思わぬ形で再会した組み立て式紙飛行機の付録
挿絵の画像を生成する際には、「Ainova AI」を使用させて頂きました。
土曜の午前中を費やした部室の掃除の成果は、概ね納得出来る物だった。
何しろ僕達が所属しているのは映画研究会だから、何かと物が多いんだよな。
「手助けしてくれて助かるよ、樟葉君。お陰で今日中には元通りに出来そうだ。」
「副部長なら当然ですよ、枚方部長。それにしても凄い冊数ですね。」
そう言って苦笑する後輩の視線の先には、虫干し中の蔵書達がズラッと並んでいた。
「今までに制作した映画の台本や絵コンテ、それに資料類。傷んだら皆に申し訳無いからね。その辺りの書籍や資料は樟葉君にも見覚えがあるはずだよ。」
「あっ、確かに!このムック本、『アパート住まいのインベーダー達』を撮る時に参考にしましたよ。」
虫干し中の蔵書類を眺める副部長の表情は、実に愛おしそうだった。
温故知新とは言うけど、樟葉君は過去作から新構想を得ようとしているのかも知れないな。
「おっ!良いですね、『冒険少年王特別編集・アルティメマン大全集』。部長が特撮映画を撮る時は、必ずと言って良い程にアルティメマンのシリーズを参考にされていましたね。」
そんな時、一枚の厚紙がページの間から落ちたんだ。
「これは…おっ!」
拾い上げた副部長の声は、妙に弾んでいた。
「見て下さい、部長!懐かしいですよ!『冒険少年王四月号付録・ティルトビートルぐんぐん紙飛行機』、状態も悪くないですね!」
「あっ、それは…」
何とそれは、僕が小学生の頃に失くしたと思っていた雑誌の組み立て付録だった。
組むのが勿体なくて本に挟んで、そのままになっていたらしい。
すると何を思ったのか、樟葉君は組み立て付録の台紙を手にしてコピー機へ向かったんだ。
「台本や宣材を印刷する都合上、色んな紙で印刷出来る高性能なコピー機が導入されていたのは幸いでしたね。これも映研部員の役得ですよ。」
そうして操作を終えた樟葉は、紙質も色調も寸分違わぬ出来で複写された組み立て付録の台紙を誇らしげに差し出してくれたんだ。
「未組で保存すれば、いずれ価値が出るかも知れません。だけど折角の組み立て付録ですから、遊んであげた方が喜ぶと思いますよ。勿論、私も協力します。」
「ありがとう、樟葉君。君の言う通りだよ。」
後輩部員に頷きながら、僕は失くしたと思っていた組み立て付録に視線を落としていた。
彼女の言うように、キチンと遊んであげるのが筋だろう。
映研で鍛えられた今の僕達なら、特殊効果で格好良く飛んでいる映像も撮れるはずだからね。