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黒き刀と真の勝利

黒く輝く大剣を俺はまじまじと眺める。

正直、色はもちろんフォルムもカッコよくて、厨二心をくすぐる。


「剣殿、大丈夫ですか?」


ルミナが顔を覗き込んで俺に尋ねる。

俺は、ハッと我に返る。


「あー、大丈夫。ちょっと、この大剣のカッコよさに見とれてた。」


「この非常事態に…。いや、まあ助かったのは事実ですが…。」


ルミナはそう言うと、リカルドの方を見る。

俺はブンブンと大剣を振るう。


「いつまで見惚れているんですか!?戦いの最中ですよ!」


ルミナが呆れるように俺に言う。

何と言うか、前の大剣よりも握りやすさも段違いにいい。正直、前の大剣から姿が変わってこれだから俺としてはかなりありがたい。


「とりあえず、何でかは分からないけどあいつの姿は見えるようになったな。」


俺は我に返り、ルミナの隣に並びリカルドを見る。

どういうわけか、先程斬ったリカルドの体から血がしたたり落ちていた。

あれだけ、爆発をさせたり細かい斬撃をしていた時はビクともしなかったのにだ。


「おのれ、ザドキエルめ。これを分かっていたのか…。」


リカルドが苦しそうに斬られた部分を手で抑えながら言う。

何を分かっていたのかとか全く理解出来ていないが、正直これは好機だろう。


「どうしてか、今の剣殿の攻撃が効いていますね。」


ルミナも少しだけ勝機が見えて来たのか、先程より明るい声で俺に言う。


「まだ行けるか?」


俺はルミナに問いかける。

ルミナはこくりと頷く。


「当り前です。ここまで来たんです。何とか持たせますよ。」


体のあちこちから血を流しているルミナが言う。

机上に振る舞っているとは言え、ほとんど限界に近いだろう。

俺は、再び大剣を構える。


「舐めるなよ!貴様ごときにこの俺の首を取れると思うなよ!」


リカルドはそう叫ぶと、一気に俺達との距離を詰めてくる。

だが、怒りに任せた単調な動きである。正直、先程のキレのある動きと違って簡単に読める。


「剣殿、お願いします!」


ルミナの声が俺の耳に届く。俺は、ルミナの目の前に黒い空間を作り出す。

何と言うか、この大剣を持ち始めてから体の動きが非常にいい感じだ。体が軽い、と言う感じだろうか。

ルミナは目の前に現れた空間に手を突っ込む。そして、数本のクナイを取り出す。

そして、それをリカルドが立っている地面の周囲に突き立てる。

すると、リカルドの足元から五芒星と言うのだろうか。模様が現れた。


()ッ!!!」


ルミナが叫ぶと、リカルドの足元の模様が光り出した。そして、地面から白い光の柱が現れた。


「バーゲンセールかってくらい、色々なモノ持ってるんだな。」


俺はルミナに言う。

ルミナは、それを聞くと土煙を見ながら言う。


「それが私の戦い方ですから。まあ、本当は刀のみで戦えるのがベストですけど。」


刀を構え直す。

土煙の中から黒いススが白い毛に付着したリカルドが現れる。

顔は怒りに震えて、鋭い歯がワナワナと震えていた。


「…舐めおって。1人では何も出来ない、小娘が。随分と調子に乗っているな!!!」


リカルドは天に向かって大声で叫ぶ。

風圧でこちらが吹き飛ばされそうな勢いだ。


「えぇ、そうです。私は1人では何も出来ない。恐らく、これからも。だけど、それでいい。1人で戦えないなら、私は私の信じる人達と戦う。例え、魔術師と認められなくても。それでも、それが私のランスフォード家の次期当主としての形です!」


「フハハハハ!馬鹿にしおって!魔術師として認められない者を当主にするわけがないだろ!貴様はここで死ぬのだ!」


リカルドはそう言うと、ルミナに向かって飛びかかった。

ルミナは華麗にそれを避ける。俺は、リカルドの単調な動きを見て懐に飛び込む。

リカルドは俺の存在に気づくと、大剣を持っていない左手で振り払おうとする。

俺は、そのまま大剣を構えたまま突っ込む。


「小僧!貴様の体ではワシの一撃は耐えることは出来ぬ!!!」


リカルドの全力で振るった左手が俺を襲う。俺は、そのまま鋭い爪に対して大剣の刀身を合わせる。


「ぐわぁぁぁぁ!!!」


リカルドの左手から赤い血が飛び散る。そして、立派に伸びていた鋭い爪が粉々に砕かれる。

右手に持っていたリカルドの大剣が俺の横っ腹を襲う。

俺は、それに対して魔力で体を覆う。


「おのれ!おのれ!何故だ!」


リカルドはさらに血しぶきを上げて、苦しそうな声を上げる。


「はああああ!!!」


ルミナが背後からリカルドを刀で斬ろうとする。


「舐めるな!貴様程度の攻撃、見切れぬワシではない!」


リカルドはそう叫ぶと、間一髪で致命傷を避ける。そして、俺達から距離を取る。


「効いているんだよな?」


俺は自分に言い聞かせるように呟く。

あれほど、かすり傷しか負わせれなかったリカルドから大量の血が流れている。

白い毛皮は赤く染まり、先程までの剛健さは息を潜めていた。


「その大剣の影響でしょうか?剣殿の魔力操作もスムーズな気がします。」


ルミナが俺の大剣を見ながら言う。


「スムーズと言うか、今の所体に纏えているのがカウンター出来る魔力しかないんだよな。相手の攻撃を無効化出来る魔術って言うの?それを使える魔力が全部この大剣に座れちゃってるみたいな感覚なんだよ。」


俺は、不思議そうにルミナに言う。

実際、今、自分の体に無効化する魔術の魔力が宿っている感覚はない。


「刻み込まれた魔術の種類によっては、その魔術にのみ顕現する武器もあるみたいですからね。サタン様もそうですし。それと同じようなモノなんですかね?」


ルミナも不思議そうに言う。

大剣の方に全部無効化する魔術が刻み込まれたと言うなら、面倒な入れ替わる手間も減るので俺としてはありがたい。

細かい操作みたいなのは、元々大雑把な性格だから苦手なのだ。


「退魔の剣…!古の書物に書かれていて知ってはいたが、まさかこれほどの威力とは…!」


リカルドが苦しそうに叫ぶ。


「リカルド!考え直してもらえませんか?今なら、まだ間に合います!」


ルミナが前に出て、リカルドに言う。

恐らく、まだどこかで考えが変わってくれることを期待しているのかもしれない。

リカルドは呆れたような顔をして、笑みを浮かべた。


「言ったはずだ、弱き者は必要ないと。貴様のような魔術師にすらなれない出来損ないなど、ワシは認めぬ…。」


そう言うと、不意を突くようにルミナに襲い掛かる。

ルミナは、一瞬動きが遅れて刀を構える時間が足りなかった。

俺は、ほんの少しだけ早くルミナの前に体をねじ込む。そして、大剣を構える。体には魔力も纏わせ、カウンターの準備も万端だ。


「舐めるなよ、小僧!貴様ごときの魔術、食らったところで何の問題もないわ!!!」


リカルドは大声で言うと、大剣を思いっきり俺の大剣にぶつけてきた。

俺はそれを防ぐ。瞬間、リカルドの大剣が壊れる音がする。

俺は、そのまま押し切ろうとする。

しかし、リカルドはまだ爪が残っている右手で強引に俺を弾き飛ばす。

俺はルミナに抱きかかえられるようにして後方に吹き飛ばされる。


「コイツ、強引に押し込みやがったッ!!!」


俺は、地面に叩きつけられると素早く起き上がろうとする。

しかし、その隙を見逃すリカルドではない。一気に勝負を決めようと、ボロボロになった両手を広げて俺達に襲い掛かる。


「この人は、殺させないッ!」


ルミナの叫び声が聞こえると、俺の目の前にルミナがリカルドの攻撃を防ぎ、立ちふさがった。


「私は、あなたのことが嫌いです。いえ、あなた達、ランスフォード家の大人達が大嫌いです!でも、あなたは私の両親の部下でもある。私は、その人達を殺すことなんて出来ない!」


ルミナが目に涙を浮かべながらリカルドに言う。


「だから、甘いのだ!貴様の母親の若かりし頃なら、今のワシを一瞬で斬り捨てているであろうな!」


そして、リカルドは両手に力をさらに込める。耐えているルミナの足元がズズッと下がっていく。


俺はそんなルミナの姿を見て、思った。

甘いんだろうな、と。多分、リカルドの言うことは正しいのだろう。

ルミナにとってこの男は裏切者以外の何物でもない。せっかくの千載一遇のチャンスなのだ。ここで殺さなければ、逆に自分がやられるかもしれないのだ。

俺は、そんなことを思いながら黒い空間を出した。

そして、空間の中に手を突っ込んだ。中からは細い赤い糸を取り出した。

散々、ルミナが使っているのを見た魔道具だ。

全部斬り捨てやる、だったか。あの時に頭に血が上ってたとは言え、またロクでもないことを言ったモノだなと思う。

改めて聞いたら羞恥心で震えあがりそうな痛いセリフだと思う。


そんなことを思っていると、耐え切れなくなったルミナが俺の後方に吹き飛ばされる。

そのままの勢いでリカルドが俺を仕留めようとする。


「言ったことは守らないとな。」


俺は小さな声で言うと、立ち上がる。

そして、赤い糸をリカルドに向かって放り投げる。


「しまった!動きがッ!」


リカルドは動きを封じられ、必死に糸から抜け出そうとする。

俺は大剣を強く握り直す。


「…剣殿?」


地面に叩きつけられた衝撃で起き上がれないルミナが俺に声をかける。

俺は黙って、リカルドに近づく。


「凄いよな。あれだけボロボロにされて、酷いこと言われてまだ助けようとか考えてるとか。」


俺はリカルドに対して言う。

本当に凄いと思う。俺なら、どうしているんだろう。

もし、今ここに過去に俺のことをイジメてきた奴らが縄で縛られて身動きが取れない状態で目の前にいたとしたら。

考えるだけ無駄なことだろうな、とすぐに思った。そんなこと起きることなんてないんだから。


「何が言いたい?」


リカルドが糸から抜け出すのを諦めたのか、俺を睨みながら言う。

案外、即興でやったにしては上手く行くものだなと思う。


「さあ、何が言いたかったんだろう…。あー、そうだ思い出した。1つだけ聞きたかったんだ。もし、ルミナちゃんが魔力を持って生まれていたらあんたはルミナちゃんを嫌わなかったのか?」


俺は見下ろしながら、リカルドに尋ねる。

リカルドは小馬鹿にしたようなあの笑みを浮かべて俺に答える。


「ワシが望むのは強い当主だ。弱い者に興味はない。弱い者にランスフォード家を任せるくらいならワシがその地位に付くだけの話だ。」


「だってさ。これが、ルミナちゃんが望んでいたモノの正体だぞ。俺には薄汚れた何かにしか見えないけどな。」


俺は、ルミナの方を振り向かずに言う。


「それでもいいんです。言ったでしょ?私に縋るモノが必要なんです。例え、それが茨だとしても…。」


ルミナの悲しげな声が聞こえる。

俺は頭上に大剣を振り上げた。


「…ルミナちゃん。だったら、俺が今ここでそれを断ち切ってやる。少なくとも、俺は味方でいてやる。」


俺はそう言うと、リカルドに対して大剣を振り下ろした。

新しい作品も投稿始めました。良ければそちらも読んでみてください。

投降ペースは基本的に変えるつもりはありませんが、題名とあらすじだけ少し変えてみました。

モチベにもなるのでブックマークや感想など頂けると嬉しいです。

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