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2人の幼馴染

駅から1つか2つ乗り換えること、1時間くらいかけて空港と隣接している目的の駅に着いた。

隣県は時々、親の買い物に付き添ったりで行くことはあるがそれでもここまで遠くまで来たのは久しぶりな気がする。

俺とサタン、ルルとリヤドの4人は駅のホームに降りると改札口へと向かった。

俺は隣を歩く長身のリヤドを見上げた。

この男、1時間ほどかかった電車の中でほとんど言葉を発していなかった。

サタンとルルから聞かれた質問に対して必要最低限の言葉で返すだけ。ここまで寡黙だと逆に何を話しかけたらいいか分からなくて、電車での旅路で一言もリヤドと会話が出来なかった。


「あのー、そう言えば。呼び方ってどういうのが良かったりします?」


一応年下なのに敬語で話しかけてしまう。

基本的に自分からガンガンコミュニケーションを取るタイプじゃないから、あっちからある程度コミュニケーションを取る姿勢がないと会話を弾ませられる気がしない。


「剣殿の好きな呼び方で。」


リヤドは俺を見ると、ポツリと言った。


「あっ、そうなの。じゃあ、とりあえずまだ全然喋れてないから君付けでリヤド君って呼ぶことにするよ。」


そう言うと、リヤドは小さく頷いた。了承の意味だろうか。

と言うか、喋ることがなさすぎる。

サタンとルルとの会話にしても本当に事務的な会話だけで、電車の中では俺とサタンとルルの3人でほぼほぼの会話が成立していた。

リヤドはただそれを聞いているだけと言う状態。


「いやー、どう接しようか悩んでいるコイツの姿を見るのも中々新鮮だな。」


前を歩くサタンが俺達の会話ですらない何かを聞いていたのか後ろを振り向く。


そう思うなら、何かしらの助け舟を出せと言いたい。お前の部下なんだろう。


俺は恨めしそうにサタンを睨む。


「まあ、慣れてください。私達にとってはいつもの光景ですから、何とも思いませんが。」


同じくサタンの隣を歩くルルが言う。

ルルはそう言うと、改札口にチケットを通し、改札を通る。

俺達3人も後ろに続き、改札を通る。


「まあ、その男は超が付くほどの堅物だからな。真面目過ぎるくらいだから、お前と関わっていい感じに丸くなったりしたら面白いんだがな。」


サタンがそんな無責任なことを言う。


「無理でしょう。まあ、そうなったら面白いですけどね。昔はもっと尖ってたんですけどね。」


携帯で空港までの道のりを検索していたルルがリヤドをチラリと見る。

昔はもう少し尖っていた、とはどういう意味だろう。実は凄い怖い不良だったりするのだろうか。

俺は、このまだあって1時間くらいしか経ってない無口なイケメン長身男を見上げた。


「で、あいつはどこにいるんだ?」


サタンはリヤドと一緒に来ているはずのもう一人の人物のことをルルに尋ねた。

ルルは携帯をいじりながら答えた。


「空港の入り口付近にいるみたいですよ。1人でここまで来てるならまだしもリヤドと一緒に来ているんですし、電車くらい一緒に乗ってくればいいのに。」


呆れたように言う、ルル。

ここまでの話を聞いていると、リヤド然りまともに最低限のコミュニケーションを取れる仲間はルル以外にいないのかとサタンに言いたい。


そんなことを考えながら2人の後に続いて、隣接している空港の入口へと歩いた。

エスカレーターを降り、それなりの人で賑わっている入口付近。

ルルが入り口付近で待っている、と言った人物を探していた。


「あー、いましたね。」


ルルが向けていた視線の先を俺達は見た。

そこには、赤い髪の毛をポニーテールにまとめたサタンと背丈は変わらないスラッとした白人の少女が不安そうな目でオドオドしながら立っていた。

年相応の女性っぽい服装をしているサタンとルルと違い、スーツ姿であった。

顔立ちはサタンの仲間だからだろうか、綺麗な青い瞳に整った顔立ちをしていた。

しかし体型は2人とはだいぶ異なっており、何と言うか平坦の多そうな体だった。

その少女はこちらに気づくと、分かりやすく顔をぱあっと輝かせた。

そして、小走りに走ってくるとサタンに抱きついた。


「お久しぶりです、サタン様!そして、ルル様も!人が多すぎて帰りたくなっていたところでした!」


目をうるませてサタンとルルを交互に見ると少女は言った。

サタンとルルはその言葉に呆れた顔を浮かべ、リヤドは特に何も思っていないのか無表情のままであった。


「相変わらずだな、ルミナは。別にリヤドも一緒にいるんだから駅まで来ればいいのに。」


サタンが呆れた顔のまま言う。どうやら、この少女はルミナと言うらしい。

ルミナと呼ばれた少女は顔をぶんぶんと横に振った。


「本国ならまだ慣れているからまだしも、異国の日本ですよ!満員電車、がある日本ですよ!」


「今日は日曜日ですから、大半の人は仕事も学校もお休み。だから、そこまで混んでいませんでしたよ。」


同じく呆れ顔のルルがルミナに言う。

ため息をついたルルは俺の方を見ると、苦笑いを浮かべていた。


「はい、こちらが私達の友人?仲間?部下?まあ、よく分からないですけどルミナ・ランスフォードさんです。人見知り激しい方ですけど、仲良くしてあげてください。一応、私とリヤドと同年代です。」


ルルはルミナ、と呼ばれた少女を軽く紹介した。

俺はルミナの前に立つと、握手をしようと手を差し出した。


「初めまして、神野剣って言います。」


ルミナは目の前の俺をジッと見てきた。

あれだろうか?サタンかルルが俺のことをすでに紹介しておいたから観察しているのだろうか。それとも、俺の活躍を聞いて会えて光栄です的なことでも言ってくれるのだろうか。

俺は異国の初対面の少女に淡い希望を抱いた。


「あなたが剣殿ですね!サタン様とルル様をたぶらかしているという!」


俺の淡い希望はモノの数秒で打ち砕かれた。

サタンは腹を抱えて大笑いをし、ルルは頭を抱えていた。そして、リヤドは我関せずと無表情。

地獄みたいな空間が流れた。


「あー、ホント想定通りの展開で面白すぎてお腹が痛い。」


サタンはひとしきり笑うと、笑いすぎて浮かべた涙を軽く指で拭いた。

そして、ルミナの肩に手を回すと、


「安心しろ、ルミナ。コイツは私やルルが風呂上りに薄着でいるとバレないようにチラチラと眺めるだけで手を出そうともしないヘタレだから。何も危ないことはされてないぞ。」


ニヤニヤと笑みを浮かべて俺とルミナを交互に見ながらサタンが言った。


「はあっ!?ふざけんなよ、お前!自意識過剰じゃねえのかよ!そんな視線向けたことなんてありません!」


薄着で体のラインが見えやすい服で平気で家の中を歩いている2人への視線を暴露されると、俺は顔を赤らめて否定した。

ルミナはサタンの言葉を聞くと、冷めた視線を飛ばしサタンとルルを庇うような形で立った。


「サタン様、ルル様。この男には近づいてはなりません。事情が事情ですから仕方ないですが、このような男と一緒にいると悪影響です。」


「ふざけんな!人混み嫌って電車すらまともに乗れない女には言われたくないぞ!」


「初めて来た国でいきなり電車に乗れないのは別におかしな話ではありません!本当に失礼な男ですね!」


「何だと!子供みたいな体型しやがって!お前みたいなのにはそんな視線向けないから安心しろよ!」


「言いましたね!私が割と気にしていることを!この男、今ここで切り捨ててやります!」


俺とルミナが公衆の面前とは言え、言い合いを始めた。

何だ、この女。面倒臭いにも程がある。サタン達と一緒に日本に来るらしいが、第一印象は最悪だ。


「はいはい。喧嘩はそこまでにしてください。とりあえず、飛行機が飛べるようになるまでの時間までどこかでお昼にしませんか?」


言い合いを始めた俺達の間に入ると、ルルがサタンに提案した。

サタンはそれを聞くと、


「そうだな、もう少しこの言い合いを眺めてみたかったが。腹も減って来たしな。」


「てか、すぐに飛行機に乗るんじゃないんだな。」


お腹が減ったのか、自身の腹をさするサタンを見て俺はルルに尋ねた。


「空港にしか止められなかったので。どうしても、他の飛行機との兼ね合いで2時間ほど待たされるようです。」


事情を知っているのか、後ろにいたリヤドが教えてくれた。

ルルはそれを聞くと、追加で説明してくれた。


「次からは日本からイギリスに向かう時は転移魔術で向かうから、こんな面倒なことはしないで済むと思いますから。まあ、あの魔術障害のせいで予定が狂ったのが原因ですからね。」


2時間もここで待つのか。それなら、一度腹ごしらえをしたいな。


「じゃあ、空港内のどこかで飯食べようぜ。金、全然ないけど。」


俺は小銭程度しか入っていない財布を見ながら言った。

ルルはその財布を見て笑うと、


「一応、お父様達の方からイギリスに着くまでの食事費やらはそこの2人に渡されているみたいなのでそれで皆で食べましょうか。」


そう言うと、ルルはリヤドとルミナの2人を見た。

リヤドは無表情にルルに頷いた。そして、ルミナはと言うと、


「この男に貴重なお金を使うのですか?少々、気が引けるのですが…。」


「本当に俺に対してだけは辛らつだな、この子。さっきまで待っている時のオドオドした顔はどこに行ったんだよ。」


俺は失礼なことを言うルミナに言った。

ルミナは言われたくない言葉だったからなのか少しばかり悔しそうに睨んできた。


「と言うか、あれだな。魔力障害起きてもすぐにプライベートジェットで飛べるようにお前の家の付近に着陸場所作れば解決するのでは?」


サタンがまた無茶なことを言った。


「出来ないし、させない。どうしてもしたいなら、うちの家の周り一帯の土地の保有者に交渉でもしてくれ。俺は手伝わないけど。」


そんな軽口を叩くと、俺達5人は食事をするために空港内へと入った。

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