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共闘!

階段を駆け上がった先にある部屋のドアを蹴り上げるように、俺は入った。

目の前にはリヤドが以前、サタン達と遊びに行った際に襲ってきた覆面の男達に囲まれていた。

そして、少し離れた場所にはエンポリオが覆面の男達に守られるような形で立っていた。

俺は大剣を出すと鞘から抜き、地面に鞘を投げ捨てた。


「…、遅かったじゃないか。」


リヤドが俺の姿を見るなり、言ってきた。

よくもまあ、この状況で憎まれ口を叩けるものだ。

今から、そのまま帰ってやってもいいんだぞ。


「随分な口の利き方じゃん。別にお前を助けずにこのまま帰ってもいいんだぞ?」


俺は皮肉たっぷりに言い返す。


「そうだな、別に僕はそれでも構わないさ。その後の展開は知らないがね。」


リヤドは余裕そうな顔で言い返す。


「やっぱり、俺。お前のこと嫌いだわ。」


ため息をつくとリヤドに言う。


「奇遇だね、僕も君のことは嫌いだ。」


リヤドの言葉に本気で帰ろうかと思い始めてきた。


「馬鹿な!どうやってこの場所を!それよりも、1階には大量にストックがいたはず。」


エンポリオが慌てふためくように俺に言ってきた。

ストック、とは恐らく1階にいたルミナとクレアに今頃散々に切り刻まれているであろう人形達のことだろうか。

俺は軽く天井を見上げると、エンポリオに言った。


「うーん、多分今頃どこぞの姉妹にボコボコにされてるんじゃないかな?」


先程まで、勝ち誇った表情をしていたエンポリオの顔から若干汗が浮かんでいた。


「ようやく、慌てふためいた顔になったか。しかし、まさか複数人で来たとは想像していなかった。」


リヤドがエンポリオの顔を見ると、満足そうに俺に言ってきた。

コイツはこの期に及んでも憎まれ口を叩くのか。


「当たり前。何で、男助けるのに1人で寂しく行かなきゃいけないんだよ。で、これどういう状況?俺としてはお前を一発殴れたらもうそれで満足なんだけど。」


俺も負けじとリヤドに憎まれ口を叩く。

リヤドはそんな俺を鼻で笑うと、エンポリオの方を見た。


「見た通りさ。どうやら、僕を一発殴りたいのならこれを全部倒す必要があるだろうね。」


「だろうね。面倒臭いな、本当に。リヤド殿ならこの程度、すでに倒してくれているのかと思っていたのに。ガッカリだわ。」


俺は渾身の煽りをリヤドに浴びせる。

リヤドは少しばかり、ムッとした表情を見せたがすぐにいつもの鉄仮面へと戻った。


「どうやら、この状況を片付けたら次に斬るべき人間が決まったらしい。」


「意外と、俺達って気が合うのかもな。俺も同じ意見だ。」


俺達はそう言うと、お互いの顔を見つめた。

そして、自然と笑いが込み上げてきた。


「フフフ…。」


「フフフ…。」


「な、何が可笑しい!貴様ら!この状況が理解出来ないと言うのか!」


エイポリオの声が室内に響く。

同時に、俺達の笑い声も頂点に達した。


「「フフフフ。あははははははははは!」」


俺達は笑い終えると同時に、囲んでいた敵陣に突っ込んだ。

そして、互いの背中に体を預けるようにして部屋の中央に立っていた。

すでに、お互いの服には血が飛び散っていた。


「剣。君に言いたいことがある。」


コイツ、ついに俺のことを呼び捨てで呼ぶようになったな。

初めて会った時から口調が変わりすぎだろ。


「お前、もう俺の前ではその口調で行くんだな。」


背中越しにリヤドに言う。


「そうだな。君には、これくらいの口調で接するのがちょうどいいと感じた。」


何がちょうどいい、だ。

だが、自分もこのムカつくイケメンに言いたいことがある。


「今日は、本当に意見が合うな。俺も言いたいことがあるんだ。」


そう言うと、エンポリオが指示を出した覆面の男達が一斉に俺達を襲ってきた。

俺とリヤドは互いの大剣を振るい、退ける。


「「俺(僕)がぶん殴るまで、死ぬんじゃねえぞ。」」


お互い、飛び散った血が顔にまで付着している状態だった。

エンポリオは自身を守るように囲んでいた覆面の男達に叫ぶように指示を出す。


「何をしている!相手はたった2人!数でゴリ押せ!!!」


その言葉と共にエンポリオの周囲にいた覆面の男達もこちらへと向かってくる。

俺は慣れない動作で大剣を振るい、それらを切り伏せる。

どうやら、魔力を纏うことで本来俺自身の身体能力も向上させる効果があるらしい。

次々と、迫りくる敵を一心不乱に斬り続ける。


リヤドも、同時に2人から3人で襲ってくる敵に対して、自身の氷結魔術を駆使して戦っている。

俺よりも戦い慣れていくのか、敵を倒すペースが速い。


そんな時だった。リヤドが凍らせた敵を地面に捨て、正面から襲ってきた敵を切り伏せた。

直後、完全に凍りついていない敵が手に握りしめていた短剣でリヤドの右足を突き刺す。


「ぐっ!!!」


リヤドが声を上げる。

俺はそれに気づくと、助けに行こうとする。


「余計なお世話だ!この程度、1人でどうとでもなる!」


リヤドはそう言うと、大剣を突き刺し息の根を止める。

俺は、助けに行こうとした足を止めた時だった。

背後から、急に現れた気配を感じた。

振り向きざまに、大剣を振るいその気配を斬りつける。

が、同時に地面に転がっていた覆面の男が起き上がると俺の足を掴んだ。


「やばっ!まだ生きてたのかよ!」


俺は足元がふらつくと、体勢を崩した。

目の前に4人ほどの敵が飛びかかってきた。

俺は、体の周りに魔力を纏わせると斬りつけてきた相手に対してカウンターを発動する。

同時に、背後から援護に来ていたリヤドが4人を一斉に斬り伏せる。


「随分と、息が上がっているようだが?」


立ち上がる俺にリヤドが言う。

俺は笑みを浮かべながら、リヤドに言い返す。


「うるせえよ。そっちこそ、足が生まれたての小鹿みたいになっているぞ。」


「ふん!ただの武者震いだ。」


リヤドがしょうもない嘘をつく。


「じゃあ、俺もあれだ。口呼吸がしたくなっただけだ。」


「しょうもない言い訳だな。」


リヤドはそう言うと、鼻で笑ってきた。

俺は、再びリヤドと背中を預ける格好になっていた。


「あと、何人くらいだろうな。」


「さあな、だが簡単な答えがある。全員、倒せば実質ゼロだ。」


「脳筋の極みみたいな発想だな。」


「嫌いか?」


「いいや、大好物。」


俺はそう言うと、再び大剣を構える。

そして、襲ってくる目の前の敵を斬り伏せる。


再び、お互いに距離を取ると集団で襲ってくる敵に対して斬りつけられてもダメージを最小限に抑えられるように反射するタイプの魔力で体を覆いながら戦う。


リヤドの方は、地面に倒れた敵が起き上がらないように入念に氷漬けにして対処していた。


「な、何をしているッ!たかが2人だぞ!早く片付けろ!」


エンポリオの苛立ちの声が響く。

まさか、ここまで時間がかかるとは思っていなかったのだろう。

それも、相手はたった2人。


「だいぶ減ったな。どうだ、もうそろそろ根を上げてもいいんだぞ?」


俺は、近くを通りかかったリヤドに言う。


「君の方こそ、もう立つことすらままならないんじゃないのか?」


言い返す、リヤド。

正直、アドレナリンが出すぎているのか頭が熱くなっている。

そんな状態で、油断していたのだろうか。

倒したと思っていた敵が素早く起き上がると、がら空きとなっていた俺の背中を斬りつけてきた。

激しい痛みが俺を襲う。


「がはっ!」


俺は、吐血をしていた。そして、痛みで地面に倒れそうになった。


「気を抜くな!」


リヤドの声が耳に届くと、俺の背中を斬りつけてきた敵に止めを刺す。

そのまま、俺の左腕を掴むと無理やり立ち上がらせた。

俺は無理やり態勢を立て直すと、目の前に現れた敵を斬り伏せる。


しかし、リヤドの方は俺を立ち上がらせるために一瞬の隙を見せたのか目の前に現れた敵の一撃を間一髪で避けきれなかった。


「くそっ!」


肩口にかけて切り傷から鮮血が飛ぶ。

俺は後ろを振り向くと、その敵を背後から思いっきり叩き切った。

同時に、再び俺の背後から武器を持った男の気配を感じた。

振り向いても、対処できないと感じた瞬間だった。


ザシュッ!


音がすると、俺の首筋に大剣の刀身が輝いていた。

そして、目の前にはリヤドが立っていた。

リヤドはニヤリと笑うと、大剣を横に振った。

後ろから血しぶきが上がると、男が倒れる音がした。


「…、あと3人か。」


俺は、体中斬り傷だらけで息の上がった状態でリヤドに言った。

リヤドもそれに同意するかのように、無言で息の上がったまま頷く。


「馬鹿な!俺の作った、大量の兵士達が…。」


ありえない、ありえない。

と小声でブツブツ言うエンポリオ。

それと同時に、最後の3人が一斉に飛びかかってきた。


「「うおおおおおおおお!!!」」


俺達が同時に声を上げると、3人を同時に斬り伏せた。

瞬間、背中を預けるようにして座り込んだ。

正直、もう起き上がれない。

これ以上、新手が来ても対処できる気力はもう残っていない状態だ。

だが、どうやらその思いは杞憂に終わりそうだ。

エンポリオは手勢が全くいない状態で、部屋の惨状に立ちすくんでいた。


「…、ハハハ。ありえない、ありえない。」


放心状態のエンポリオが先程と同じ言葉を呟く。

俺とリヤドは座り込んだ状態でお互いに肩で息をしていた。


「だが、もう動ける状態ではない。貴様ら、2人ともここで終わりだ。兵隊など、またいくらでもストックがあれば作れるッ!!!」


そう言うと、やけくそ気味になったエンポリオは右のポケットから拳銃を出した。

そして、銃口を俺達に向けてきた。


「終わりだ、リヤド・ザスティン。これで、ザスティン家は俺のモノだ!」


エンポリオが叫び、拳銃の引き金に手をかけた瞬間だった。


「馬鹿な男だ、ここで逃げれば助かったのにな。」


背中越しにリヤドがポツリと言う。

そして、左手をエンポリオに掲げた。


「凍れ。永遠に。」


そう言うと、エンポリオの足元から白い円が浮かび上がるとそこから全身を純白の氷が襲った。


「ひひゃあああああああああ!!!」


エンポリオの無様な叫び声と共に、全身が氷漬けにされた。

俺とリヤドは、純白の彫像のようになったエンポリオを見ると、互いに預けていた背中によりかかるようにして天井を見上げた。

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