第88話 7月17日
ー7月17日午前9時、練習場所ー
智恵「さて、練習始めよっか!って...今日も健吾は遅刻?」
稜「あぁ、上手く行かなかったパターンか?」
栄「うへぇ...可哀想に...」
俺達7人は、俺が作った曲のダンスを練習する。
智恵「やっぱり、梨央と純介は言っちゃ悪いけど下手だなぁ...」
梨央「まぁ、わかってたことだし、努力するよ!」
純介「体幹が無くて悪かったな」
美緒「あ、健吾が来た」
健吾「ごめんな、遅れて」
純介「健吾、大丈夫だったのか?」
健吾「はは...まさかな...振られたよ。完全に、別れてきた」
純介「そう...なのか...」
健吾「安心して、もう取り乱したりはしないからさ」
健吾は虚ろな目でこちらを見ている。どこか、生気を失っているような感覚だ。
純介「で、別れたんだな?」
健吾「あぁ、別れてきたよ。もう、紅美のことは忘れることにするよ。もう、あんなヤツ大嫌いだよ」
健吾は、そんな心無い言葉を言う。俺は、その言葉に憤りを覚えた。
純介「なぁ...それは違うんじゃないか?」
健吾「何がよ。別れたことが悪かったのか?別に、純介に文句を言われる筋合いはない」
純介「違う、そこじゃねぇ。{あんなヤツ大嫌い}のところだよ」
健吾「別に、文句ないだろ?」
純介「文句しかねぇよ。お前は...いつから紅美と付き合ってたんだ?」
健吾「高校1年生からだよ」
純介「じゃあ...そこまでの2年間を無駄だって言いたいのか?」
健吾「んなこと言ってないだろ?」
純介「いや、言ってるよ。お前は、紅美への愛を無駄だったって言うのか?」
健吾「そうだよ。無駄だったんだよ。結局は無駄だったんだよ」
純介「そんな訳ないだろ!お前は、紅美と過ごした時間を無駄だったって言うのか?無意味だったって言うのか?何もかも捨てちまうのか?違うだろ?おかしいだろ?そんなの、有り得ないだろ?自分を大切にしろよ!紅美を大切にしろよ!お前は、紅美を愛していたんだろう?好いていたんだろう?惚れていたんだろう?その愛は本物だったんだろう?」
健吾「まぁ...そうだけどさ...今は...」
純介「紅美と付き合っていたことをお前が黒歴史と呼ぶのなら、きっと俺はお前を許さない。人を好きでいたことを恥だと思うような人間とは、俺は縁を切るよ!」
健吾「あぁ...そう。じゃあ、俺ら、縁を切るか」
純介「お前...正気か?」
健吾「あぁ、正気だよ。もう、どうせ紅美は手元に戻ってくるはずない。なら、全ては無駄だったんだよ。愛していた時期は、無駄だったんだよ。俺は、紅美に裏切られたんだ」
純介「おい、おいおいおいおいおい。待てよ!違うだろ?そうじゃないだろう?裏切りな訳ないだろう?きっと、紅美も理由があったんだろう?」
健吾「理由か...愛が重いって言われたんだよ。だから、愛は無駄だったんだよ。俺は、愛に裏切られたんだよ」
俺は健吾を殴りそうになる。だが、それを堪える。
純介「その愛を裏切りと呼ぶのなら...お前は人間失格だよ。健吾」




