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突然の急襲

店の外に俺達が出ると、いくつかの建物から黒い煙が立ち上っていた。

そして、悲鳴があちらこちらから聞こえ逃げ惑う人々の姿が目に入った。


「テロか!」


外に出るなり、物騒なことを口走るサタン。

人の逃げ方的に恐らくは来た道の反対方向だろうと推測される。


「魔力の感じがビンビンしてますね、これ。」


ルルはそう言うと、空間から杖を取り出した。

隣にいたルミナも、ポケットから取り出した首飾りを握りしめると一本の日本刀が現れ、それを腰に差した。

俺がその光景を眺めていると、


「私は魔力がなく、魔術が一切使えませんので。こうして、魔道具を使うことで普段使う武器は隠しているのです。」


リヤドは携帯で何かしらの連絡を取っていた。

そして、終わったのかサタンに近づいた。


「とりあえず、至急この5人で対処しろとのことです。すぐに、助けは来るようですが。」


「上等!私達だけで片付けるぞ。」


サタンはそう言うと、ニヤリと笑う。

そして、ルルの方を振り向くと指示を出した。


「ルル!この辺一帯に結界を張れ!あと、一般人が逃げ惑ってると邪魔だからとりあえず意識も失わせておこう。」


「了解です。」


ルルはサタンの指示に従うと、地面に両手を当てた。

ルルが両手を当てた地面から黒い空間が現れると、半径数キロメートル程を覆う巨大なドーム状の結界が作られた。

俺はそれを見上げていると、サタンの声が聞こえた。


「来るぞ!剣!」


サタンの声の方を振り向くと、数人ほどの顔を布で覆った人間がこちらに向かってきた。

サタンは、右手をかざすと以前何度か使っているのを見た大剣を出した。

そして、飛びかかってきた5人ほどの覆面の人間を切り捨てた。

正直、速すぎて目で追えないレベルだった。

サタンの周りに切り捨てた覆面の人間が倒れた。

その直後だった…!


「お姉さま!まだ生きています!」


ルルの声が飛ぶ。サタンが足元を見ると、5人が一斉にサタンに襲い掛かっていた。


「サタンっ!!!」


俺が叫ぶと、すでにサタンの体に5人が手にしていた短刀が突き刺さっているかのように見えた。

しかし、その短刀はサタンを貫くどころか貫通していて逆に5人が自身の短刀に刺されるという光景になっていた。


「なるほど、生命力が強いな。改造された人間か何かかな。」


サタンはそう言うと、再び大剣を振るった。

次は、逃さないぞとばかりに5人の首を同時に切り落としてみせた。

サタンの周りに5人の血が飛び散った。


「死霊魔術の類ですかね。また、随分と人間の再現性が高い。余程の術者が作ったモノでしょうね。」


ルルは転がった首を見ると、言った。

俺はそんな冷静な分析をする2人に重要なことを言った。


「俺はどうすればいい?」


正直、武器を持った集団を相手に戦うなんて経験は人生の中で一度もないのでどうすればいいかよく分からない。

サタンとルルの2人は顔を見合わせると、


「ルル、あれを出してやれ。」


サタンが何やらルルに指示を出す。

ルルも頷くと、右手のすぐ近くから空間が裂け始めた。そして、その裂けた空間から大剣を出した。


「これを使ってください。」


そう言うと、ルルが俺に近づいて手渡ししてきた。

俺は大剣を受け取った。両手にズシリと重さを感じた。


「その大剣は魔力を宿した武器だ。自身の魔力を流し込むことで、自身の持っている魔力の特性に合わせれる。集団で襲ってきた場合は、体に魔力を纏わせて自動カウンターでその武器を使って攻撃しろ。後は慣れろ!」


「いくらなんでも自主性に任せすぎやしないか。」


「こういうのは、実戦で経験を積んだ方が覚えも早いんだよ。私は1人で何とかなるから、3人で剣を守りながら片付けるぞ。」


サタンはそう言うと、前方から現れた新手の数人に向かって飛びかかった。

そして、華麗にそれらを切り捨てると続々と現れる覆面の男達を切り捨てていく。


「とりあえず、お姉さまが切り捨てたのの生き残りを処理していきましょう。」


ルルは俺とルミナとリヤドに言った。

俺達は頷くと、先程サタンに切り捨てられたはずなのに起き上がろうとしている覆面の男達に止めを刺す。


「何で、こいつら生き返るんだよ!何か気持ち悪いな!」


俺は隣で並走しながら、杖から魔力を放出して宙を飛んでいる敵に攻撃をするルルに叫ぶ。


「死霊魔術。簡単に言えば、死人に別の生命を与えて自分の命令通りに動かせるようにする魔術です。ここまで、大量にそして精密な動きをする人形を作れる術者を見るのは初めてですけどね。」


ルルはそう言うと、俺達3人の後ろへと飛び上がった。

そして、杖を横にして叫んだ。


「お姉さまが勝手に突っ込むせいでボロボロ敵が漏れているんですよ!一網打尽で潰すので頭下げていてください!」


そう言うと、横に構えた杖から巨大な火の玉を作り出した。

俺達3人は言われたとおりに頭を下げて地面に伏せた。下げた頭上の先を炎の渦が通り過ぎた。

そして、俺達に襲い掛かって来た集団に直撃する。

俺が頭を上げて立ち上がると、そこには焼き焦げた何かがあった。


「これ、サタン様がある程度先行して潰せているからいいですけどキリがないですよ。」


ルミナがルルに言う。


「分かっていますよ。正直、分担するのが一番手っ取り早いですね。私が剣さんをある程度守りながら戦うので、ルミナさんとリヤドの2人がペアになって残りを潰すのが一番手っ取り早いんでしょうけど…。」


そう言うと、ルルは前後左右と上空を交互に見た。

どうやら、すっかり囲まれているようだった。

俺達はお互いに後ずさりをすると、お互いの背中を預けるようにして敵と対峙していた。


「どうするんだ、これ?」


俺はルルに小声で言った。


「どうするもこうするもないでしょ。むしろ、敵が自ら集まって来てくれたのですから一気に片付けますよ。」


ルルがそう言うと、リヤドとルミナがそれぞれ持っていた大剣と刀を鞘から取り出し構えた。

俺も、習うように自身の持っている大剣を構えた。

リヤドの大剣は刀身が青みがかっており、ルミナの刀は柄の部分が独特の形状をしていた。

恐らく、どちらも自分達専用の特殊な武器なのであろう。

俺のは何の変哲もない大剣であったことから割と量産タイプなのかなと思った。


「来ますよ!」


ルルの大きな声が聞こえてきた。

その瞬間、囲んでいた敵が一斉に俺達に襲い掛かってきた。

俺は2から3人で同時に襲ってくる敵に対して黒い紫色染みた魔力を体に纏わせると体育の時間に習った剣道の要領で大剣を振った。


「うおっ!何とか跳ね返せる!」


俺は、敵の刺してくる短刀が弾かれたタイミングを見計らうように大剣を振るうことで相手に致命傷とは言えないがそれなりの傷を負わせながら奮闘していた。


「剣さん!後ろ!後ろ!」


ルルの言葉が耳に響く。後ろを振り向くと、目の前に覆面の男が1人、短刀を構えて懐に潜り込んできていた。

よりもよって、魔力の纏わせるのが薄い部分を狙って来ていた。


「やばいっ!」


俺は思わず、声を上げると急いでその部分に魔力を集中させようとする。

しかし、それを見計らったように背後に倒れていた敵が起き上がると素早く距離を詰めてきた。


「全く、世話のかかる人ですね。“抜刀・鎌鼬”!」


突然、背後から声が聞こえるとルミナが自身の刀で華麗に距離を詰めてきていた敵を切り伏せる。

そして、懐に潜り込んできていた敵には地面から生えてきた鋭利な氷が突き刺さっていた。そして、突き刺さった敵は貫かれた場所から氷漬けにされた。


「悪い、助かった…!」


俺は背中越しと少し先にいるルミナとリヤドに礼を言う。

そして、起き上がろうとしていた敵に大剣を突き刺す。

正直、キリがない。

ルルはと言うと、風を全方向に飛ばしながら相手と距離を取りつつ、先程見せていた炎の魔術を駆使して戦っていた。


「リヤド!数が多すぎるので、そこの水を使ってください!」


再び、背中を合わせた状態で広場の中央に集まった俺達にルルが言う。

確かに、近くには水路を流れている水が存在する。

だが、そんなモノを使ってどうするつもりなのだろうか。


「いいのですか?多少、建物への被害が増えますが。」


「構いません!後続に後処理は任せます!下手に自分の戦う敵を終わらせて戻って来るお姉さまが広範囲で攻撃し始める方が面倒です!」


ルルはリヤドに言う。リヤドは頷いた。

そして俺とルミナを見ると、


「2人は今から水路まで敵を誘導してください。」


俺はどういう作戦で行くのかさっぱり理解出来ていなかった。

しかし、ルミナはすでに理解したのか俺の服の襟を掴むと一気に水路へと俺を引きずるように走り出した。

それに釣られるかのように囲んでいた敵も俺達の後を追い始める。


「どういう作戦だよ、これ!」


俺はルミナに叫ぶ。


「いいですから!防御魔術を展開できるルル様と違って、私達はリヤド殿の領域に下手に入る方が危ないのです。」


ルミナは俺にそう言うと、水路を思いっきり俺を掴んだまま飛び越えようとした。

ルミナと俺が飛び越えた直後だった。水路の水が一気に噴き出すと、俺達を追って来ていた覆面の男達を襲う。


「“氷河絶対領域(アイステリトリー)”。」


リヤドの声がかすかに聞こえると、覆面の男達を巻き込み辺り一面が氷で覆われた。

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