第94話 心当たり
紬「また...なの?」
純介「あぁ、だから俺の家に匿っておこうと思って」
紬「また...あの時みたいに純介は守ってくれるの?」
純介「あぁ、守ってやる」
紬は俺に抱きついてくる。だが、そのハグは親愛のハグではないことをわかっている。
紬は震えているのだ。あからさまな死に恐怖し、俺に助けを求めているのだ。
純介「とりあえず、リビングに行こう。玄関から侵入してくるかもしれない」
紬「そ、そうだね」
俺と紬はリビングに行き、ソファに座る。ここなら、安全だろう。
紬「うぅ...怖いよぉ...」
紬は、俺の胸に顔を押し付けて震えている。その目には、涙を映しており、俺の服にシミがついている。だが、そんなことに文句をつけることはない。
純介「大丈夫、大丈夫だよ」
カーテンが風で揺れる。
───何故、窓が開いているんだ。俺は、窓を凝視する。肥えた人の影が目に入る。
純介「ひっ!」
”パリンッ”
窓が、完全に割れる。太った男が中に入ってくる。俺と紬を同時に道路に突き落とした男。
太った男「つむ様を汚しやがって!お前のせいで、つむ様は俺らの相手をしてくれなくなったんだ!」
太った男が、手にトンカチを持ってこちらに歩いてくる。俺は、紬を庇う。
太った男「お前がいなければ!つむ様は...つむ様は俺達のものに!」
太った男がトンカチを振り下ろす。俺は、それを左手で受け止める。
純介「───ッ!」
俺の左手は砕ける、完膚なきまでに。だが、ここで負ける訳にはいかない、そうしないと紬が殺されてしまう。俺は後ろを振り向いた。
純介「え...」
紬「かは」
遅かった。気付くのが、遅かった。紬の胸にナイフが刺さっていた。橋本がいたのだ。
太った男「ナイスだ、橋本」
橋本「佐藤さんが、このヤリチンを止めてくれてたからですよ」
俺の体は、動かない。刺された紬を前にして動かない。そのまま、佐藤と呼ばれていた太った男が俺の頭に目掛けてトンカチを振り下ろし───
***
グルグルグルグル。視界が回る。頭がキンキンと痛くなる。そして、少しの喪失感があり。
”ガタンゴトンガタンゴトン”
純介「───ッ!」
紬「純介...どうしたの?」
純介「いや、なんでもない」
俺は、紬を連れて家に帰る途中だった。午後2時45分。どこに逃げれば正解なんだ。
純介「今から、練習場所にに戻らないか?」
紬「え...なんで?」
純介「やっぱ、少しは顔だした方がいいんじゃない?」
紬「そっか、じゃあ行こう」
俺らは次の駅で降り、周りを気にしながらもと来た道練習場所へと向かう。
ー午後3時20分、練習場所ー




