引っ越し先の悪夢
※当方には特定の団体を誹謗する意図はございません。
これはもう何年も前の出来事です。
真相は定かではありませんし、あくまで噂の範疇だとしておいてください。
東京でもいわゆる下町といわれる地区に引っ越す事になりました。
そのアパートはかなり新しく、周辺の別のアパートに比べると少しだけ家賃が安かったんです。
大きく家賃が安ければ直近で何かあったのかもと疑問に思ったのでしょうが、少しだけ安いという事でそこまで警戒しなかったんです。
ですが、異変は引っ越しして数日後に早くも起こりました。
そのアパートの隣は一軒家でして、そのアパートとその一軒家の間にゴミの集積所がありました。
引っ越しするとそれなりにゴミが大量に出るものでして。
曜日をちゃんと確認しながらゴミを集積所に捨てていたんです。
会社から戻ると、私が出したゴミが回収されていなかったんです。
曜日は間違っていないはずだし、ちゃんと分別もしたはず。
なぜ回収されなかったのだろう?
しかもよく見ると出したゴミ袋の口が開いていたんです。
見ると恐らく近所の中華料理屋で使っていたと思われる調味料の大きな容器がゴミ袋の中に何個も入っていました。
いったい誰がこんな嫌がらせを?
そう思いながらゴミ袋を回収すると、隣の一軒家のおばさん(以下Aさん)が、あなたの隣の部屋のおばさん(以下Bさん)がそのゴミを漁っていたのを見たと言ってきたのです。
それから数か月後の事でした。
私の部屋に警察がやってきました。
警察は言いました。
「あなたの部屋からの騒音が酷いと近隣住人から苦情が出ています。昨晩どのように過ごされましたか?」
実はその日は徹夜明けだったのです。
なので昨晩は仕事で家にいなかったんです。
すると警察は言いました。
「そんなはずは無いんですよ。近所から苦情が来たのだから。署までご同行いただけますか?」
今徹夜仕事を終えて帰って来たというに、それをいきなり犯罪者扱いとか。
そんな馬鹿な話があってたまるか!
「何の証拠も無く逮捕する気なんですか? そんな事が警察の職務として許されるんですか?」
警察はその言葉に明らかに怯みました。
ですが、あくまで任意同行だと言って引きませんでした。
「あまり拒むようなら、公務執行妨害で逮捕しても良いんだぞ!」
そう言って私の腕を強く掴んで後ろに捻った時でした。
警察の後ろにBさんが現れたんです。
「先ほどからうちにもやり取りが聞こえてたから言うけど、昨日隣の部屋からは何の物音もしませんでしたよ? 一体誰から連絡があったんです?」
その時点では私は、Bさんが私に対し嫌がらせをしていると思っていましたから、これはどういう事なんだろうと混乱しました。
警察が渋々帰った後でBさんは言いました。
「Aさんが先日あなたの家の郵便物を漁ってたのを見たのよ。あの人に郵便物盗まれないようにちゃんとした方が良いよ」
そう忠告したBさんでしたが、私はそれでもまだAさんの方が普通の人だと思っていました。
あくまで見た目の話なのですが、Aさんは普通の近所のおばさん、Bさんはどう見ても場末のスナックのママと言う感じだったんです。
それからも定期的に警察は私の部屋にやってきました。
ですが私は居留守を使い続けたんです。
どうにも誰かに監視されているらしいと私は感じていました。
というのも、警察が私の部屋に来るのは決まって私が夜勤明けで仕事から帰って一時間後くらいの事だったんです。
そのアパートに住み始めて一年半くらいが過ぎた頃だったでしょうか。
悪夢のような出来事が始まったのは。
徹夜明けで寝ていると、突然AさんとBさんが大声で喧嘩をし始めたのです。
私の部屋を挟んで反対の部屋には小さな娘さんが二人いる夫妻(以下Cさん夫妻)が住んでいました。
このCさん夫妻の娘さんが目の前にいるというのに、大の大人が大声で喧嘩を始めるのです。
すると誰が通報したのか警察がやってきました。
警察は私の部屋のチャイムを何度も鳴らしてきました。
ドアを開けると、中を見せろと言って問答無用で部屋に押し入ろうとして来たんです。
「理由を告げず勝手に部屋に入るのは、さすがに警察と言えども不法侵入になるんじゃないですか?」
私は警察にそう言いました。
するとその警察は言ってきました。
協力してもらえないなら公務執行妨害でお前を連行するだけだと。
それからというもの、こういった事が頻繁に起こるようになりました。
毎週のように時には週に複数回このやりとりが発生するんです。
こんなストレスの溜まる出来事が毎週のようにあるんです。
私を犯人扱いする警察とAさんたちが大騒ぎをするという嫌がらせは、この後、徐々に私の精神をむしばんでいったのです。
ある日の事でした。
夜勤中に突然目の前でチカチカと星が煌めいたかと思うと、耐え難い頭痛に襲われたのです。
まるで頭に剣山を突き刺されているような。
私はその場でのたうち回りました。
その時はすぐに頭痛は収まり、ちょっとびっくりした程度で済みました。
ですがそれを境にのたうち回るほどの酷い頭痛が度々起こるようになりました。
頭痛の病名が何だったのかはわかりません。
ただ頭痛の発生と共に私の記憶力が欠落していくのを感じていました。
そのせいで仕事でミスが増える。
時には頭痛の前の記憶が消えている事すらありました。
そんな頭痛に耐えながら夜勤をし、家に帰るとまたAさんたちが大騒ぎ、そして警察が来て犯人扱いされる。
警察は何故か私の家のチャイムを何度も何度も鳴らすんです。
「いるのはわかっているんだから大人しく出て来い!」
そしてついにその日が来ました。
乗換駅で頭痛が襲ってきて動けなくなってしまったんです。
鬱病なんじゃないかと言われ、精神科に行く事になりました。
そこでもらった薬で確かに頭痛の頻度は抑えられました。
ですが代わりにまともに歩けなくなってしまいました。
徐々になんですが、地面を踏みしめる感覚が消えていったんです。
私は空を飛んでいるんだ! だから横断歩道なんて関係ない!
私に会いに来た上司は私がふらふらと赤信号の中トラックに吸い込まれそうになるのを見たんだそうです。
トラックは急ブレーキをかけて間一髪止まったそうですが、私は構わずふらふらと道路を横切ったのだそうです。
なんであんな危ない真似するんだと怒る上司に私は言ったそうです。
トラックのもっと上を歩いているから平気なんですと。
そのまま精神科に連れていかれました。
私は実はずっと低血圧で悩んでいたのですが、その時点で血圧の上は二百を超えていました。
翌日から療養のため実家に帰る事になりました。
実家に帰ってから、症状は少しづつ落ち着いていきました。
根本原因は明らかなわけで、引っ越しをした方が良いという事になりました。
久々にアパートに戻った私にBさんとCさん夫妻は言ってきたのです。
暫く見ない間に大変な事になっていたと。
何人もの警察がやって来て私の部屋を管理人に言って開けてもらい、強制捜査したらしいのです。
マスコミもニ、三人来ていたのだとか。
BさんもCさん夫妻も私が暫く帰っていない事を警察に話したそうですが、近隣住民から頻繁に訴えがあり、こうして令状も発行してもらってあると言われたのだそうです。
警察はBさんとC夫妻さんからも私がどんな人かというのを聞き込んでいったのだそうです。
少なくとも隣に住んでいて騒音なんかは一切ない。
むしろうるさいのはAさんの家に停まっているマフラーを改造した車の方だと証言したんだそうです。
ところがどういうわけかその強制捜査の日、いつもうるさい改造車は無く、そんな車がどこにあるんだと警察は逆にBさんとCさん夫妻を疑うような口調で言ったのだとか。
BさんとCさん夫妻は、警察に私に何の嫌疑がかけられているのかと尋ねたそうです。
ここまでするのだから相当な重犯罪なのですよねと。
すると警察は、悪戯電話を何度も警察にかけ公務を妨害した容疑だと答えたのだとか。
実は私はそのアパートに引っ越した時にNTTを契約しなおしていないんです。
なので悪戯電話なんてかけられないはずなんです。
それをBさんとCさん夫妻に言うと、Cさん夫妻がそう言えばAさんが定期的にあなたの家の郵便物を漁っているのを見たと言い出しました。
Bさんも以前から同様の事を言っていましたし、郵便物が私の家の前に散乱しているのを私も見ています。
二人の見解は、Aさんが私の名前を偽って警察に何度も電話をしたんじゃないかというものでした。
Bさんは、Aさんから、自分はD教の支部長だから、D教徒がお前の勤め先に行ってめちゃくちゃにしてやるから覚悟しろと脅されたのだそうです。
更には自分は障害者手帳を持っているから裁判所に訴えても無駄だとも言っていたのだとか。
それに対しCさんは、自分もD教だからAさんが本当に支部長なのかどうか問い合わせて、もし本当であれば問題視してもらうと言っていました。
Cさんは、D教徒じゃなくE党の人なんじゃないかと言っていました。
ここのところD教のF党とE党は仲が悪いからと。
AさんがD教だろうがE党だろうが、もはやはそんな事は些末な事になっていました。
何故なら私はその一件でPTSDになって、人の大声を聞くと胸が苦しくなってしまうようになったから。
そのせいで、もはやまともな社会生活を送るのが困難になっていたのでした。
結局、会社も辞める事になりました。
アパートを去り住民票を移す事になった際に、役場で私はとある事に気が付いたのです。
『あのアパートにいる間、選挙の投票案内が一度も来てなかった』という事に。
そういえば電気の検針票もいつからか来たり来なかったりしていました。
たびたび宅配の不在票が無くなっている事も。
そんな物、いったい何に使ったんでしょう?
”Aさんが頻繁にあなたの郵便物を漁ってたよ”
本当に怖いのは知らない人からの強烈な悪意なんだと思うんです
そしてそういう人の訴えで動いてしまう警察です