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ダンスパーティー

その日の夜、俺達はウィザード家内の広いパーティー会場にいた。

周りを見渡すと、以前のパーティで見知った顔が多かった。

それに加えて、ハクと言ったような新しく見る顔も数人混ざっていた。


「そう言えば、結局あの後はどうしたんですか?」


サタンとルルとルミナ、そして新しく加わったクレアと一緒に立ちながら食事をしている俺にルルが尋ねる。

あの後、と言うのは恐らくは孤児院から帰った後の話だろうか。


「うん?ルミナちゃんと会って、そのまま帰ったかな。」


俺は、いつものメンバーといるからか大人数のパーティなのにいつもよりかはコミュ障を発揮していないルミナを見て言った。


「ちょっ!剣様!」


ルミナが驚いたような顔をする。

俺は何か不味いこと言っただろうか?


「いつの間にか、いたんですね…。いえ、大丈夫ですよ。一応、ルミナさんは付き人ですからね。」


ルミナに対して少しだけ顔を引きつらせ気味にルルが言う。

ルミナが俺を睨む。

どうして、言うんだという表情である。

別に一緒に帰っただけだから、そんなに内緒にすることもないだろと言いたい。

そして、俺はふとその時の出来事も思い出した。


「そう言えば、面白い子とも出会ったな。」


アリスのことを脳裏に浮かべながら、俺はルルに言った。

サタンがモグモグと口に食事を頬張りながら口を挟む。


「また、知らない人間と出会ったのか。相変わらずだな。」


「別に会いたくて会ってるわけじゃない。勝手に俺の望まない方向から来ているだけだよ。まあ、でも可愛い子ではあったな。」


「そ、そうなんですね。ちなみにどんな人だったんですか?」


先程より顔を引きつらせ気味にルルが尋ねる。笑顔を崩さないようにしているからか、半笑いのような状態になっている。


「金髪で髪長い女の子だったな。シスターをしてるみたいなこと言ってた気がする。年はクレアちゃんくらいなのかな?」


俺はここぞとばかりに大量の食事を胃袋に詰め込んでいるクレアを見て言った。

クレアは俺の視線に気づくと、フォークの手を止めた。


「何?また、女の子をナンパしたの?お姉ちゃん達に刺されないように気を付けてよ。」


咀嚼しながら俺に言う。


「ちゃんと飲み込んでから話してください!あと、変なことを言わないでください!私はただ付き人なだけです!」


姉らしくクレアに注意すると、なぜか俺を睨むルミナ。

俺も誤解を解くためにクレアに言う。


「女の子をナンパ出来るようなスキルがあったら彼女いない歴年齢みたいな悲しきモンスターは生まれません。」


「じゃあ、ロリコンになるの?小さい女の子が好きみたいなことはサタン様達から聞いてるから。」


「おい!変な間違った情報を与えるんじゃねえよ!俺への印象が落ちるだろうが!」


「人間、事実を言われると急に怒り出すというデータがあるらしいぞ。図星なのか?」


謂れのない誤解を小学生に与えているサタンに俺はツッコむ。

サタンは、気にも留めない様子で俺に言い返してくる。

俺は別に年下の女の子に対して優しいだけでロリコンでは断じてない。この誤解をしている傍若無人な女をどうしてやろうかと思った。


「しかし、アリスさんでしたっけ?どういう意味だったんでしょうね。声が聞こえて来たって。」


ルミナが昼の会話を思い出したのか、ふと言った。

確かに、声が聞こえたと言ってた。神託的な何かだろうか。

まあ、天使がいるんだからそういうモノがあってもおかしくないかもしれない。

少し前までの俺なら考えもしない思考だなと思った。慣れとは恐ろしい…。


「さあ。熱心なキリスト教徒みたいだし、そういう声も聞こえるんじゃない?それこそ、ルミナちゃんは聞こえないの?」


俺は宗派の違いはあれど、そうとう信心深いルミナに言った。

ルミナは少し、首を傾げた。


「さあ、今まで聞いたことはありませんね。」


「そもそもの祈りが足りてない可能性があるかもしれませんね。」


ルルが少しだけからかうようにルミナに言う。


「一応、毎日祈りは欠かさずにしているんですけどね。日本に行くようになってからは行けなくなりましたけど、週末のミサも欠かさず行っていますし。」


ルルの言葉にルミナが真面目に返す。

まあ、正直言って神だの天使だのから声が聞こえたから何か変わるとは思えないだろと俺は思った。


「だが、ローマから来たと言うことはバチカンの教会の人間か。正直、問題事が起こそうな匂いがするな。」


サタンも口を挟む。

俺は言葉の意味があまり理解出来ずにサタンに対してどういう意味だ、と言った表情をする。


「前に言った、利権だの何だのの問題ですよ。正直、あまり触らない方がいいような案件な気がしますね。」


ルルがサタンの言葉を補足するように俺は言う。

そう言えば、仲が悪いとかそんな話を以前言ってたなと思い出した。


「しかし、面倒ごとに巻き込まれたくないと言いながら自分からまきこまれそうなイベントに出会うとか。お前、何かに呪われているんじゃないのか?」


サタンがニヤニヤしながら言った。

俺だって、そんなこと知らない。日本に帰ったら、今度近所の神社でお祓いでもしてもらうか。

そんな会話をしていると、パーティに参加している人達が突然動き出した。

どうやら、ダンスが始まる時間のようだ。

そう言えば、今日は出来なかったが昨日は無駄に練習させられていた。

俺はサタンを見た。サタンは、行くぞとジェスチャーをする。

俺はため息をつくと、サタンの右手に自身の手を重ねた。


「こういう感じだったかな?」


俺は教えられたことを思い出すように所作を行う。

サタンはぎこちない俺の所作に笑みを浮かべる。


「死ぬほど、似合ってないな。ひもで操った方がまだ上手くやれそうだ。」


「うるせえよ。そう言うなら、ぜひそうしてくれ。」


俺は言い返すと、サタンと共に会場の中央部分へと歩いていく。

そう言えば、サタンのドレスは以前のパーティと同じ真っ赤なドレスだった。

普段の服も赤色を基調としたモノが多いので、こういった色が好きなのかもしれない。


「あまり、胸ばかり見るなよ。」


サタンが踊りながらニヤニヤしながら言う。

俺は、自然と向いていたかもしれない視線をバッと別の方向に向ける。


「み、見てねえよ!」


俺は小声でサタンに言い返す。

サタンは笑みを浮かべながら、鼻で笑う。

しかし、一緒に踊っていると思う。ルルもそうだったが、コイツもこういったことが上手いんだなと。

普段は、言動がじゃじゃ馬すぎて気づかないがやはり良家のお嬢様なんだな、と。

正直、中々ステップを合わせられなかったルミナと違って勝手にこちらのぎこちない動きに合わせてくれるから踊りやすい。


「しかし、本当にワチャワチャしているな。」


俺の動きに合わせているサタンが踊りながら言う。

今までの人生でこういう経験をしたことがないんだから、当然だろと言いたい。


「余計なお世話だよ。お前やルルちゃんみたいに慣れていないからしょうがないだろ。」


踊りながら、小声で互いに声を交わす。


「いや、いいと思うぞ。これくらいぎこちないと逆に踊っていて新鮮な気持ちだ。」


「少なくとも、お前が少しも俺のことを褒めていないのは分かった。」


俺はそう言うと、再び踊りに集中する。

普段聞かないようなクラシックの音楽が耳に聞こえる。何と言うか、こういう音楽に合わせて踊るのは新鮮だなと言う感じだ。

ただ、やっぱり盆踊りくらいの勢いで好き勝手に踊れるようなモノの方が俺には向いているなとも思う。

一通り、踊り終わったのか俺達は会場の中央部分から離れた。

サタンは、中々よかったぞと俺に耳打ちをする。そして、そのままの流れで自身の親族達が集まっている場所へと向かって行った。

ルルもそこにいた。

リヤドはどこにいるのか、と探したがリヤドも別の集団の中にいたのでそこに行くのは止そうと思った。

そして、ルミナの方を見るとサタン達が各々の場所に行ってしまって1人でポツンとしている姿が目に入った。

サタンと踊っていた時に一瞬目に入った時はクレアと他数人と一緒にいたはずだったが…。

まあ、あの子にしてはよく持った方かと思う。

俺は、ルミナに近づいた。


「ルミナちゃんは誰かと踊ったりしないの?」


俺が後ろから声をかける。

ルミナは突然声をかけられ、ビクンとこちらを振り返る。


「なんだ、剣様ですか。驚かさないでください。」


ルミナは部屋の隅に近い場所で立っていた。


「相変わらずだな。前もそんな感じだったな。」


「うるさいですよ…。前と違って、まだ部屋から出てないだけ成長しています。」


ルミナは俺に言い返す。

それは果たして、成長と言えるのだろうか。


「クレアちゃん達のとこに行けばいいのに。あの子達、ランスフォード家でいた子達でしょ?」


俺はルミナに尋ねる。

ルミナは小さく頷く。


「あの事件があってから、まだ時間もあまり経っていませんから。どう思われているとか怖くて、自分から輪に入れないだけですよ。」


相変わらずだな、と俺は思った。

クレアも変ないたずら心なんで出さずに教えてあげればいいのに。

俺はそんなルミナの姿を見て、少しだけ呆れる。

そして、片膝をついてルミナの右手を掴むと見上げながら言った。


「踊る相手なんていないんだろ?せっかく練習したんだ。一緒に踊らない?」


右手を掴まれたルミナはどんな返しをしたらいいのか迷っている感じだった。


「でも、私は剣様の付き人ですから…。」


ルミナは戸惑いながら俺に言う。


「別に構わないだろ。それに、俺の方から誘ってるんだから。誰かに何かを言われる筋合いもないだろ。」


誰よりも負けず嫌いで気が強いのに、それを表に出せないでいる恥ずかしがり屋の少女に向かって言う。


「でも、練習の時は全然合わなかったんですよ。多分、私はサタン様みたいに上手じゃないですし…。」


ルミナは、俯きながら小さな声で言う。


「別に大丈夫だよ。男性側がエスコートするんだろ?俺がしてあげるからさ。」


その言葉を聞くと、ルミナは少しだけ笑みを浮かべた。


「…本当に、似合っていませんね。」


「余計なお世話だよ。」


俺はルミナに苦笑いを浮かべながら言うと、ルミナと共に踊りだした。

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