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新たなる大天使とサタンの消失

「あれ?ルルちゃんは?」


俺は買い物から帰って来た母親に尋ねた。

一緒に行ったとサタンから聞いていたはずなのに帰って来たのは母親1人だけだった。


「それがね、駐車場までは一緒だったんだけど突然用事があるから先に帰って欲しい、って言われてね。」


母親もあまり状況を理解出来ている感じではないようだ。

俺は、隣に立っていたサタンの方を見た。

サタンは俺に視線を合わせると、目線を玄関の外に向けた。

どうやら、外に出て話をしようと言うことらしい。


「少し心配だからサタンと一緒に探してくる。」


「あら、ごめんね。ちょっとお願いしていい?私の方も今から夕飯の準備とか諸々あるから、本当にどこにもいない感じなら警察の方にも電話してみるから連絡して。」


心配そうな母親に軽く無言でうなずくと、俺とサタンは靴を履き外に出た。


「で、どう思う?絶対にそっち案件だと思うんだけど?」


俺は外に出て、母親に話は聞かれていないことを確認するとサタンに尋ねた。

そっち案件、とはここ数日に俺が遭ってきた事件と何かしらの繋がりがあるだろうと言う意味だった。


「だとは思う。ただ、何か嫌な予感がするんだよな。こう、私の第6感的な何かが言ってくるんだよ。」


「お前の勘は当たり率が無駄に高いとかルルちゃんから聞いてたからフラグが建った感じがして嫌なんだが。」


「実際、よく当たるからな。とりあえず、ルルがいなくなった場所にまず向かおう。」


サタンはそう言うと、走り出した。俺の方もその後を追うように走り出した。

雨はすでに止んでいたおかげで、傘が必要ないのがせめてもの救いだった。

俺の脳内では、下校中に佐藤から聞かされた言葉が浮かんでいた。


“その妹やらにこれから近いうちによろしくないことが起きると見えた。”


近いうちどころか当日じゃないか。

あのなんちゃって大天使に適当な予言をするなと文句を言ってやろうと心の中で思った。


「と言うか、嫌な予感ってどんなレベルのなんだよ。まさか、この前みたいなことにはならないよな?」


「多分、ルルが絡んでいる時点でこの前よりも面倒なことになる予感しかしないぞ。」


「もう、お前に全部ぶん投げて家帰ってもいいか?」


「ダメだ。手伝ってもらうぞ。」


コイツは何の権限があって、俺に命令しているんだろうと言いたいが断ったところで無駄なのはこの短い付き合いで理解しているから諦めることにした。

本人曰く、この前みたいな魔力障害を起こされても耐性を自身の中で作り出したから次はあんな失態はしないとは言っていたから最悪の状況になったらコイツに丸投げすればいいかと思った。


「おい、サタン。そっちの道違う。ルルちゃん達が行っていたスーパーはこっちだ。」


全く違う方向に曲がろうとしていたサタンに俺は慌てて言った。

サタンはバツの悪そうな顔を浮かべた。


「道が分からないんだ、お前が分かっているなら先頭はお前が走ってくれ。」


「突然走り出したのはお前の方だろ。道が分からないなら、先に言えよ。と言うか、昨日行ったんじゃないのかよ。」


俺は呆れながらサタンに言った。


「うるさいぞ。そんなすぐに道なんて覚えれるか。1人で行くことなんて考えてなかったから全く覚える気がなかった。」


サタンは先頭を俺に譲ると、顔を赤くして大声で叫んだ。

正直、通行人もいるのだから大声で叫ぶのはやめて欲しい。

割と声がデカいタイプの人間だから響きやすくて、その辺りを歩いている人の目を引いていて恥ずかしい。


「声がデカいんだよ。とりあえず、着いたぞ。」


俺は目的のスーパーに到着すると、軽く息を整えた。

5分くらい走っただろうか。家から近い場所にあってよかったと思った。


「どこでルルと別れたと、お前のお母さまは言ってた?」


「駐車場とは言ってたからあの辺りかな。」


俺が駐車場の方を指さすと、サタンはそちらの方向に小走りで向かった。

俺もその後を付いていった。


「どこの辺りに車を駐車していたかとか分かるか?」


「分かるわけないじゃん、そこにいたわけじゃないんだし。そもそも、それを知ったところでどうするんだよ?」


俺は無理難題を言ってきたサタンに言い返した。

サタンは片膝をついて、地面をさすった。


「ルルの魔力の残滓を探る。残したままどこかに行っているのなら、その痕跡を辿っていけるだろうからな。まあ、私はその手の細かいことは得意なタイプじゃないから少しばかり時間はかかるかもしれないが。」


そう言うと、駐車場の周辺をウロウロとし始めた。

恐らく、ルルの魔力の痕跡とやらがある場所を探しているみたいだ。


「俺には魔力の痕跡って言われてもそんな感触全然分からないんだよな。」


「魔力が体に宿って数日しか経ってないようなお前に何かを期待しているわけではないさ。むしろ、数日でそれが出来たら拍手喝さいを送ってやろう。」


「要らない。そんなモノよりジュースか何か貰った方がマシだろ。」


俺はサタンの後ろを歩きながら呆れたように言った。


「相変わらず、失礼な奴だな。私の拍手喝さいなど貰えたら嬉しさで失禁する者が続出だぞ。」


「もしそうなら、是非そいつらを連れて来てくれ。そしたら信じるから。」


俺達が軽口を叩きながらルルの痕跡を辿っていた時だった。

夕方の時間帯からか夕日で赤く染まっていた雨上がりの空模様がいきなり真っ暗になった。


「…、おいこれって。」


俺は空を見上げるとサタンを見た。

サタンも空を見上げると、舌打ちをする音が聞こえた。


「やられた。遅かったか。」


サタンはそう言うと、俺の家の方向を見つめた。

俺もその視線の先を見ると、自宅のさらに先には小さな山がある。

休日には父親や弟と運動がてら登る山だった。頂上まで下から登って大体30分くらいで登り切れるくらいの山である。

その頂上から細いが禍々しい光が空へと向かって伸びていた。

そして俺達が山の頂上を見ていた時だった、周りを歩いていたはずの人間達が一斉に倒れ始めたのである。


「思ったよりも面倒な状況になって来たな、これは。恐らく、何かしらの魔術が行使された可能性がある。それもルルが思いっきり関わっている状態でな。」


サタンが苦々しそうな顔で呟いた。


「それって、ルルちゃんがこの魔術を引き起こしたってこと?」


俺は不安そうにサタンに尋ねた。

あのルルが、こんなサタンを敵に回すようなことをするとは到底思えない。


「さあな。ルルの意志で自ら行ったのか、それとも無理やり行わされたのか。それこそ、現場に行く必要があるだろ。ただ…。」


サタンはそう言うと、後ろを振り向いた。

俺のことを見てきたのかと思ったが、どうやら視線はさらにその後ろにあるみたいだ。

俺もサタンの視線の先を見るために後ろを振り向いた。

そこには、白い装飾を着た男が立っていた。オールバックの金色に輝く髪をした、長身で細身の体の男性だった。

そして、その着ている服に俺は見覚えがあった。数日前に死闘を繰り広げた天馬ことガブリエルが着ていたモノと同じ服だった。


「まあ、そうだよな。流れ的に天使は絡んでいるよな。」


サタンは納得するように言った。

天使と言うことはコイツもあの2人の仲間だろうか。

俺がそんなことを考えていると、


「いや、あれはあの2人と敵対関係にあるらしい。仲間だったらコイツを倒した後にあの2人も大義名分でボコボコに出来たのだがな。」


サタンが心底悔しそうな表情で言った。

敵対関係?どうやら、同じ大天使と言えども一枚岩ではないようだ。

だがそれよりも、


「何でお前、そんなこと知っているんだよ?」


「あのうさん臭い男から言われた。あの男曰く、ガブリエル以外の大天使は何者かに懐柔されて大天使同士で完全に喧嘩別れの状態らしい。別に大天使の内輪で喧嘩してるだけなら良かったが、どうにもこうにもその何者かの計画に加担して人間界で色々と始めているらしい。サリエルとガブリエルは裏で糸を引いている黒幕を調べるために私達と協力しないか、と持ち掛けてきたようだ。」


サタンは恐らく佐藤から聞かされた事情を俺に説明した。

と言うことは、目の前にいる大天使はその喧嘩別れしたうちの1人と言うことだろうか。

と言うか、大天使ってあいつらの話だと7人いることを思い出した。

つまり、2人以外の5人は敵と言う認識になるのか。

俺がそんなことを考えていると、目の前の男はオールバックにまとめている髪を軽く整えると、俺達に話しかけてきた。


「初めまして、サタン・ウィザードと闇属性の能力に目覚めた少年よ。我が名は、ザドキエル。」


丁寧な口調で笑みを浮かべながら、お辞儀をしてきた。しかし、俺達を見つめる目は全く笑っていないのは明らかだった。

そして、下げていた頭を上げるとザドキエルと名乗る男は指を軽く鳴らした。

すると、空間が歪み始めた。


「剣!ここは私がやるっ!ルルは恐らくあの山の頂上にいる。先に行け!」


そう言うと、サタンは思い切り俺を叩くと後方に飛ばした。

そして、俺の方を見るとニヤリと笑った。


「恐らく、この結界は私を足止めするように張っているものだろう。だから、私が残るのが一番合理的だ。それに…。」


サタンは指の関節をポキポキと鳴らすと、不気味な笑みを浮かべた。


「ガブリエルとの戦いでは消化不良だったんだ。精々、楽しませてもらうとしよう。日本で魔力の感覚にも完全に慣れてきたからな。」


そう言うと、サタンはザドキエルの方を見て右手に大剣を出し握った。

そして、一振りするとそのまま前を向きながら結界が閉じ始め、徐々に姿が空間の中に消えていった。


「後は、そうだな。私がルルを助けに行くべきではないからな、今は。代わりにお前が行ってくれ。」


「相変わらず無茶言うんだな。俺1人で何とかなると思ってるのかよ。」


「なるさ。最悪、あそこにはルルもいる。お前は私と共に大天使の1人と戦ったんだぞ。」


そう言うと、サタンは完全に空間に取り込まれる前にポツリと俺に告げた。


「ルルのことは頼んだ。」


そして、サタンは俺を残すとザドキエルの作り出した空間の中に消えた。

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