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マリアという女

上空には1人の女性が立っていた。

そして、俺はその姿に思わず、声を上げてしまった。


「…サタン?」


見た目だけならサタンにそっくりの女性だった。

黒い腰まで届くかという長い髪。そして、透き通るような白い肌。

ただ、違う点はその声と身につけている服だった。

こちらの小学校の方に移動する際に、突然いなくなったという状態を避けるためにお馴染みとなった魔道具でもう1つの体の方を残した状態で来ていた。

そのため、普段着ている制服姿でこちらに来ているのだ。

対して、現在上空に浮かんでいる女性はルシフェルが着ているかのような白い衣のような服を着ていた。


「お姉さま、じゃないですよね…?」


どうやら、ルルも同じ思いだったらしい。

いや、正確に言えばルシフェルを除く全員がその姿から一度はサタンを連想していたと思う。

そう、ルシフェルを除いて…。


「…マリア!?なぜ、ここに?」


ルシフェルは立ち上がると、俺達を守るかのように前に出た。

マリア、とルシフェルは今言っていた気がする。

どこかでその名前を聞いた気がする。それも、かなり最近の話の記憶だ。


「久しぶりね、ルシフェル。元気そうで何よりね。」


マリアとルシフェルに呼ばれた女性が俺達を見下ろすようにして言う。

その顔は柔和な笑みを含んだ穏やかな顔だった。しかし、それと裏腹に目には一切の光が失われたような冷たい目だった。

そして、そのせいか笑みを浮かべている顔もこれまで見てきたどの人間の顔よりも邪悪に満ちていたように感じた。


「まさか、あなたがわざわざ出向いてくるのは予想外でしたね。」


ルシフェルがマリアを睨みつけながら言う。

マリアは微笑を絶やさずにルシフェルに言う。


「あら、そう?でも、“神の頭脳”と“神の右腕”が同じ場所に集結してくれたんですもの。わざわざ見に行く価値はあるんじゃない?」


そう言うと、マリアの姿が突然消えた。

そして、気づいた時にはルルとアリスの2人の前に立っていた。

正直、その場にいる全員が虚を突かれた状態だった。速い、というかまるで瞬間移動をしたかのような感じだ。

そして、俺はこの移動方法を多用する奴を身内で知っている。

そう、サタンがよく使うモノと同じだった。


「私の計画としては、あなた達2人が同じ場所にいるなんてシチュエーションは想定していなかったんだけどね。」


何が面白いのか、楽しそうにマリアは2人の前に立つと言う。

そして、マリアにいち早く反応したルシフェルがルルとアリスの2人を抱きかかえるようにしてマリアから距離を取る。


「あら酷い。食ったりなんてしないわよ。そんなに警戒されちゃうと流石の私でも傷ついちゃうわ…。」


残念そうに言うマリア。しかし、その口調に残念といった感情は一切見られていなかった。

むしろ、俺達の反応を楽しんでいるかのようだった。

俺とルミナ、リヤド、クレアの4人はそれぞれの得物を取り出すと、マリアを囲むようにして武器を構える。

しかし、マリアは囲まれているというのに全く動じている気配もない。

むしろ、飄々とその場に立っていた。


「アリスちゃん、私の後ろに。」


ルシフェルはルルとアリスを地面に降ろすと、アリスに言う。

アリスはその言葉に従うようにしてルシフェルの背中にしがみつくようにして隠れる。

ルルの方は俺達と同じく、杖を構えてマリアを囲む。


「あらあら、随分と嫌われているわね。一応、初対面のはずだけど?」


マリアがニヤニヤとしながら言う。

先程から感じていることだが、どうにもこのマリアと呼ばれている女の笑顔が受け付けられない。

サタンに並ぶくらい、いや下手するとサタンよりも美人な女性に見えるのだがどうにも嫌悪感が先に来てしまう。

何だろうか、俺の中にある生き物としての何かがこの女は無理だと言っているかのようだった。

俺はいつでも攻撃されてもいい様に握っている大剣に力を込める。

しかし、手足がブルブルと震えているのを感じた。

恐らく、武者震いとかそんな格好のいいモノじゃない。恐怖から来る震えだろう。

俺は隣で同じく刀を構えているルミナを見る。

ルミナはチラリと俺へと視線を向けた。

よく見ると、ルミナも手足が震えていた。そして、同じように隣に立って武器を構えているクレアも恐怖からか唇が震えていた。

あのクレアがあんな表情を見せるなんて、珍しい。

それほどの強敵なのだと、俺は確信した。


「私は、あなたとは初対面ではありませんからね。」


ルシフェルがアリスを隠すようにしてマリアに言う。


「確かにそうだったわね。最後に会ったのはあなたが堕天する前だったかしら?もうずいぶんと前の話ね。」


懐かしそうに言うマリア。

そして、その瞬間だった。突如、姿が消えたと思うとマリアの前に現れた。

そして、右手でマリアの腹に手を触れた。

マリアの右手が光ると、白い光線のようなモノがルシフェルに直撃する。

土煙が上がり、ルシフェルとアリスの無事が確認出来ない状況だ。


「いきなり、攻撃ですか?手荒い歓迎ですね。」


ルシフェルの声が聞こえる。

姿が見えると、ルシフェルが攻撃を受けたであろう腹の部分に魔法陣が浮かんでいた。

どうやら、ギリギリの所で防御魔術を展開して防いだようだ。

そして、そのままその魔法陣が光ると青白い光線がマリアを襲う。

マリアの一瞬の隙を取った攻撃に見えた。恐らく、直撃は免れないだろう。

その時だった。直撃したはずの光線がマリアの体を貫通したのだ。

いや、正確に言えばすり抜けたといった表現の方が正しいだろう。


「…嘘、あれって!?」


ルミナが信じられない、といった表情をしていた。

恐らく、ルシフェル以外の全員が同じ気持ちだろう。紛れもなく、それはサタンでよく見てきた光景だからだ。

ルシフェルはこうなることを予知していたのか、アリスを連れながらマリアと距離を取る。

そして、宙へと飛び上がると背後に無数の魔法陣を浮かび上がらせる。


「“宝物庫(テゾーロ)(テンペスタ)”!」


俺達は攻撃に巻き込まれないと、一斉にルシフェルの飛んでいる一にまで戻ろうとする。

しかし、マリアはその攻撃を避けることもせずに平然とした顔で立っていた。


「お姉さまと同じ魔術!?」


ルルは轟音が鳴り響き、激しく揺れる地面を見ながら言った。


「どうしますか?流石にサタン様と同じ魔術となれば、我々だけではどうしようも出来ないですが…。」


リヤドがルルに尋ねる。

轟音が消え、校庭にクレーターのような巨大な穴が開いていた。

しかし、その中を1人の女性が悠然と歩いていた。


「…あれ食らって無傷なのはバグだろ。」


俺は思わずつぶやいてしまった。

無敵と思われていたゼラキエルですら、呆気なく倒したルシフェルの魔術。

それを正面から食らって、涼しい顔をしてこちらに向かって歩いてくる。


「逃げますよ。流石に、あれを相手に戦うのは分が悪いです。」


ルシフェルがアリスを背中に隠しながら地上へと降りてくると、俺達に言う。

今度は全員が頷く。流石に他の人がどうとか言っていられる場合じゃない。

従兄妹達の2人の姿が見当たらないが、恐らくルシフェルが何かしらの魔術を行使して隠したのだろう。

俺達が一斉にマリアを背にして逃げようと、走り出した。


「逃がすと思ってるのかしら?」


マリアは人差し指を俺達に向けてきた。指の先から眩い光が現れた。

その場にいる全員が死を覚悟した。その時だった…。


「随分と暴れているようじゃないか?」


突然、聞き慣れた声が背中越しに聞こえた。

空間がガラスのように割れると、マリアの背後からサタンが大剣を振りかぶってマリアの首元に向かって振り下ろしていた。


「あら?流石は、現代の人類最強と言われるだけはあるわね。まさか、こんなに早く抜け出してくるなんて。」


マリアは全く動じることなくサタンを一瞥する。

サタンが気にする素振りも見せずに、大剣を振り下ろす。

しかし、想定された結果だっただろう。サタンの振り下ろした大剣は無情にもマリアの体をすり抜けた。

地面にサタンの振り下ろした大剣が突き刺さる。

その場所にはマリアの姿はなかった。

サタンは地面に突き刺さった大剣を引っこ抜くと、上空を見上げた。


「私と同じ魔術か。流石に、同じ使い手は初めて見たな。」


サタンが大剣を肩に担ぐと、上空にいるマリアに向かって言う。


「フフフ。どうかしら?自分の攻撃がすかされる気分は?」


挑発するかのようにマリアが言う。

サタンはニヤリと笑うと、姿を消した。

そして、マリアの背後に回ると、大剣を大きく振りかぶった。


「安心しろ。貴様にも同じ気分を味あわせてやる。」


そう言うと、マリアに向かって振り下ろす。

マリアの方は逃げることもせずに、サタンの攻撃を正面から受ける。

大剣がスッとマリアの体を通過する。サタンが大きく振りかぶったことから勢いのあまり少し、体勢を崩す。


「サタン!!!」


俺は思わず声を上げる。

態勢を崩して、その隙をあのマリアが見逃すわけがない。

マリアが俺達に向けたように人差し指をサタンに向ける。

そして、マリアの指から放たれた細い光線がサタンを襲う。

光線は地面に直撃すると、爆発音が鳴り響く。


「どうだ?自分の攻撃が当たらない気分は?」


サタンが笑みを浮かべながらマリアに言うと、大剣をマリアに向かって振るう。

先程と同様にマリアの体をすり抜けると、マリアはサタンから少しばかり距離を取る。


「あなたとはまだ戦う時期じゃないのよね…。」


マリアはそう言うと、自身の髪の毛をクルクルと指で巻いた。

本当に、サタンにそっくりの女だと思う。


「私は、すぐにでも戦って貴様の首をウィザード家に飾ってもいいんだぞ?」


何ともおっかないことを言うサタン。

サタンの言葉にマリアはニヤリと笑う。

やはり、どこか嫌悪感を抱く笑みだ。ほとんど、会話を交わしていないのにこのマリアと言う女性をどうもいいイメージが湧かない。


「あらあら、怖いわね。フフフ。でもそうね、流石にあなたとルシフェルを相手取ってさらに“神の頭脳”と“神の右腕”を回収するのは骨が折れそうね。」


そう言うと、マリアの背後の空間が裂けると黒い渦が現れた。


「また、会いましょう。次、会う時はしっかりと殺してあげるから。それと…。」


そう言うと、マリアは俺の方に視線を向けてきた。

そして、ニコリと俺に笑みを浮かべてきた。


「あなたにもね。闇属性の後継者さん。」


そう言うと、空間の中に入っていく。

サタンが、待てと声を上げてマリアに対して斬りかかったが大剣を振り下ろした時にはすでにマリアの姿はそこにはなかった。

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