表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐  作者: 樋口 涼
宮木一華

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/75

24

朝日が家を照らす頃、母親は音を立てずに帰って来た。

薄っすらと残った香水と、嗅いだ事の無い匂いを纏って一華が眠る部屋に入って来た。

父親は帰って来ていなかった。


母親の着替える音が、耳に入り薄目を開けてみると、綺麗なドレスによく付いている物が母親の下着に付いていた。


あぁ。綺麗なドレスはお母ちゃんのパンツになったんか…。


寝ぼけた頭でそう考えた。

だから、クリスマスに貰えなかったんだと、納得した。


母親はそれを脱ぐと「良いモノを洗う為の袋」に入れて、ドレスの様なパンツから普通のパンツに履き替えた。

一華は、綺麗なドレスからボロの服に変わるお話の絵本を、園で見たなと思った。


シンデレラ…。お母ちゃんシンデレラみたい。


また、目を瞑ると煌びやかなパンツをはいた母親が、カボチャの馬車から降りて来た。

馬車を引くのはあのキーホルダーの知らないキャラクターと青い車で、車の中にはネズミの耳を付けた兄が運転をしていた。

パンツ姿の母親が誰の手を取って城に行くのか、そこまでは分からなかったが、魔法使いのおばあさんは居なかった。

その代わりに居たのは、子供の裸を必死になって撮る老婆で、撮られていたのは従兄弟達だった。


老婆の顔は見る見るうちに祖母に変わり、被写体は亜希になる。

素っ裸の亜希の写真が徐々に燃え、下から浮かび上がってくるのは自分の裸体。

それもまた火が付き燃えていた。


気が付くと燃えているのは自分の腕だった。

払おうとしても払えない。

消えないまま、自分が炎に包まれる所で…一華は叫んで起きた。


冷や汗と共に布団が冷たい事に気が付いた。

汗ではない。

火の夢を見ると漏らすと、聞いた事があった一華は「やっぱり」と愕然とする。


どこにも隠す事は出来ない。

横に違う布団で寝る母親をゆすり起こした。


「お母ちゃん…」

「何」


眠そうな声が返って来る。


「お布団…濡れた…おしっこ…」

「はぁ!!?」


眠っていた母親が勢いよく起きる。


「なんで!?昨日トイレ行かんと寝たんか!!」


平手が飛んでくる。

一華は頭を抱えて縮こまり、タンスの方へ体を寄せた。


「ごめんなさい。ごめんなさい」


パジャマの膝に水滴が落ちる。


「そんなとこ行ったらそっちまで濡れるやろ!」


髪の毛を摑まれ、無理やり立たされるとズボンと下着を脱がされ、階段を引き摺る様に下ろされた。


「なんでこんな手間のかかる…」


風呂場へ放られ、浴室に溜まっている水を掛けられた。

が、いつもより冷たくは無かった。

今朝帰って来た母親が入った後だったのが幸いした。


「流したら服、洗濯機に入れときや」


勢いよくドアが閉められたが、暖かい水が寒い室内で凍えた下半身を温めてくれた。

水をバシャバシャとかけていると、ドアの前に人影があった。

横に隙間を開けて、覗いているのは兄だった。


目が合うと、すっと閉めて人影は消えた。

笑っている様に見えたが、それは気の所為ではなく和雄は本当に笑っていたのだろう。

鼻歌を歌いながら二階に上がり、苛ついた母親に殴られたのだから。


タオルで拭きながら、下着とズボンを新しく履き、廊下で母親が後始末をしている間、土下座し続けた。

床板で膝が痛く、赤くなろうが終わるまで止めてはならない。

下から時折、ストーブで温められた空気が来るのが少しの救いだった。


「ほんまに…ほんまに…」


ぶつぶつと文句を言いながら、布団からシーツを剥がし、水気をシーツの渇いている所とぞうきんで取っている。


「年明け早々…なんなん…」


布団を持ってお風呂場に移動しても、付いて行く。

そして、お風呂場の前の床で正座をし、頭を下げた。

足元を拭う布の上に座りたい気持ちになろうとも、乗ってはいけなかった。


ただひたすら、布団の処理をしてもらっている間許しを請う。

布団が猫の額ほどの庭に干されてから、許される。

一華の脛は赤くなっていた。


明日、やっと冬休みが終わる。

最悪だがこの後の一日を無事に過ごせば、半日は家に居なくていい。

園で新しいクレヨンを使うのを、少し楽しみにしていた一華は、明日の準備を早々にして、出来得る限り気を付けて一日を過ごした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ