第83話 死亡志願者
純介「上手く行った試しはないが、次は黙っていよう...」
ー午前9時8分、練習場所ー
紬「あ!健吾が来た!」
健吾「ごめん...遅れた...」
健吾が練習場所にやってくる。俺は少し後ろに下がった。
智恵「ちょ、健吾?大丈夫?」
健吾「俺は...もう、生きてる価値なんて...ないんだ...」
そう言いながら、健吾は栄に縋る。
健吾「俺は...もう駄目なんだ!俺みたいな人間は...もう、死んじまったほうが...ましなんだ...」
栄「おいおい、何があったって言うんだよ?」
健吾「俺なんて...俺なんてもう...」
稜「ちゃんと、話をしようぜ。そうしないと、何もわからないよ。それに、俺らは悩み事に一緒に真摯に向き合ってやるから」
稜は健吾の背中を撫でる。
健吾「俺...俺はぁ...紅美にぃ...紅美に...振られたんだよぉ...」
美緒「クミって言うのは...健吾の彼女?」
健吾「そう...そうだよぉ...紅美は、俺の大切な大切な彼女だったんだよぉ...」
栄「大丈夫、大丈夫。落ち着いて。別れたんなら、新しい恋を始めればいいじゃねぇか」
健吾「無理だ!無理だ!無理だ!無理だ!そんなのは無理なんだよ!俺には...紅美しかいないんだよ!俺の全ては紅美だった!紅美がいないと意味が無いんだよ!俺の人生は、全部紅美の為にできてたんだよ!」
健吾は喘ぎながら、語る。
健吾「紅美に振られた俺は、何も残らないんだ!紅美じゃなきゃ、紅美じゃなきゃ駄目なんだ!でも、それなのに...それなのに!紅美は俺のことを{もう嫌い!}なんて言うんだよぉ!俺はあれほど愛していたのに!浮気なんて一度もしてないのに!他の女に色目なんか使ってないのに!どうして...どうしてだよ!」
健吾は栄の首を絞める。驚いた栄は、必死に抵抗する。
稜「健吾、何すんだよ!」
健吾「殺して...殺してくれ!誰か、俺を殺してくれ!誰でもいい、殺してくれ!」
智恵「待って待って!なんで、そうなるの?」
健吾「智恵...智恵には心から愛した人ができたことはあるか?」
智恵「それは...」
智恵は返事ができない。彼氏ができたことくらいあると思うが、全て冷めきってしまっているのだろう。
否、きっと全て逃げられたのだろう。智恵の愛も重かった。
健吾「俺は愛していたんだ!紅美を!紅美を!紅美を!なのに...なんで!なんでだよ!」
紬や美緒・梨央は会話に入ることすら出来ていない。健吾の豹変ぶりに体が動かないのだ。
健吾「もう、俺は生きていけないんだ!紅美がいないと駄目なんだよぉ!」
智恵「私だって...私だって心から愛した人はいる...2人。生涯で2人いたわ!でも、中学2年生と、高校1年生の時よ!でも...でも!逃げられた!私だって逃げられたのよ!健吾ばっかりが辛い思いをしていると思わないで!」
健吾「そんなの...そんなのわかってるよ!でも、そんな言い方しなくてもいいじゃないか!俺を慰めてくれてもいいじゃないかぁ!」
健吾は走って練習場所を出ていく。案の定、失敗だ。だが、道筋は見えた。
***
グルグルグルグル。視界が回る。頭がキンキンと痛くなる。そして、少しの喪失感があり。




