第86話 安倍健吾
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安倍健吾───俺には、とても仲の良い姉がいた。姉の名前は、安倍歌穂だ。
姉とは、7歳も年齢が離れていた。そんな、仲のいい姉は白血病であった。
健吾「お姉ちゃん!また、入院するの?」
歌穂「うん、今度は大事な手術だからさ」
健吾「そう...なんだ...」
姉は、結局俺が5歳の頃に死んでしまった。享年12という短い人生だった。
でも、死因は病気じゃない。トラックに轢かれて死んだのだ。
歌穂「あ...」
俺の姉はそう言うと、何かに呼ばれたかのように、道路へと突っ込んでいく。
そして、そのまま道路を走っていたトラックに轢かれて死んでしまった。
その事故で、死亡したのは俺の姉。それと、一人の少年がいた。
そんな姉には、夢があった。それは「歌手になる」ことだ。志半ばで死んでしまった姉の夢を叶えるために、俺は歌手を目指した。俺には、持ち前の『歌唱力』があった。
それを使って、俺は中学2年生からyoutubeで歌ってみたを投稿し始めた。
俺は、高校1年生の時に、一人の女性と出会った。俺はその人に一目惚れした。
その人の名前は、梅染紅美。しっかりとした顔立ちで、白くキレイな四肢をしていたその少女に、俺は恋をしてしまった。
紅美「あの...けんにぃ...ですか?」
健吾「あ、はい。そうですけど...」
紅美「大ファンです!いつも、歌みたとか聞いてて...ヴェ◯ムとかすごい好きで...あの...」
健吾「そっか、ありがと」
俺と、紅美との馴れ初めはこんな感じだった。お互い第一印象は良かった。その日、連絡先も交換した。
健吾「ねぇ、一緒に遊びに行かない?」
紅美「え、あ、うん。いいよ!」
俺は紅美をデートに誘った。行く場所は、水族館だ。
紅美「なんで、私を水族館に誘ってくれたの?」
健吾「それは...紅美のことが好きだから...かな...」
紅美「え?」
健吾「魚は水の中じゃないと生きていない。そんな関係に、俺らもならないか?」
紅美は静かに頷く。俺は、紅美を抱きしめた。その日から、俺と紅美は付き合い始めた。
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紅美「ねぇ、健吾?」
俺は、昨日紅美を家に呼んで遊んでいたら、真剣な眼差しで話を始めた。
健吾「何?どうした?」
紅美「ねぇ...私達さ...別れない?」
一瞬、何を言われたかわからなかった。これまで、ずっと仲良くしていたのに急に「別れよう」なんて言われる。わからなかった。でも、理解した途端雷のような悲しみが、津波のように押し寄せてきた。
健吾「な...なんで?」
紅美「私ね、健吾の事が嫌いになったの。もう嫌い!」
健吾「そ...んな...嘘だろ...」
紅美「だから、ごめんね。私、帰るね。
紅美は俺の家を出て行ってしまった。俺は、振られたのだ。
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