表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/329

ケジメのつけ方

その夜、俺は久しぶりにルミナとの日課をしていた場所へと向かった。

そこにはすでにユウリがいた。

どうやら、まだルミナはいないようだ。

なぜ、ユウリだけがいるのかが疑問だったが今日に関しては好都合だ。


「おや、剣殿じゃないですか!今日はどうされたのですか?」


ユウリがこれまで、俺と会った時と変わらない調子で話しかけてきた。

相変わらず声がデカいな、と思った。

もしかすると、これもルミナ達の警戒心抱かせないためのキャラ付けなのだろうか。

どうやら、俺がいろいろと調べていたことについて何も知らないようだ。

ルルの情報統制に感謝しなければならないな、と思った。


「今日はちょっと、用事があって来たんですよ。」


俺は、出来るだけ平静を装ってユウリに言う。


「用事ですか?ルミナ嬢はまだ来ていないのですが、そうなると私にですか?」


ユウリが聞き返してくる。

俺は無言で頷いた。


「ユウリさん、いや今はウラド・イエッリーニって呼んでも大丈夫ですか?」


俺は直球で尋ねた。

どうせ、下手に濁した言い方をしたところで俺ではボロを出すのが目に見えている。

ならば、最初からストレートに聞いた方がいい。

ユウリの表情が明らかに変わったのが見えた。


「…何の話ですか?」


今までで聞いた中で一番小さな声だった。

そんな声も出せるんだな、と思ってしまう。


「そのままです。ウラド・イエッリーニ。あなたの本当の名前ですよね。ユウリ・フェルナンデスさん?」


俺は再度聞き返す。

正直、こんな尋問みたいなことをしたことがないのでやり方もよく分からない。

ただ、いきなり戦闘になる前に調べたことが合っているかの答え合わせだけはしたい。

まだ、俺自身の心の中ではこの男がルミナを騙していることを信じたくない自分がいる。


「ハハハハ!いや、何を言い出すのですか?突然すぎて、少し動揺してしまいましたよ!」


慌てて、普段の声量に戻るユウリ。

少なくとも、俺の中では先程の問答である程度ルル達が調べてくれた情報が正しいことを確信した。

ただ、まだ個人的に残っている謎がある。


「とぼけなくても大丈夫ですよ。その名前で呼ばれたくないのなら、これまで通りにユウリさんって呼びますから。」


俺はそう言うと、いつでも攻撃をされても大丈夫なように準備をする。

恐らく、この男が魔術を持たないというのはウソであることは分かっている。

ただ、それがどんな魔術なのかが分からない。


「ふむ、まさかここまで早くバレてしまうのは想定外だったな。」


先程までの丁寧な口調とは一転、乱暴な口調で話しだした。


「それが素の喋り方なんですね。」


俺はユウリに言う。

自分の中にほんの少しだけ残っていた期待が打ち消されていくのを感じた。

やはり、この男はルミナに偽って近づいていたのだなと確信をする。


「まあ、今更隠す必要もないからな。ただ、本当に驚きだ。いつから気づいていた?」


「いつから、と言われたら疑い自体はずっとありましたよ。まあ、ほとんど感覚に近い何かでしたけどね。何だろう、違和感みたいな?」


俺はユウリに答える。


「なるほど、闇属性の魔術によるモノなのか。はたまた、ただの勘が鋭いだけか。」


ユウリはそう言うと、少しだけ考えていた。

俺は、その間に攻撃を受けたらいつでも対応出来るように構えていた。

今この場にいるのは正真正銘、俺とユウリだけ。

サタンもいないし、ルルもいない。リヤドもクレアもルシフェルもアリスもいない。

致命傷を貰えば、その場で死に至る状況だ。


「…それとも、サタン・ウィザードに勘づかれたか?」


そう言うと、ユウリは俺に鋭い目つきを送る。

そうだ、どことなく感じていた違和感の正体はこれだ。

どれだけ笑顔を見せていようが、大きな声で元気な性格だとアピールをしていてもこのどこか何か隠していそうな目つき。

俺はそこに違和感を感じていたのかもしれない。

ルミナに対しても目はどこか笑っていなかったのだ。まるで、獲物を狩る獣のような目をしていた。


「サタンじゃないですよ。まあ、あいつもそれなりに勘づいてはいそうだったけど。どちらかと言うと、ルルちゃんとクレアちゃんですかね。」


俺はユウリに答える。


「なるほど。厄介な友人と妹を作ったものだな、あの女も。」


ユウリがポツリと言う。

そして、俺をギロリと見つめる。


「…そして、神野剣。よもや、貴様のような男があの女の主となっていたとはな。」


「主になったつもりなんてないですよ。ただの友達であり仲間。それ以上もそれ以下もないですよ。」


俺はユウリに言い返す。

もう、ここまで来たらほぼほぼ確信した。やはり、この男はルミナの命を狙っている。


「ウラド・イエッリーニさん。あなたは一体何者なんですか?」


俺は唯一残っていた最後の疑問をユウリにぶつける。

もう、ユウリと呼ぶ必要もない。

ユウリは不気味な笑みを浮かべていた。


「そうだな。もうここまで来たら、隠しごとは不要か。」


そう言うと、ユウリは胸にかけていたペンダントを引きちぎった。

それは、ルミナが持っていたペンダントと同じに見えた。


「俺の本当の名は、ウラド・イエッリーニ。かつて、ランスフォード家によって一族郎党に至るまで滅ぼされた家の末裔だ。」


「知っていますよ。全部調べましたから。だから、もう聞きたいことは何もないですよ。」


俺はそう言うと、大剣を取り出した。

そして、ユウリに向かって構えた。


「なるほど、この俺を殺しに来たか。だが、いいのか?もし、それをあの女に知られたら貴様は一生その憎悪を背負って生きていくことになる。」


余裕の表情を見せている、ユウリが俺に言う。


「元からそのつもりだから、気にしないでくださいよ。」


俺は、そう言うとユウリに向かって飛びかかった。

実力の差は明白だが、それでもルミナと何度も打ち合って来ている。

ある程度の感覚は覚えてるつもりだ。


「なら、1つ知りたくないか?なぜ俺が、フェルナンデスという名字をなのっていたのかを。」


背後に回った俺に対して、ニヤリと笑みを浮かべながらユウリが言う。

俺はそれを無視して、大剣を振るう。

しかし、手ごたえはなくユウリは俺から少し距離が離れた場所に立っていた。


「まあ、知りたいと言えば知りたいかもですけど。正直、今更どうでもいいかなって。」


俺はそう言うと、再び大剣をユウリに向かって構える。


「そうか、なら教えてやろう。」


余裕の表情を崩さないユウリが言う。

俺は気にせずにユウリに向かって、突っ込む。

しかし、やはりユウリの姿を捉えることは出来ない。


「ユウリ・フェルナンデス、という名。これは、かつての俺の友の名だ。俺と同じく、ランスフォード家によって滅ぼされた男のな。だから、敢えて名乗ったのだ。」


「それでこうやってバレたってのは中々に皮肉なモノだな。」


俺は空ぶった大剣を構え直すと、ユウリに言う。


「構わんさ。いずれはバレると思っていた。だが、想定よりも早く気付かれただけの話。貴様をここで殺し、そのままの流れであの女を殺し、“鬼徹(きてつ)無塵(むじん)”を頂く。」


「何で、その刀にそんな固執しているんだよ。別にルミナちゃんを殺してまで奪う必要があるの?」


俺はユウリに聞き返す。

ユウリは腰に帯びていた刀を鞘から抜く。


「あの刀を奪い、俺の家を滅ぼしたハク・ランスフォードに娘の死体を見せつけるのさ!最高の復讐になると思わないか!」


楽しそうに言う、ユウリ。

俺は、呼吸を整えて大剣を両手でしっかりと掴む。


「…やっぱり、決めたわ。お前は絶対にここで倒す。」


俺はポツリとつぶやく。

そして、一直線にユウリに向かって飛びかかった。

恐らく、何らかの魔術が使われていることは分かっている。

なら、強引に左右に振って隙を作ってやる。

その時だった…。


ガキンッ!!!


俺の大剣が誰かの刀身で防がれた音がした。


「…何をしているんですか!?剣様!」


そこにはルミナが立っていた。

そして、ユウリの前に立ち俺の一撃を防いでいた。


「おー、ルミナ嬢!いい所に!」


ユウリの声が元に戻っていた。

ここまでの変わり様は舞台俳優でも見られるものじゃないと思う。

恐らく、ルミナをいや、ランスフォード家を騙す為だけに習得した技術なのだろう。

俺は何とか、ルミナを振り切ってユウリに大剣を突き刺そうとする。


「どういうことですか!説明をしてください!」


行かせまいとばかりにルミナが俺に叫ぶ。

クソッ!余計な問答のせいで、時間をかけてしまった。

しかし、俺は軽く息を吐くとルミナの目を見た。

恐らくは、今この状況でもユウリが自身の恩師であると信じているのだろう。

なら、その思い出を壊してはいけない。


「その男を殺しに来ただけだよ。」


俺はそう言うと、素早く横に移動しルミナに対して肩でタックルをする。

ルミナは虚を突かれて態勢を崩す。

俺はそのまま、ルミナを後ろに突き飛ばす。

今の瞬間、明らかにルミナの背後をユウリが狙っていた。

正直、あのままルミナと鍔迫り合いをしていたらルミナが背後から突き刺されていたのは明白だ。


「待って!!!」


ルミナの声が背後から聞こえる。

俺はそのまま、ユウリに向かって大剣を振るう。

ユウリは避けることもせずに、その一撃を軽くあしらう。

まあ、そうだよな。俺の一撃程度、この男なら簡単に防いでくるよな。


「ルミナ嬢!逃げてください!」


普段、ルミナに見せている表情と声でユウリが叫ぶ。

しかし、ルミナはそれを聞かずに俺へと斬りかかる。

三者三様の攻撃が重なり、乱戦になりかけていた。

その中で、明らかにユウリがルミナを仕留めようとする気配を俺は感じた。


「そうだよな!そこが一番の狙い目だもんな!」


俺は声を上げた。

そして、大剣の先をユウリに向かって突き刺す。

完全にルミナの方に視線が誘導されていたユウリが逆からの攻撃を寸前で防ぐことは出来なかった。

剣先が鋭く、ユウリの肩を掠めた。

そして、鮮血が飛び散る。

恐らく、ユウリにとってほとんどかすり傷程度のダメージだ。

正直、ここがこの男を仕留めることが出来る最後のチャンスだと思っていた。

態勢が崩れたユウリに更に攻撃を仕掛けようとする。

その時だった…。


「“二刀流・燕返し”!!!」


ルミナの腰に帯びていたもう1本の刀がキラリと光ったのが見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ