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あんな汚い場所、舐めるんだ…。
うぇっ。と舌を出し、顔を顰めた。
消された部分がどういった所なのか、一華はあまりわかって居らず、排泄をする場所。と、言う事くらいにしか認識は無い。
しかし、目の前で繰り広げられる男女の絡みに、一華は声無く只々魅入った。
その行為が意味する事も、自分が向けられ嫌悪した欲望の事も、画面の二人の表情と声で一切が「良い事」なのだと上書きされていく。
『嫌だった』
『気持ち悪かった』
そんな自分の思いも全て見失い…置き去りにしたまま、工程のみを指南書から吸収するかの如く覚えた。
時間と工程が進むに連れて、男女は場所を入れ替え、立ち替わり腰を打ち付け始めた。
ただ…肝心な所は隠れ、見えてはいない。
だが、一華も四年生。男女の体の違いくらいは知って居る。
そうか。あの穴は…。
一華は亜希の穴を思い出す。
指を入れようとして、酷い抵抗に遭った…。
あまりにも抵抗する亜希の息が荒くなり、喘息の発作を起こされては敵わないと中断したが、目の前の女には子供の指以上の物が入っている…。
自分のはどうなのだろう?
布越しに触ってみる。
痛いのが…抜けなくなるのが怖くて、亜希に代わりに試そうとして失敗に終わった場所。
自分にも当然、有るのだ。
「そんなとこ触らんとき」
小さい頃、触っていた時にそう母親に怒られた。
黴菌が入ると腫れて痛くなるとか、汚いから。と。
それでも今、触りたいと言う好奇心が強くなってくる。
テレビから流れる小さいながらも興奮している男女の声に、背中を押されている様に。
「だ…大丈夫。ちょっと…だけ」
自分の身体に触れるのに、誰の許可を取ろうと言うのか。
一華はドキドキと、心臓の音が速くなるのが分かった。
指が布越しに柔らかい部分を撫でた。
亜希と同じ柔らかさ。
奥には骨の硬さがあった。
下着の中に手を入れてみた。
トイレの後、紙で拭く様に手を動かしてみる。
汗で幾分かしっとりしているが、滑らかな触りが手から感じた。
あんな…毛が、いつか自分にも生えるとは想像できない。と、一華は思った。
テレビに視線を戻すと画面の女性は乳を揺らし、口を軽く開けたまま小刻みに吐息を漏らしていた。
私の胸も、いつか大きくなる。
今も…亜希よりは出ている。
いつかは…こんな人の様に…?
一華はゆっくりと指を動かした。
へこみに沿う様に、丸みを押しつぶす様に。
次第に強く、早くなっていく画面の男の動きに合わせる様に、一華も動く。
「はぁ…っはぁ」
自分の声なのか、テレビの声なのか、分からない音が部屋に響き始めた。
「あっ…あ…」
そうか。これは気持ちいい事なんだ。
テレビの声に合わせる様に、一華は声を高くしていく。
一際声を高くした男女が、身体を震わせた後、画面はゆっくりと暗くなっていった。
一華は巻き戻しボタンを押した。
息も荒く、汗も少しかいたが、何だか中途半端だと思えた。
しかし、時計を見るとだいぶ時間が経った事が分かる。
外も暗くなり始めていた。
ガチッとビデオが止まる音がしたのを聞くと、テレビとビデオデッキの電源を落とし、自分のビデオテープを握りしめ戻った。
テープを戻している間も、見た映像が頭にこびり付いている。
その映像を振り払う様に顔を振る。
「水でも…のも…」
お腹も減ったし。と、悶々とした気分を見ないフリしながら自室を出ると、一階に亜希の姿が見えた。
部屋の前を通った時に聞かれたかもしれない。と、不安になったが、呑気にテレビを見ながら夕飯を食べている姿に一華は安心した。
大丈夫。バレてない。聞かれてない。
冷蔵庫から夕飯を出しレンジで温める。
温まった物をテーブルに置き、亜希の目の前に座った。
亜希は映画でもニュースでもなく、タレントがいっぱい出ている番組を見て笑っている。
母親がよく見ている番組だった。
この時間ならアニメもしているのに。
と、一華は勝手にチャンネルを変えた。
亜希は何か言いたそうだったが、何も言わず黙々と夕食を食べ始めた。
二人だけの家で、主導権が有るのは一華だ。
嫌いな人参が皿に乗っている事に気が付き、それを亜希の皿に移動させる。
黙って食べる亜希。
その皿の上には亜希の嫌いな肉が避けてあった。
「好き嫌いしないで食べなよ」
自分の人参を押し付けておきながら、皿の肉を指さした。
ついでに自身の皿の脂身も、亜希の皿へと乗せる。
「ちゃんと食べないと大きくなれないよ」
皿に増えた脂身と怪訝な顔で見合う亜希に、一華は白々しくも言う。
「ほら早く。食べたら…お姉ちゃんと遊ぼ」
笑いかける一華とは逆に、亜希の顔は青ざめ引き攣った。




