第74話 西森純介
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俺にとって、友情や友達なんてものはくだらないものだと思っていた。
俺は容姿端麗で、作曲の才能もある。運動神経も悪くないし成績だって悪いわけじゃない。
基本的に、誰かに手を借りなくても何かを行うことはできた。自分の欠点としては、おでこにある痣くらいだった。俺にとってはそれだけが唯一のコンプレックスだった。
俺はこの痣が嫌いだ。この痣さえ無ければもっと綺麗だったのに。痣さえ無ければ───
信用できるのは、父さんの圭佑と妹の彰だけだった。母親は俺が3歳の頃に死んでしまったらしい。その時のことは、俺には記憶にない。覚えていないのだ。母は国民的女優だった。
それに、父親も俳優兼作曲家という優れた血筋だ。俺はそれが当たり前だと思っていた。
母親が死んでから、ここまで父さんが一人で育ててくれた。その事には感謝している。
父さんは今は芸能界を引退している。俺の存在、そう「西森純介」という名は知られているが、西森純介
───俺が、「N.J」であることは知られていない。それは父さんの俺に対する気遣いだった。
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俺は小学校・中学校と友達が多い訳ではなかった。教室では一人で本を読んでいることが多かったし、自ら誰かに話しかけるなんてことはしなかった。
そして、音楽に興味を持ち始めた中学3年生の時に、作曲家を目指し始め、父さんの作曲道具を借りて曲作りを始めるようになった。高校は通信制のものにして、「N.J」という名前で曲を投稿するようになり、人気を博すこととなった。
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俺が持っているのは『集中力』だ。俺は最初からそれ以外何も持ち合わせていなかった。
顔や頭脳なんてものは、基本父と母から受け継いだものだ。なら、七光りと言っても過言ではない。
───否、父さんや母さんがこんなことを聞いたら否定するだろう。
「お前は俺/私たちの息子だ。天下一品で唯我独尊の天上天下のナンバーワンだ。だって、俺/私と母さん/父さんをかけ合わせたのよ?俺/私たちも優れてるに決まってるわ。{蛙の子は蛙}って言うけど、俺/私たちは蛙じゃない。俺/私たちは蝶なのよ」
蛙が蝶よりも優れてるかは知らないが、俺のことを鼓舞してくれるはずだ。
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純介「もうすぐ...作り終わる...急がないと...栄の為に...いや、みんなの為に!俺たちの為に!」
思えば、救われたのは俺だった。俺が救っていたのではない。俺はみんなに救われていたのだ。友達の作らなかった俺に、これだけの幸せを分け与えてくれた。絶え間ない喜びを与えてくれた。俺ができることをしなければ。
純介「俺は西森純介...bluerulerの作曲担当!」
俺はコンピュータをどけて、ペンを走らせる。俺の直感は、「俺ら」を描けと言っている。
俺の直感は、「個々じゃ弱いけれど、8人合わせれば最強な俺ら」を描けと言っている。
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仮面の男「純介君、成長したねぇ?」
社長「私も嬉しい限りだよ」
仮面の男「秘書には全てを話さなくていいと思うよ。見てて面白いし」
津田伸子「あはは、すいませんね。私の秘書が...」
本当の社長である津田伸子は、正体不明の偽物の社長(ここでは表記上「社長」)に謝る。
社長「いやいや、こちらも願いを叶えて貰っているんだから」
仮面の男「三者三様。願いを叶えるために、残りの20日も頑張っていきましょう!」
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