【Happy Birthday!!】斉藤紬誕生日記念小話in2022
紬、誕生日おめでとう。
少し悲しくなります。
斉藤紬───私は、昔から可愛いものが好きだった。
そして、私の親は私に関心がなかった。きっと、死んでも───
***
私の誕生日は客観的に見れば至って酷いものだった。
でも、私は本来どのような誕生日を過ごしているのかを知らなかったので、それを当たり前のものだと思って小学3年生になるまで生きていた。
一般的な家庭では、誕生日にケーキを食べると言うのだが、私は誕生日にケーキなんて食べたことがなかったどころか、誕生日プレゼントを貰ったことすらなかった。
誕生日なんて、いつもと特に変わらない日だったので、私は誕生日を覚えていなかった。
紬「お母さん!なんで、私には誕生日プレゼントをくれないの?」
母「アンタが欲しがらなかったからよ」
激昂する私に、母は冷淡な態度で返す。
紬「そんな、あるなんて知らなかったのに!」
母「勉強不足ね」
紬「なら、今年は今年はくれるよね?」
母「物によるけど、何が欲しいの?」
紬「じゃ...じゃあ、ケーキが食べたい...大きなケーキじゃなくていいから」
母「はいはい、覚えてたら買っておくね」
母親はそう言うと、目をスマホに戻してしまった。否、最初から最後までスマホを見ていた。
でも、誕生日にケーキが食べられると知って私は嬉しかった。
***
9月24日。小学生3年生の時の誕生日が来た。誕生日を祝うというのは今年で初めてだ。この9年、自分の誕生日も知らなかった私は少し嬉しい感じがする。
紬「お母さん、まだかなぁ〜!」
私は仕事から帰ってくる母親が帰ってくるのを一人で家で待った。父親は、私が小さい時からどこか遠くで一人で暮らしているらしい。お金は毎月送ってくれるのだ。きっと、仲良しなのだろう。
ー1時間後ー
紬「まだかなぁ〜!」
ー1時間後ー
紬「まだかなぁ〜」
ー1時間後ー
紬「まだかなぁ〜...」
ー1時間後ー
紬「まだかな...」
ー1時間後ー
紬「まだ...かな...」
結局、その日母親が帰ることはなかった。朝になって私が起きると母親が買ってきたであろうぐちゃぐちゃになったコンビニの小さな小さなケーキが置いてあった。
***
小学4年生、私は誕生日に「一緒にケーキを食べる」ことを望んだ。
母「覚えてたらね」
母親はスマホを見続けたままだった。
***
9月24日。
母親は、ケーキを買って帰ってきた。
母「一緒に食べるんでしょ。仕事早めにあがってきたよ」
紬「やったぁ!お母さん、大好き!」
私はぴょこぴょこ飛び跳ねて喜ぶ。すると、母親は舌打ちした。
母「食べるなら、早く食べましょう」
私と母はコンビニケーキを食べた。
紬「このケーキ、美味しいね!」
母「・・・」
紬「買ってきてくれてありがとう!」
母「・・・」
母は片手でスマホを見ながらケーキを食べていた。私が話しかけても返事はしてくれなかった。
***
小学5年生。私は昨年ケーキを食べたので今年は「ネイル道具」を頼んだ。
すると、母親のお古のネイル道具をくれた。すぐ、中身が空になってしまった。
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小学6年生。私は「ヘアセット道具」を頼んだ。
すると、母親は髪ゴムを一つくれた。
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中学1年生。この年から、私はyoutubeを始めていた。誕生日に生配信を行うと、私のファンの人たちが、たくさんお金をくれた。だから、私は母親に何も求めなかった。母親は、私が貰ったお金の半分を奪っていった。
***
そして、今年も誕生日の年がやってきた。
紬「ねぇ、誕生日!もうすぐ私の誕生日だよ!」
純介「あぁ、そうだな」
紬「サプライズ!ねぇ、サプライズにしてよ!」
智恵「自分でサプライズを望んじゃ、サプライズにならないでしょうよ?」
紬「あ!そっか!」
純介「別に、俺の時にサプライズをしてくれたから」
健吾「もう、俺冷蔵庫の中に入らないからな!」
純介「あれは、マジでビビるからやめろ」
梨央「紬は何か欲しいものあるの?」
紬「うぅん...特に無いかな...」
稜「え、なんで?」
紬「だって、みんなと一緒にいることが一番の幸せだから!」
純介「紬ェ...」
純介は私の頭を撫でる。なんだか、心が温かくなる。
梨央「あ、純介セクハラ!」
純介「うるせぇ!」
智恵「私も紬の頭撫でるぅー!」
私は智恵にも頭を撫でられる。
***
そして、誕生日。
全員「ハッピーバースデー!紬!」
”パァーン”
クラッカーが純介の家の中に鳴り響く。私の家ではなく、純介の家だ。
紬「みんな、ありがとう!」
栄「おい、なんで泣いてるんだよ!」
紬「へ?」
私の目からは涙が溢れていた。嬉しかった。嬉しかったのだ。なのに、涙がどんどん流れてくる。
紬「なんで...泣いてるんだろ...」
私は目を拭う。涙を拭いた。母親以外の誰かに、対面で誕生日を祝って貰うのは初めてだ。それに、こんなに大勢と囲んでご飯を食べるのだってグループに入るまではあり得なかった。あっても、給食だ。
純介「笑え、紬!今日はお前の誕生日だ!」
紬「うん!」
私はみんなが大好きだ。ずっと、ずっと、ずーっと大好きだ。




