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虐待の描写が有ります。
ご注意下さい。
亜希は一華にされている全ての事を母親にはもちろん、兄にも父親にも言わなかった。
殴られ、叩かれ、時には布団を口に押し込まれても、言わなかった。
「生意気な口聞かないで」
亜希の服を掴むと一気に引き倒した。
最近よくテレビで見る柔道の技を、見よう見まねで亜希にかける。
一華の最近の流行だ。
捲れた服の下から、白い肌が見えた。
自分よりも幾分白い…。
「何これ?」
スカートとスパッツの腰の辺りを掴むと、引き下ろした。
服の下から白い横腹に赤と青の痣が出て来た。
私…はやってない。
保守新から一華は亜希と距離を取った。
その痣を亜希は今、母親を呼び自分の所為にしようと思えば出来る事を本能的に考えた。
「何でもない」
一華が離れた隙に、衣服を整える。
「着替えるから見ないで」
亜希はそう言って後ろを向き、部屋着を出した。
いつもなら「見る訳ない」と外に出るか、自分の机に向かう一華だったが、着替える亜希を見続ける。
下ろされたランドセルの下から、クッキリとした靴型が服に残っている。
服を脱いだ背中にも、よく見たら爪で引っかかれた様な傷が出来ていた。
「なんなん…あんた、虐められてんの?」
ふと口元に笑みが浮かぶ。
「弱いから虐められんねんで…?」
薄ら笑いを浮かべる一華に、一瞬視線を送り亜希は目を閉じてため息を吐いた。
「どうでもいいし…」
一華になのか、自分になのか…誰に向けての言葉なのか分からない台詞をぽそっと吐くと、亜希は部屋から出て行った。
一華は部屋をもう一度見渡した。
一華の好きな色で整えられた部屋。
机の上も、床も、亜希と共同の…洋服の引き出しまで全て。
兄の部屋にも一緒の机がある。
それを母親の部屋に移動した方が速く、中身もそんなにないはずだ。
恐らく、週末の亜希の移動は一瞬で済むだろう。
今日にでも出来るところをしないのは、一華への「準備期間」としての気配りだ。
「お兄ちゃんと…一緒か…」
昔、兄と父親から受けたあの気持ち悪さが、一華の体を巡る。
父親からの気持ち悪い行動は、今の所無かった。
それもその筈、あれはだた単にヌクのにそこに在った体温のある「物」を使っただけに過ぎなかった。
父親からすれば…だが、それを一華は知らない。
その為に、今でも父親と二人きりを避けている。
なのに、避けられない状況になってしまった。
兄が家に戻ってから、そんな事は無かったが、同室となると幼少期と同じようにされるのではないか。
そんな不安が頭を過る。
『自業自得じゃないの?』
亜希の声が耳に蘇る。
亜希は…知らないんだ。
あの、気持ち悪さを…。
妹の母親に守られている様な今と、父親や兄から受けた気持ち悪さを経験していない事に、腹が立ち始めた。
同じ目に遭えばいいのに。そう、思った。
だから。
週末までに実行した。
夜、二階へ上がり、亜希がベッドへ入ったのを確認すると、一華は亜希のいる布団へ潜り込んだ。
「何…」
「しっ!声出しちゃダメ」
小声で亜希に命令する。
布団の中、手探りで亜希の皮膚に触った。
「くすぐったい」
「しゃべっちゃダメ」
亜希の口を手で塞ぐ。
モゴモゴする亜希に、咳き込まれたら困る。と、口から手を離す。
「いい?声出したらダメだから。声出したら殴るから…」
そう言って、亜希を頷かせる。
そのまま亜希の体を弄る。
自分がされた様に。
ドキドキ。
凄く悪い事をしている気持ちになる。
ドキドキ…ドキドキ。
胸が激しく打つ。
何だか…楽しい。
亜希の顔は嫌そうな顔をしていた。
こそばゆいのと声を出せない事で、身体はもにょもにょと動いた。
自分とは違う、膨らみも始めていない胸を触る。
起伏の無い、胴体を撫でてはみたが、手触りが良い事しか分からなかった。
下の方に指を動かすが、少しへこんだ臍に指が触れると、亜希は思わず声をあげた。
「煩い!」
宣言通り一華は亜希を殴る。
頭を殴られた亜希は、今度こそ声をあげない様に口を自分で塞いだ。
ドキドキ。
ドキドキ。
ドキドキドキドキ。
ドキドキ…。
どちらの心臓の音か分からない。
フニフニとした柔らかい物を指先で押す。
フニフニ…太ももとの間にあるその柔らかい物をぐっと押す先に、硬い物が指に触れる。
これが骨か。
軟体動物に思えた妹が、ここで骨を持っている事に気が付いた。
骨を伝って移動すると、何やら指が入りそうな所があった。
「開けて」
一華の言葉に亜希は首を振る。
ゴツッ。
亜希の頭を殴る。
「開けろ」
亜希は明らかに怯えた眼差しで、一華を見た。
本当はこんな所まで触られた事はない。
けれど、怯える亜希の顔を見ると、自分がされた事より酷い事をしているのが分かった。
いつもなら生意気な目に、涙が浮かんでいる。
殴ったり叩いたりした時に見る涙ではない…涙。
「早く」
一華の声に逆らえない亜希は、震える足を開いた。




