかったの。


俯き加減でちらっと後ろを見る。

そんな亜希に、女性は微笑んで反応してくれた。


「御用がありましたら、いつでもお声がけください」

「あ。はい…」


返事をし、前を向く。

前の席はまだ空いている。


「待たせたわ…」


そう言いながら、先程会った女性が席に着く。双子の母親だ。


「お父様は?」

「まだお仕事ね」

「お客様も来ているから…先に頂きましょう」


始まった夕食は、全て亜希の食べられる物が出て来た。

色とりどりの野菜に、焼かれた魚。

玉子を使った料理。

甘いデザート。


自分の家で出て来たメニューや、学校の給食でさえ全て食べられる時は滅多にないと言うのに。

ここでは、全て。


苦手な肉も、家族さえ苦手だと知らない『生魚』さえも、出て来なかった。

嫌いな感触の…ねっとりとした餡もかかっていない。

サラサラとした食べた事の無いソースで、口の中が華やぐ。


「美味しい…」


思わず声が漏れた。


「そう、それは良かった」


目の前の女性は、最初あった時感じた怖い雰囲気は微塵もなく、優し気に微笑む。

亜希はがっつきそうになるが、左右の双子の食べ方を見て、己を抑えた。


行儀が悪いのはダメだ。


双子の食べ方を真似する。

魚の皮が苦手な亜依は、綺麗に剥がした後、横に避けた。

大き目な野菜は、フォークで押さえ、ナイフで切って一口サイズに悠衣はする。


猫背に前かがみで、食器に掛かる様な姿勢はしない。

背筋を伸ばして、零さない様に…。


口を拭く時は…膝の上のナプキンを…。


チラチラ。と二人と母親を見る。


「ふふふ」


女性が笑った。

亜希は自分が失敗したのか。と、顔が熱くなったが違うようだった。


「ごめんなさい。あなたが行儀よくしようとするから…つられて娘達も気を使っているのが面白くて…」


続けてふふふ。と押し殺して笑う。


「お母様、ばらさないで」


不服そうに亜依が抗議した。


「亜依はそうかも知れないけれど、私はいつも通りです」


ツンと胸を張って、悠衣は誇らしげに主張した。

最後のデザートを口に運んでいると、女性はナプキンで口を拭いて横に置いた。


「初めまして、挨拶が遅れたけれど」と、亜希を見る。

口に入れたばかりの亜希は、急いで飲み込もうとしたが「慌てないで、聞いて」と制される。


「私は二人の母親です」とお母様は話し始めた。

遅いながらの自己紹介。

「できれば『お母様』と呼んで欲しいわ」と、双子の母は言った。

自分の母親がいるのにそう呼ぶのは抵抗があるかと聞かれたが、亜希には無かった。


続いて食べ終わった悠衣も、ナプキンを置いて「宮本悠衣です」と名乗る。

遅れて亜依が「亜依です」と名乗った。

そして「さんなんて付けないで、呼んで欲しい」と二人も言う。


「仲良くなれそうで良かったわ」と、お母様は微笑み、亜希が聞きたかった肝心の話へ動いて行った。


どうして亜希の名前を知って居るのか。

歳も。好みも。


「ごめんなさいね。少し調べさせて貰ったの」


その言葉に亜希はドキッとする。


「あぁ、そこまで詳しくは調べてないから、…安心して」


どこまで調べる気だったんだろう。

家族でさえ覚えていない。知らない物まで…。


「この先、一緒にご飯を食べる機会がある可能性を考えて」


と、お母様は言った。


「なんで私を?」


調べようと思ったのか。


「間島があなたを見つけた時、大おばあ様と瓜二つだと聞いていたの。それを聞いた亜依が会いたがったのだけど、見知らぬ人間を会わせるのは危険だと思ったの」


「あなたからしたら私達も見知らぬ人間でしょうけど」と、言い足す。


どうやって調べたのか、聞いても良いのだろうか。


質問をしようとした瞬間、お母様に女性が何かを耳打ちした。


「あら。…仕方ないわね。もう少しお話ししたいけれど…またの機会に」


そう言って席を立つと部屋から出て行った。


「勝手に調べてごめんなさい。私からも謝るわ」


悠衣が頭を下げた。


「誘拐とか…危険な事がたまにあって…」


こんな屋敷に住んでいるのだ。無理も無いな。と亜希はその理由に納得した。


「ううん。仕方ない事だよ。…それにこんなにおいしい物も食べられたし」


亜季が答えると、安心したように悠衣は笑う。


「良かった」

「食べ終わったらもう少し遊ばない?」


亜依がそう言うので、三人は食後部屋に戻ると、ボードゲームをしながら、話をした。


「名前を知った時、苗字は棒一本の違いで、名前は一文字違いでびっくりした!」

「私は、会った時に一瞬亜依と見分けが付かなかったの。だから名前を言った時の反応を見たのよ」


今日の事、学校の事、普段の事…。

会話をするだけで、ドンドン時間は過ぎていく。


しかし、双子は亜希に会いたかった理由。

この家に招き入れた本当の理由を、まだ言わずにいた。


亜希は双子やその両親の、本当の思惑を知らないまま、この家に入り浸る様になる。

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