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夜空の邂逅

目が覚めると、暗くなった夜の星空が目に飛び込んできた。

毎回、気を失った状態だなと俺は思った。

そして、前回の戦闘の時と同様に後頭部に柔らかい感触を感じた。


「良かった、生きていますね。」


ぱあっと顔を輝かせたルルの顔が覗き込んできた。

前回同様にごちそうさまです、神様と言いたい気分だった。

まあ、この状況になる前に散々体がボロボロになるような事態を作り出しているのがその部下の天使なんだから神なんてロクでもないなとも思うが。


「毎回のように意識失うのも勘弁して欲しいんだけどな。」


「でも、お陰でこうして膝枕してもらえるんですから役得では?お姉さまにもしてもらったんでしょう?」


ルルがクスクスと笑いながら言ってきた。どうやら、サタンから前回の戦闘での話も聞いているみたいだ。


「どうですか?お姉さまと比べて。」


「うーん、そうだな。ルルちゃんの方がサタンと比べて、より柔らかい感触があるな。」


「それは私が太っている、と言いたいんですか?」


ルルが俺の素直な感想に若干ムッとしたようだった。

俺はその表情を見て慌てると、


「いや、筋肉質なサタンと違ってほどよく肉付きがいいバランスの取れた体型って言いたいんだよ。」


「物は言いようですね。まあ、いいでしょう。今回は褒められたと思っておくことにします。」


ルルは少しばかり不機嫌になりかけた表情を緩めた。


「一応、お姉さまの雑な治癒魔法と違って私のは傷口もほぼほぼ消しているので安心してください。」


俺はそれを聞くと、自分の腕を見た。

確かに、傷口はすっかり消えていた。


「流石に腕とか足とかがサヨナラした場合はどうしようも出来ないですけど、切り傷程度でしたらほぼほぼ健康な状態に戻せますから。」


ルルは安心させるように俺にそう言うと、空を見上げた。

すっかりと暗くなってしまい、ある程度疲労が取れたら帰らないとなと思った。


「今回は本当にありがとうございました。剣さん風に言うなら大きな貸しを作ってしまいましたね。」


ルルはそう言うと俺に向かってほほ笑んだ。

俺はその顔を見ると、


「そうだね。そもそもあの馬鹿姉は何をしているんだか。さっさと助けに来いってんだよ。」


俺は結局、全く助けに来なかった遅刻魔のことを思い出すと、文句を垂れた。


「さあ、どこで何をしてるのやら。」


ルルも呆れるように言った。

少しばかり沈黙の時間が流れる。


「私がウィザード家の人間では元々なくて、あの両親から生まれた子供だって話を聞いたんでしょう?」


「何だ、知ってたのかよ。」


「何となく、勘ですけどね。どうせ、お姉さまのことだから漏らしてるだろうなって。」


何が黙っておけだ。バレバレじゃないか。

俺は、絶対に言うなよなどと言ってきたあの女の顔を思い浮かべながら心の中で文句を垂れた。


「お姉さまは私のことが嫌いなんでしょうかね。」


世間話をするかのように。自然な感じでルルは言ってきた。

俺は、ため息をつくとルルに言った。


「嫌いならずっと一緒になんていないと思うけどな。言いたいことがあるなら、お互い素直に言えばいいんだよ。姉妹なんだろ?」


ルルはそんな俺の言葉を聞くと、少し考えているようだった。


「そうでしょうね。それが正しい方法なんでしょうね。」


でも、とルルが言葉を続ける。


「怖いんですよ。嫌われているかもしれない、と言うことを知ることが。私にとって、物心がついた頃からずっと一緒だった姉なんです。誰よりも近くにいて、誰よりも私のことを大切にしてくれた人…。」


「自分の産みの親がテロリストだからってルルちゃん自身がそうなるなんて決まった訳じゃないだろ。」


俺はそう言うと、空を見上げた。


「あいつだって同じこと思っているさ。でも、ルルちゃんの方が勝手に心閉ざしてしまっているんだよ。あの不器用な女に、そんな要領の良さがあると思う?」


ルルは俺の顔を凝視していた。


「今回さ、俺がこんな痛い目に遭ってまでルルちゃんを助けようと思った理由は1つだけなんだよね。ただ、あの不器用で要領悪くて、そして口下手な姉貴から頼まれたからなんだよ。頼む、って。」


「面倒くさいことはとことん逃げることで有名な剣さんがですか?」


「その悪評をルルちゃんに教えたのは誰なんだ?一度話をしたいんだが?」


「さあ、誰でしょう。黙秘権です。」


ルルはそう言うと、先程よりかは明るい顔で笑った。

そして、俺と同じく空を見上げた。


「“呪われた血の女”。最初に耳にした時はどんな意味すら分からなかったんです。だけど、お父さまやお母さまに聞いちゃいけないと思ったんです。何となくなんですけどね。だから、自分でコッソリと私が生まれた当時の年代に起きた事件を片っ端から調べたんです。」


まるで世間話を話すようにルルは俺に言ってきた。

俺はそれを黙って聞いていた。


「それからも社交の場に出るたびに会う他家の大人からその言葉を耳にしてきました。そんな時です、一緒にその場にいたお姉さまがその話を聞いて、他家の者に怒って手を出してしまったんですよね。」


苦笑いを浮かべながら、ルルは言った。


「お姉さまもどうして私がそんなことを言われているのか意味が分からなくて殴ったみたいなんです。でも、その後に殴られた男が理由を言ったんです。お姉さまはそんなことは知らん、もしこれ以上言うならもっと殴るぞと言って。その話が広がってからは私のことを堂々と言う人はいなくなりました。」


ルルの目には涙が浮かんでいた。


「そこからですかね。どこか、自分自身でサタンお姉さまと距離を取り始めてしまったのは。多分、私が近くにいたらこの人に迷惑がかかるんだって。」


そう言うと、目に涙を浮かべた状態のルルが俺を見てきた。


「私はあの時どうすれば良かったんでしょうね。」


俺はルルの顔を眺めながら少し考えた。


「さあね。一緒に陰口叩いてた奴をぶん殴ればよかったんじゃないかな。」


俺の言葉にルルは虚を突かれたようだった。

俺は言葉を続けた。


「俺にも弟はいるけどさ。まあ、実の両親が死んだ血の繋がりのない弟なんていないし、そんな経験した知り合いもいないけど。でも、家族とか兄弟なんてそんな遠慮するようなもんじゃないと思うんだよ。言いたい時に文句言って、喧嘩だってする。もう一緒にいたくないと思う時だってある。でも、どうあがいても離れられないんだよ。何でか分からないけど。呪いみたいなもんだよな。」


俺はそう言うと、ルルに問いかけた。


「サタンのことが好きなんだろ?大切な生まれた頃からずっといる姉として。」


俺の言葉にルルは静かに頷いた。俺はその言葉に満足すると、


「だったら、その言葉を伝えればいい。変に遠慮するからダメなんだよ。あの手のタイプは常に文句言い続けるくらいの方がいいんだよ。」


ルルは一通り俺の話を聞くと、言葉を発した。


「呪いみたい、は言い過ぎですよ。ご家族の方が可愛そうですよ。」


「例えだよ、例え。逆にルルちゃんが自分の気持ちを押し殺しすぎなんだよ。」


俺はそう言うと少しばかり黙った。

ルルは俺が何か言うのかと思っているのか、待っているようだった。

正直、これ以上カッコいい言葉なんて思い浮かばない。慣れないことはするもんじゃないな。


「もっと、自己主張した方がいいと思うよ。まあ、今までがしてないから難しいのかもしれないけど。」


俺はそう言うと、この奇妙な関係の姉妹について考えた。

サタンも普段、無頓着なくせにどうしてルルのことに関してはこんな奥手な関係性になっているんだと思った。

俺は、ふと佐藤から聞かされた言葉を思い出した。


“お前の発言次第で姉妹の仲に大きな亀裂が入る”


あの言葉の意味はこれだったのだろう。あの自称大天使を一度殴ってやりたい。


「でしたら、剣さん。剣さんが私の素を出せる人になってくれませんか?」


ルルは突然そんなことを言ってきた。

俺は言葉の意味を理解出来ずにいた。


「多分、サタンお姉さまとはこれからもこのままの関係性のままながいい気がするんです。でも、それでいいんです。私はあの人の隣にいればいいんです。私のような人間には、あの人は大きすぎる存在なんです。」


だから、とルルは言葉を続けた。


「…だから。剣さんに私が私でいれる居場所になって欲しいんです。それに…。」


沈黙の時間が少し流れた。


「剣さんは私が禁術を使ったのを見てしまいましたからね。見ただけでなく、一緒に戦った共犯者ですから。」


ルルはそう言うと夜空を見上げた。

俺は、少しばかり考えた。そして、考えてもあまり意味が理解出来なかった。


「要は、ルルちゃんからお兄ちゃんって呼んでもらえるってこと?」


「違います!違いますから!そもそも、私と剣さんは1つしか違わないんですよ!ただ、私と対等に接して欲しいってだけの話です。」


ルルが顔を赤らめて否定してきた。


「今と変わらないじゃん、それ。何か特別なことしないといけないのかと思った。」


そう、この数日の関係と変わらない。

賢くて、誰よりも人に優しく出来るのに自分の気持ちを押し隠して自分の姉にすら本音を言えない。

要領が良さそうに見えて、実は誰よりも不器用な少女。

少女はその言葉を聞くと、ここ数日で見た中で一番の笑みを浮かべた。


「そうですね。はい、それでお願いします!」


満面の笑みで俺に言ってきた。

とりあえず、1部はこれにて終了です。

次回から2部開始の予定です。

励みやモチベにもなるのでもし、ブックマークや感想を頂けたら嬉しいです。

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