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仲直り

次の日の朝、学校に行くためにサタンとルルと共に家から出るとルミナとリヤドがいた。

ルミナはルルに挨拶をしようと口を開きかけたが、ルルはプイっとルミナから顔を背けた。

数日前の喧嘩から、まだ仲直りが出来ていないようだ。

ルミナはシュンとした顔でうつむく。

サタンはよくあることだ、と昨日は言っていたがよくあると言うのはそれはそれでどうなんだと言いたい。

俺は、相変わらず表情が変わらないリヤドに小声で話しかけた。


「大丈夫なのかよ、あの2人。」


リヤドは一瞬、2人を見ると俺に言う。


「いつものことだ。サタン様も言っていただろ、珍しいことじゃない。少し時間が経てば、ルル様の方から仲直りをする。」


2日もこんな状態なんだが、とツッコミたいが言ったところでどうせ無駄だと諦めた。

ルルとルミナとリヤドの3人はバスに乗るために近所のバス停に向かって歩き始めた。

俺はその後ろ姿を見ながら、サタンと共に自転車に乗ろうとした。

ルミナの背中が小さく見えた気がして、俺はため息を小さくついた。-


-「起立!礼!寄り道はあまりせず帰るように。」


担任教師の声が教室に響くと、一斉に周りの同級生達の声が大きくなる。

ホームルームも終わり、帰る時間だ。

今日は部活もないので、すぐ帰ろうかなと考えていた。

サタンはと言うと、クラスの女子に囲まれて何やら話していた。

当初は馴染めるか心配していたが、杞憂に終わりすっかりクラスにも馴染んでいるようだ。

俺はカバンを担ぐと、教室の外に出る。

廊下を歩き、階段を降りた。そして、1階の自販機で飲み物を買うと下駄箱から靴を取り出した。


帰って、少し今日出された宿題を済ませたらここ数日は連日のようにしているルミナとの日課にでも行くかと考えていた。

一昨日も昨日も部活の練習があったので本来なら行かないはずだったが、何やかんやで行くことになり3日連続となった。


俺はそんなことを考えながら、駐輪場へ向かうために中等部の建物を通り過ぎた。

すると、ちょうどルルが下駄箱から出てきていた。


「ちょうど、剣さんも帰りだったんですね。お姉さまは?」


ルルが俺に気づくと、駆け寄ってきた。

いつもならいそうなルミナとリヤドの姿は見当たらない。


「サタンならクラスで話していて長くなりそうだったから先に教室から出てきた。ルルちゃんこそ、ルミナちゃんとリヤドは?」


「リヤドは家に帰る前に宿題だけ終わらせたいと言って図書館に行きましたよ。ルミナさんは、さあ知らないです。今日もさっさと帰ったみたいで。どこで何をしているのやら。」


ルミナのことを話すと、途端に不機嫌な顔でルルが言う。


「意外と仲悪かったりするの?」


俺は駐輪場まで一緒に歩きながらルルに尋ねる。


「さあ、どうでしょうね。正直言って、仲悪いとかそう言う付き合いでもないですからね。ただの腐れ縁です。リヤドにしてもそうですけど。」


ルルがやれやれと言った感じで言う。


「…、腐れ縁ね。」


俺はルルの言葉を反復する。


「そう、腐れ縁です。まあ、腐敗しすぎて異臭放ち始めてる気もしますが。」


ルルが辛辣な言葉で表現する。

何と言うか、この子はルミナに対しては妙に厳しいイメージがある。


「嫌いってわけではないんだよね。」


俺は自転車のロックの鍵穴に鍵を差し込むと、ルルに再び尋ねる。


「先程も言いましたけど、そういう関係じゃないんですよ。好きとか嫌いとか。まあ、たまにもの凄くこの人と考え方とか諸々で合わないんだなって思う時はありますけどね。今回みたいに。」


自転車を押しながら、ルルと並んで歩く。

サタンには校門を出てすぐに、ルルと歩いてるから帰るなら来いよとはメールを送っておいた。


「考え方で合わない、ね。」


「そう合わないんですよね。まあ、あの人は根が善人のそれですからね。私やお姉さまみたいな性悪とは違いますから。」


「自分で自分のこと、性悪とか言っちゃうんだ。」


俺は、意外な自己評価をするルルに言う。


「むしろ、ちゃんと自己評価していると言って欲しいですけどね。逆に私を性格のいい人間だと思っているならまだまだ観察が足りてないですね。」


ルルはそう言うと、ニヤリと笑う。

まあ、実際性格がいいかと言ったらそれはそれで違うなとは思った。

言い方を変えれば本当の意味で心を開いているのはサタンと言う存在、ただ1人なのだろう。

それは身内や俺やリヤド、それこそルミナに対してもだがどこかいまだに本心を隠しているような気がする。

それでも、ルミナのように人見知りが激しいコミュ障になるよりは全然いいとは思うが。


「まあ、でも早めに仲直りしてあげてよ。結構、落ち込んでいるみたいだし。」


「そう思うなら、私頼りのコミュニケーションの取り方を少しでも治すよう剣さんから言ってくださいよ。」


ルルはそう言うと、ため息をついた。

そして、というかと小さな声で呟いた。


「随分と、ルミナさんに肩入れするんですね?」


少し意地悪気に言う。


「流石に朝のルルちゃんに無視された時の顔が可愛そうだったからだよ。」


俺は、急に聞かれて言葉に詰まる。

ルルはここぞとばかりに畳みかけて聞いてくる。


「そう言えば、ここ最近はルミナさんと仲良さそうにしているじゃないですか。一体、どうされたんですか?」


ここ最近と言うのは3日連続で日課をしているとかそう言う意味だろうか。

ただ、正直多少は仲が良くなっただけで別段お互い顔を合わせれば言い合ったりする所は変わらない。


「別に、剣術の練習とか教えてもらってるだけだよ。何だ、妬いてるのか?」


俺達は交差点の信号機が赤く変わり、立ち止まった。


「さあ、どうでしょう?私は恋愛云々は人よりも鈍いですから。妬いてるかと言われたら別にそう言う感情でもない気がするんですよね。ただ、あのルミナさんがここまで気遣いもせずに接しているなんて珍しいなと思って。」


そう言うと、ルルはクスクスと笑う。


「そう言えば、ルミナちゃんもそんなこと言ってたな。恋愛話は全然盛り上がらないって。」


「またあの人は余計なことを。と言うか、あの人が無駄に脳内お花畑なだけですよ。昔から、無駄にそう言うのには興味津々でしたからね。」


ルルの方もルミナのイジメられていた昔話を言って、同じこと言われてたぞと言ってやりたかったがまた喧嘩の火種になりそうな気がしたのでやめておいた。


「…まあ、そうですね。そうやって、コソコソしてる所とかが嫌いなんですよね。」


本来ならば交差点を真っすぐ歩いていけば、バス停があるのになぜかルルは少し狭い路地へと入って行った。

俺は何で遠回りするような道行くのだろう、と思っていたがその理由が分かった。

どうやら、ルミナが後ろから後を付いて来ていたらしい。

ルミナはバレたと分かったのか、顔を真っ赤にしていた。


「ち、違います!ただ、2人で仲良く歩いていたので何をしているのかなと思っただけで…。」


慌てふためきながら言うルミナ。


「別に剣さんに用があるなら、いくらでもお貸ししますよ。別に、ちょうど会ったので一緒に帰っていただけですしね。それとも、私に用があるのですか?」


ルルがジロリとルミナを睨みながら言う。

こういうとこが、自身で性格悪いと言う理由なんだろうなと思う。

ルミナはルルの顔をジッと睨む。


どうしてこの子は言いたいことを素直に言えないのだろうか。俺に対してみたいに言いたいことを言えばいいのにと思う。

と言うか、本当に前言っていたみたいに同族嫌悪だの似た者同士だからとかの理由で俺には無駄に喧嘩腰なやり取りをしているとしたならそれはそれでどうなんだと言いたい。


「…俺帰ってもいい?」


俺はルルに言った。

ルミナはえっと言った表情をした。


「ここって、仲直りの為に何か言ってくれたりとかそう言う展開じゃないんですか?」


驚いた表情をするルミナが言う。


「いや、喧嘩の仲介なんてほとんどしたことないから。それに、何か巻き込まれるの面倒じゃん。」


俺は素直にルミナに言った。

正直、ここでルルの機嫌を損ねて俺まで巻き込まれるのはそれはそれで嫌だ。

強気に従うのは生き物としての本能だ。別に間違ったことはしていない。


「…人でなし。」


ルミナが小さな声だが、俺に聞こえるような声で言う。


「人でなしでも何でもどうぞ。一言、頑張って話すようにしますって言うだけで終わりじゃん。お互いに意地を張りすぎなんだよ。」


「あら?その言い方ですと、私も意地を張っていると言いたい様子ですね。」


ルルがここぞとばかりに揚げ足を取りに来る。

俺は慌てたように言い直す。


「違う、違う。今のはちょっと言い方を間違えただけだから。」


フーンと疑いを持った目を俺に向けてくる。

やはり、慣れないことはするモノじゃない。俺は自転車に乗って、適当なことを言ってその場を去ろうとする。


「…分かりました。頑張って話しかけられた時は話すようにします。でも、自分からはまだ慣れていないので話しかけるとかは無理ですけど。それでどうですか?」


ルミナがムスッとした顔で言う。

そんな顔で言うとまたルルの機嫌を損ねるのでは、と思ってしまう。

俺はルルの顔を見る。

ルルは、何度目かの大きくため息をついた。


「いいんじゃないんですか、それで。そもそも、ランスフォード家の当主になる気なら最低限のコミュニケーション能力は必要だと思っているから私だって怒っているんですよ。そうですね、今回は剣さんに免じてこれで仲直りとしますか。」


ルルの方も不満気な表情ではあるが、一応矛は収める気らしい。

ルミナの顔が少しだけ明るくなった。


「おっ、何だ仲直りしたのか。」


ルミナの背後から、サタンの声が聞こえた。

声の方を見ると隣にはリヤドがいた。


「何でここが分かったんだよ、と言うかリヤドは図書館で宿題をしていたんじゃないのか?」


俺はリヤドを見るとサタンに尋ねた。


「何となく、3人の気配を感じたからな。リヤドに関しては図書館にいたのを見つけたから宿題くらい家でやれるだろってことで連れて来た。」


…可哀そうに。俺はリヤドに同情する。


「じゃあ、私達はバスで帰るのでここで。ルミナさんも早く帰りますよ。どうせ、今日もデートするんでしょう?そこの剣さんと。」


「で、デート!?違います!誰がこんな男と!ただ、あまりにも素人なので教えているだけです!」


顔を真っ赤にしたルミナがルルに噛みつく。

ルルは、はいはいと適当に流しながら先を歩く。すぐ後ろにはリヤドが続いていた。

この2人はこういう関係なんだろうな、と俺は言い合う2人の後ろ姿を見て改めて思った。

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