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最強の姉妹の2人

ルルからの魔術の授業を受けた次の日、俺は雨の中傘をさして登下校の道を歩いていた。

今日は朝から雨のため、部活の練習は休み。加えて、バスで登校したため帰りも自然とバスでの帰宅となった。


「よう、家に年の近い女を2人も居候させてるけど今日は何かするのか?」


後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

振り向くと、大天使サリエルこと佐藤凛がいた。


「何もない。と言うか、何で俺の家にサタン以外の子が泊ってるのを知ってるんだよ。」


どうせ、例の見通す能力とやらで覗いたのだろうか。

そう言うと、佐藤はニヤニヤと笑った。


「いや、なぜかお前を見ようとすると変なモヤみたいなのが出てきて見れないんだよな。だから、サタンの方を見通したらお前の家にあいつの妹が来ているのが見えた。」


「プライベートもクソもないなその能力。あいつにだけは言うなよ。顔真っ赤にしてキレて来るぞ。」


俺は呆れたように佐藤に言った。

佐藤は俺の隣に並んで一緒に歩くと、気になることを言ってきた。


「そうだな、あいつと戦うのはあまり避けたいな。それよりも面白い情報を与えてやろうか。」


絶対にロクな情報じゃないのは分かっている。

と言うか、話の流れ的に明らかにあの姉妹に関することなのは明白だ。

どうせ、以前みたいな面倒ごとに巻き込まれる未来が見通す力とやらがなくても見える。


「その妹やらにこれから近いうちによろしくないことが起きると見えた。その際にお前の発言次第で姉妹の仲に大きな亀裂が入ると言うことも追加で。忠告だけしておこうと思ってな。」


「もうお前、高校生とかやめて凄腕占い師とかになった方が一獲千金出来るんじゃないのか?」


想定通りの“忠告”とやらを聞いて、俺は冷たい目で佐藤を見た。

言い方と言いセリフと言い、胡散臭い霊媒師みたいだなと思った。

佐藤は言いたいことだけ言うと、じゃあなと早足で去って行った。

よろしくないこと、姉妹の仲に亀裂。何じゃそりゃ。

俺は全く理解出来ないと思い適当に流すことにした。

どうせ、何か起きたところで前回と違い、ほぼほぼ全快になっているサタンとルルがいるのだから何とかなるだろ、と楽観視することにした。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ただいま。」


胡散臭いなんちゃって大天使の戯言がまだ脳裏に残っている俺は、自宅に帰ると適当に手洗いを済ませ自室のドアを開けた。

インターフォンを鳴らしても誰も出ないし、鍵は開けっ放しと言うセキュリティガン無視状態だった。

母親がそんな無警戒なことをするわけないし、昨日のようにルルがるすばんしてたとしたら、戸締りをしっかりして開けてくれるはずだ。

俺は自室に入ると、人のベットの上で寝転んで漫画を読んでくつろいでいる元凶を見つけた。


「家の鍵くらい閉めておけよ。今日はルルちゃんが買い物の手伝いをしに行ったの?」


「そうだな、だから今日は私が留守番だ。」


「鍵開けるために1階に降りるのが面倒だからって、開けっ放しにする奴が留守番とか野良犬を番犬にした方がまだマシだと思うんだが。」


「大丈夫だ、泥棒が入ったら私自らが撃退するだけだから。」


声の主は大きなあくびをすると、寝転んでいた体を起こして俺の方を見てきた。

サタン・ウィザード。数日前から人の家を我が物顔で使っている少女。

顔や無駄に育っている体を見ると、本当に見た目だけなら美少女だな、と思った。

普段の言動がそのプラス評価をプラマイゼロにするのが残念だが。


「着替えるから一瞬だけ外に出てくれよ。着替え終わったら、別にベットに寝転ぼうが何しようが構わないから。」


明日までの提出予定の宿題をやらないといけないため、机さえ占拠されなければ別に気にならない。

サタンは再び俺のベッドに寝転がった。


「別にお前の着替えなど見たとこで気にしないからお気になさらず。」


そんな舐めたことを言ってきた。

俺はそうか、とばかりに着ていた制服を脱ぎ始めた。


「遠慮なく着替え始めるんだな…。」


サタンが少し引き気味に言ってきた。


「お気になさらず、って言ったからな。遠慮なく着替えさせてもらうよ。お前も全然俺の前で着替えてもらってもいいんだぞ。」


俺が仕返しとばかりにサタンを挑発した。

サタンはその言葉にふんと鼻で笑ってきた。


「安心しろ、そんなことは起きない。と言うか、そんなことしたらお前に襲われてしまいそうだからな。」


「俺が襲ったところでボコボコにされるだけだろ、お前相手ならなおさら。」


俺はそう言うと、脱ぎ捨てた制服を拾った。


「そう言えば、昨日ルルにいろいろと教えてもらったそうだな。」


拾い終わって、部屋から出ようとする俺にサタンが声をかける。


「そうだね、魔術について?色々教えてはもらったな。」


俺はそう言うと、ドアノブに手を掛けた。

サタンは読んでいる漫画の隙間から俺のことをジッと見ていた。

コイツは何が言いたいのだろうか。この女は、普段は分かりやすい言動をするくせにたまに回りくどいことをしてくる。


「何が言いたいんだよ?」


俺は何か言いたそうなサタンに向かって言った。

すると、再び起き上がったサタンは少し迷った後俺に言ってきた。


「私とルルの関係性を知りたそうにしてる、とルルが教えてくれたからな。」


「別に言うのが嫌なら教えてもらわなくてもいいんだぞ。別にそこまでして聞きたい話でもないし。」


俺はそう言うと、一度部屋から出て洗濯機のある場所に向かいそこに脱いだ制服を置いた。

置き終わった俺が振り向くと、自室のすぐ手前の廊下にはサタンが立っていた。


「いや、話した方がいいな。ルルがお前のことを実は警戒しているから話したがらないとか、妙な誤解招くのもあれだから。」


「別にそんな誤解してないんだけどな。まあ、話してくれるなら聞くけど。」


そんな意味深なことをサタンが俺に言ってきた。

余程、ルル本人的には隠したいことらしい。

あれか?実は父親の浮気相手の子供でした的な昼ドラみたいな展開なのか、とも想像した。

そんなことを考えながら、俺は自室に戻った。そして、カバンから教科書とノートを取り出し机の上に置いた。

俺の後から部屋に入ってきたサタンはそのまま布団の上に胡坐をかいて座った。


「さてと、とりあえず話を始める前にルルにこの話をしたことは内緒にしておくのは約束してくれ。ルル自体がこの話をそもそも嫌がるからな。」


「もうそこまで忠告するなら話さなくてもいいんだけどな。何か話したのがバレた後にお前ら2人が喧嘩しだす未来とか見えてきそうだし。」


俺が面倒くさそうな顔をしながらサタンに言った。

サタンは首を横に振ると、話を続けた。


「いい、どうせいつかは話さなければならないことなんだし。特にお前とは前も言ったが長い付き合いになりそうだからな。姉妹揃って。」


出来れば面倒ごとに巻き込まずに長い付き合いでいさせてくれよ、と文句を言いたかったがルルがいつ帰ってくるか分からないのでさっさと話を聞こうと思った。

サタンは俺が了承してくれたと思ったのだろうか、話し始めた。


「エルフ、と言う言葉を聞いたことはあるか?」


サタンがいきなりよく分からないことを言い出した。

俺が困惑した表情を見せたからだろうか、サタンは苦笑いをした。


「まあ、そうだな。それまでそう言う世界とは無縁の世界で生きてきたのだからその反応は当然だな。一応言ってくが、この世界にはそう言った存在は存在している。」


「エルフって耳が長い妖精か何かだろ。そんな耳してる人間見たことないんだが。と言うか、そんなのいたらニュースとかで出てそうだし。」


「それは科学の発展と共に魔術が衰退していく過程で歴史の隅に追いやられていったそいつらが人間界に溶け込み、子孫を残すようになったからだ。エルフだけに限らない。お前が今までおとぎ話などで触れてきたそう言った種族は実在している。まあ、今回の話にそこはそこまで重要じゃないから詳しくはまた気が向いたら話してやる。手っ取り早く言うと、ルルはエルフの血を引き、それも真祖と呼ばれるとびきり強いエルフの血を引いているんだ。そして、それを生んだルルの両親はすでにこの世界にいない。」


サタンはそう言うと、一気に喋って疲れたのか一息ついた。

そして、呼吸を軽く整えると再び話し始めた。


「ルルの両親は真祖の血を引くルルを使い、魔術テロを起こそうと企てた。結果は計画を実行する前にバレて、未然に防ぐことが出来た。その際にルルの両親を殺したのがウィザード家もとい私のお父さま達だ。ルルを保護したお父さまはルルを自分の子供として育てることにしたのだ。それが私達、姉妹の関係。まあ、私も物心がつく前の話だから正直、私からしたら知った後でもそれでルルのことをどうも思わなかったのだがな。」


そう言うと、サタンは少しだけ昔を思い出してるのだろうか。天井を見上げた。


「私のお父さまもお母さまもそれこそお兄さまとお姉さまもウィザード家全体でこのことは公然の秘密としてルルには隠していたらしい。ただ、物心が付き始めて私と共に他家とのパーティーに出るようになってどこかで聞いてしまったんだろうな。陰口を。」


なるほど、だからルルは話したがらなかったのか。

サタンとはそもそも血は繋がっておらず、自身の両親はすでにこの世にいない。加えて、その両親は自分を利用してテロを起こそうとした大罪人。


“実力以上の評価を勝手に付けられて”


恐らくこの言葉の意味はこのことも含んでいたのだろう。

サタンは1階から特に物音がしてないかを確認しようと思ったのか、ベットから立ち上がりドアを開けた。

そして、まだルルが帰って来てないことを確認すると安堵の表情を浮かべた。


「以上だ。簡潔にまとめたがな。」


そう言うと、ドアを再び閉めたサタンが後ろで椅子に座っている俺の方を見てきた。


「あいつ、優しいだろ?常に笑顔を顔に貼り付けている。あれは、怖いからなんだよ。自分がテロリストを起こそうとした罪人の娘だと言われるのが。自分を隠そうとする、私や私の家族や家の者にもな。」


サタンはそう言うと、悲しげな顔を浮かべた。

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