第84話 無駄な同情
純介「健吾が欲しがってるものは慰め...同情してみるか」
ー午前9時8分、練習場所ー
紬「あ!健吾が来た!」
健吾「ごめん...遅れた...」
健吾が練習場所にやってくる。
智恵「ちょ、健吾?大丈夫?」
健吾「俺は...もう、生きてる価値なんて...ないんだ...」
そう言いながら、健吾は俺に縋る。
健吾「俺は...もう駄目なんだ!俺みたいな人間は...もう、死んじまったほうが...ましなんだ...」
栄「おいおい、何があったって言うんだよ?」
健吾「俺なんて...俺なんてもう...」
稜「ちゃんと、話をしようぜ。そうしないと、何もわからないよ。それに、俺らは悩み事に一緒に真摯に向き合ってやるから」
稜は健吾の背中を撫でる。
健吾「俺...俺はぁ...紅美にぃ...紅美に...振られたんだよぉ...」
純介「そうか...大変だったな...」
健吾「大変どころの話じゃないよ!もう、俺の生きる希望はないんだ!俺には紅美しかいないんだよ!」
純介「そうかそうか。お気の毒になぁ、同情するよ」
梨央「なんか、棒読み...」
梨央に棒読みだなんて言われたが、どうでもいい。
健吾「紅美に振られた俺は、何も残らないんだ!紅美じゃなきゃ、紅美じゃなきゃ駄目なんだ!でも、それなのに...それなのに!紅美は俺のことを{もう嫌い!}なんて言うんだよぉ!俺はあれほど愛していたのに!浮気なんて一度もしてないのに!他の女に色目なんか使ってないのに!どうして...どうしてだよ!」
健吾は俺の首を絞めてくる。健吾のその目は腫れており、泣いたことが確認できる。
稜「健吾、何すんだよ!」
健吾「殺して...殺してくれ!誰か、俺を殺してくれ!誰でもいい、殺してくれ!」
純介「それは無理だ。健吾」
健吾「どうして?俺なんかもう、生きてる価値はないんだ!」
純介「そんな訳ないだろう?俺たちは仲間だ!助け合わなくてどうする!振られたのは気の毒だよ!それに可哀想だとも思う!でも、どうか{死にたい}だなんて言わないでくれ!」
健吾「でも、紅美は俺のことを{もう嫌い!}って言うんだ!嫌われてちゃあ、意味がないんだよ!」
栄「なら、もう一回話をすればいいだろ?それで、駄目なら諦めちゃいなよ」
純介「───ッ!」
栄が禁句を言ってしまった。今の健吾に「別の人」を象徴する言葉は言ってはいけない。
健吾「無理だ!無理だ!無理だ!無理だ!そんなのは無理なんだよ!俺には...紅美しかいないんだよ!俺の全ては紅美だった!紅美がいないと意味が無いんだよ!俺の人生は、全部紅美の為にできてたんだよ!」
栄「え、あ、ごめん!」
健吾「そんな、無駄な同情ばかりしないでくれ!みんなも俺がいて迷惑だろう?」
智恵「なぁ、そんな訳ないじゃない!」
健吾は走って練習場所を出ていった。
***
グルグルグルグル。視界が回る。頭がキンキンと痛くなる。そして、少しの喪失感があり。




