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初めましてのお食事会

適当な定食屋に俺達は入った。

空いている席に座ると、メニュー表を取ったサタンが机に無造作に広げた。


「何食べようかなー。」


サタンがウキウキしながらメニューを物色していた。

ここ数日の付き合いで思ったことだが、この女は食道楽だなと言うことに気づき始めた。

しかも、無駄に家柄がいいから舌が肥えていそうなのに食の趣味が地味に庶民的なのも追加で。


「俺、かつ丼定食にしようかな。」


「サタン様達のお金で食べると言うのに遠慮がない男ですね。」


俺は美味しそうな写真が載せられているかつ丼定食を指さすと、すかさずルミナからの指摘が入る。


「別に奢ってもらえるなら存分に楽しむのは当然だろ。別にいいでしょ、ルルちゃん?」


俺は隣に座ってサタンの邪魔にならないようにページをめくるルルに尋ねた。

ルルは俺を見上げると、笑顔で答えた。


「はい、もちろんですよ。何なら、もっと高いのを頼んでもいいですよ。」


「マジで!じゃあ、刺身の盛り合わせとかにしようかな!」


俺はルルの言葉を聞くと、1000円くらいのかつ丼定食から3倍以上の値段のするメニューに変えようかと考えた。


「流石にそれは甘やかしすぎだろ。この男、甘やかすとドンドン図に乗るタイプな気がするぞ。」


隣でメニューを物色しているサタンがチクリとルルに言う。


「あら?私は会った時から剣さんには優しくしていますから今更ですよ。」


ルルがサタンに言い返す。

そんな2人を向かいの席から見ていたルミナが言った。


「何だか、ルル様変わりましたね。何と言うか、前まではここまで口数多い人ではなかった気がしますけど。」


「私はどこぞの誰かさんと違って、ちゃんと会話が出来る人間ですよ。」


心外とばかりにルルがルミナに言い返す。

ルルはそう言うと、ルミナとリヤドを改めて見た。


「私は決まりましたけど、お二人は決まりましたか?」


2人はまだ決まってないのか、お互いに顔を合わせた。

日本に来たばかりで何が美味しいとか分からないから、仕方のないことかもしれない。


「私は決まったぞ!このうな重定食にする!」


サタンが両手で机を軽く叩くと、メニューの中にある1つの商品を指さした。

ルルはそれを覗き込むと、


「また、高そうなモノを。剣さんはどうしますか?」


俺が見ていた刺身の盛り合わせよりも更に高いモノを選んできたサタンに呆れると、俺に尋ねてきた。


「うーん、じゃあ俺はそのままかつ丼定食でいいかな。」


ルルの質問に俺はサタンの開いていたページを数枚めくると、目当ての写真を指さした。


「じゃあ、私もそれで。選ぶの迷っているのでしたら、2人もこれでいいですか?」


ルルがルミナとリヤドに注文について質問をする。

2人もルルがそう言うなら、と頷いた。

それを見たサタンは、店員を呼ぶと自分を含めた5人の注文を伝えた。

店員が注文を聞き終わり、厨房の方へ去っていくとサタンはさて、と呟いて置かれていたお茶を一口飲んだ。


「とりあえず、2人の紹介をしておくか。」


サタンはそう言うと、向かいの席にいる2人の男女を見ると横にいる俺の方を見てきた。


「2人の名前は教えたから省くが、この2人は私とルルの小さい頃からの付き合いだ。ルミナが5歳の時かでリヤドとは6歳の時からかな。小学校も中学校も1年違いで同じところで過ごしてきたから。ほとんど腐れ縁みたいなモノだ。」


「腐敗しすぎて異臭放ってそうですけどね、その縁。」


お茶を飲んでいたルルがサタンの言葉にツッコむ。

サタンはその言葉に軽く笑った。


「かもな。まあ、そんな感じの関係だから今回の私達が日本の学校に転入する際も付いて来てもらった。で、まずはリヤドからかな。ザスティン家の跡取り息子であることはチラッと言ったが、コイツの持っている魔力は氷属性。これは言ってなかったから、付け加えておく。遠近両用で使えるから、私やルルには全く敵わないが、ウィザード家の中でもそれなりに戦える方だな。」


そして、サタンは続いてとばかりにルミナの方を見た。


「で、コイツがルミナ・ランスフォード。コイツも、私のお父様の部下の家の1つであるランスフォード家の次期当主になるはずだ。ちなみにコイツの場合は生まれた時から魔力が一切ない特殊な体質をしている。」


魔力がない、と言うことはどういうことだろうか?つまり、数日前までの俺同様にただの一般人と言うことだろうか。

サタンの説明に俺は疑問を持った。

それを察したのか、サタンが説明を続けた。


「お前みたいな元が一般人とは違う。コイツの場合は両親がともに魔力を持った状態で生まれたのに一切魔力を持たないと言う特異体質なんだ。」


そう言ったところで、頼んでいたうな重がサタンの元に届いた。

サタンはウキウキしながら、蓋を開けると割り箸をパチンと器用に割った。

そして、口に器に盛られているご飯を頬張った。


「まあ、きゃんたんに言うとだな。魔力がある人間同士でこりょもが生まれると、基本は魔力を持ってうまれりゅ。」


「口にモノを入れたまま喋るな。ちゃんと、飲み込んでから喋れ。」


俺は、モグモグしながら話すサタンに言った。

サタンは、口に含んでいたモノを飲み込むと話を続けた。

向かいに座っているルミナはと言うと、あまりこの話を聞くのは好ましくなさそうな表情をしていた。

そんなルミナの表情を見ていると、俺達の所にも注文していた商品が運ばれてきた。

俺達は一度会話をやめて、箸を割ると一口かつ丼を口に運んだ。


「まあ、そういう訳で魔力を持った者同士で生まれたのに魔力がゼロで生まれてしまったからな。その代償と言う所か、身体能力自体は人間の限界を超えたモノとして生まれた。」


だからとサタンは言うと、食べていたうな重を再び口に頬張った。

そして、それを飲み込むと再び話し始めた。


「その身体能力を生かして武術に特化した戦闘スタイルを取っている。まあ、だからどうしても対人戦に特化したような性能をしているな。ルミナの場合は。」


言い終わると、サタンは器を持ち上げかき込んだ。


「それ、言ってもよかったんですか?」


ルルがサタンの説明が終わると、口を挟んだ。

向かいには先程から曇らせた表情のルミナの視線が刺さる。


「どうせ、いつかは分かる話なんだし別にこの説明をしたとこで魔術に触れた経験がほとんどない剣には事の重大さなど理解出来ないだろ。」


かき込んでいた器を降ろすと、サタンはルルに言った。


「まあ、そうですけどね。そこで、コミュ障が凄く微妙そうな顔をしているので。」


ルルはそう言うと、かつ丼を食べながらルミナの方を見た。

同い年で同性だからか、結構辛辣な言い方をするんだなと思った。


「私は構いませんよ。どうせ、いつかはバレることですしそれをこの男に知られたところで何も思いませんから。」


ルミナはそう言うと、気にしてないと言わんばかりに食べるスピードを速めた。

それよりも、とルミナは食べるのをやめるとサタンの方を見た。


「私達の住む家ってどこになるのでしょうか?まだ何も決まってない感じなのですが…。」


申し訳なさそうに言うルミナ。その言葉にサタンとルルは顔を合わせた。


「あれ?まだ決めてなかったのか?てっきり、決めていたものだと。」


そう言うと、サタンはリヤドの方を見た。

リヤドは食べるスピード変えずに答えた。


「僕は、サタン様とルル様の住んでいる近くのアパートで独り暮らしをする予定です。すでに、家の方で準備は整えています。」


その言葉にルミナは想定外とばかりの表情をしていた。

意思疎通が全く取れていないじゃないか。どうなっているんだ、この4人は。

俺は呆れた思いで、かつ丼を食べていた。


「まあ、最悪剣の家に住まわせるか。」


「うちはもう無理だぞ。ただでさえ、2人いるんだから。」


サタンの言葉に俺は即座に否定した。


「別に金のことを言うなら気にする必要ないぞ。それこそ、ある程度の支度金が毎月お前の両親の元に入る話になっているから。」


「その話も初耳だし、うちの両親は知っているのかよって話もしたいが。それよりも、部屋がないんだよ。あの部屋に3人もすし詰め状態にするわけないからもう空いてる部屋はないんだよ。」


俺は、サタンに言い返した。ルミナはシュンとした表情でいた。

俺はため息をつくと、ルミナに言った。


「一応、俺の家の近くに母方の祖父母が2人で住んでいる家があるからさ。そこに話付けてみるよ。多分、優しいし家もそこそこ大きい一軒家だから大丈夫だと思うよ。」


その言葉を聞くと、ルミナの顔がぱあっと輝いた。

しかし、すぐさまキリっと厳しめの表情に戻った。


「感謝はしますが、まだあなたのことは認めていませんから。」


「ハイハイ。ツンデレはそこまでタイプじゃないんだよなー。」


俺はテンプレみたいなセリフを放つルミナに言った。

ルルの素直さを数割でもいいから分けてやれないものか。

俺は真剣に考えた。


「まあ、とりあえずは解決しそうで安心しましたよ。」


ルルが一安心とばかりにまだ残っているかつ丼を再び食べ始めた。

すでに食べ終わっていた、サタンが暇だとばかりにお茶をチビチビと飲んでいると、


「で、まだ1時間くらい時間あるが何をして時間を潰そうか。」


俺達に言ってきた。

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