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第5話 これって異世界転生ですか?

 麻里亜、いやマリアは途方に暮れていた。


 どうやら自分はゲーム世界の中にいるようだが、リアルな肉体を持っていると錯覚しそうになった。


 森の中にいるようだが、太陽の光や風の感触、鳥の囀りなどの音もかなりリアルだ。


 これって異世界転生というものだろうか???


 月子が持っていた冒涜の書ではそんな感じだった。


 しかし、わからない。


 異世界転生なんて絶対にない。死んだら神様に叱られて地獄の火の池、またはイエス様を救い主と信じれば天国に迎えられる。今の状況は神様にそんな裁きを受けていないので、とりあえず死んではなさそうだ。


 輪廻転生もあるとしたら、一体誰が死後の行き先を決めているのだろう。考えれば考えるほどわからなくなるが、このままじっとしているわけにはいかない。


「でも今の私って超イケてない?」


 マリアは水溜りを鏡代わりにして自分の顔を見てみた。大きな瞳の色白美女がいる。自分の顔を見ているだけでも夢見心地だ。


 若い頃はバブル全盛期だったが、マリアは聖書の勉強に明け暮れていた。本当は牧師になりたかったが、色々あってシスターの方が向いていると思い、修道院に向かったのだ。


 その前は受験勉強漬けだった。妹の月子が優秀だったので、いつも成績を比較されていたのは、しんどかった。成人してからは親の反対を押し切り、シスターになったので、人生で色っぽい出来事も皆無。こんな人間は修道院では珍しくはないが、現実的な世の中ではレアだろう。


 そう思うと、今のマリア状況は遅れてきた青春というものなのかもしれない。聖書には「この世に倣ってはいけません」と書いてあったのが気になったが、そもそもこの世界に神様や聖書はあるのだろうか。


 ちらりと冒涜的な事が頭に浮かんでしまい、マリアはぶんぶんと首を振る。


「ここでウジウジ考えていても仕方がないわ。そうよ、このゲームを楽しめばいいのよ。とにかく前に進みましょう!」


 マリアは深く考えないようにしながら、前を進んだ。自分があれこれ考えたところで、何か上手くいくわけがない。


 元々自分は前向きな人間だ。月子にはお花畑と言われているが、今はそれでも良いかも知れない。今は大力も美貌もあるマリアだ。どうにかなるかも知れない。しかも歩いていても何故か身体は疲れない。汗もかかない。お腹もすかないが、心理的に何か食べたくはなった。


 現状、帰り方は全くわからないが、かなり都合のいい身体である事は伝わってきた。


 こうしてずっと森を歩いていると、突然目の前が開けた。


「し、しんでん?」


 神殿としかいいようの無い建物がみえた。立派な柱があり、豪華なステンドグラスも見える。もしかして教会か修道院かもしれないと思ったが、どうも薄暗い雰囲気がたちこめていた。木々に囲まれているので、日本の神社のような胡散臭さも漂う。実際、入口には賽銭箱のようなものが置いてあった。


 中をこっそり覗くと、見た事もない硬貨が詰め込まれていた。日本でもアメリカでもフランスのものでもない。ただ、なぜか日本語で六十円とか百二十円という文字も見えて首を傾げてしまう。


 そして賽銭箱の上には、冊子のようなものも置いてあった。


「『メタ☆バース〜異世界カルト村編〜』って表紙に書いてあるけど何だろう? ゲームの名前?」


 冊子をぺらりと捲ると、この世界の事が詳しく書かれていた。


 このゲーム世界は、異世界・ナーリュウ国というらしい。龍神というドラゴンが神様で、それに使える神官が組織化されている宗教国家らしい。ただ、近年は組織の腐敗により堕落が進んでいる模様。そこにツキィ ・マリアという聖女が現れて、宗教改革していくという物語らしい……。まずは田舎のスピッテル村の神殿からスタートとある。


「ってこれは私の事? 本格的にゲーム世界のようね……」


 マリアからすると、ドラゴンが支配している国なんて異教すぎるわけだが、この世界で福音を述べ伝える事が使命のように思われた。


「それにしても聖女だなんて。聖書では特定の誰かを持ち上げる事はしちゃダメなのに」


 ちょっとツッコミを入れたくなったが、ここはやはりゲーム世界だ。そう簡単には変えられなようだ。


 マリアは冊子を詳しく読んだが、帰り方はよくわからなかった。このゲームは製作者が日本人んなので、全部日本語で通じるというのは有り難いが。


 中世ヨーロッパ風の宗教国家で日本語が通じるというのは、不気味だが、深く突っ込んではいけない気がした。


「そうよ、今の私はマリア。深く突っ込んではいけないわ」


 独り言で呟いた時だった。


 返事など返ってくるはずも無いと思ったが、そばで声が響いた。


「聖女様! こちらにいらしたんですね!」

「え!?」


 目の前には宝塚の男役のような麗しい姿の男がいた。白いマントの神官服のようだが、よく似合っていた。


「さあさあ、こちらにまいりましょう」

「えぇー?」


 あれよあれよと言うまに麗しい男性か連れて行かれてしまった。

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