第41話 望んでいない殺人
栄の口から思いがけない言葉が発せられる。
純介「嘘...だろ?」
栄「嘘じゃない!息を...してないんだ!」
栄が哀哭しながら、こちらを見てくる。
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グルグルグルグル。視界が回る。頭がキンキンと痛くなる。そして、少しの喪失感があり。
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山田稜───俺は、生まれつき体が弱かった。小さい頃は、よく熱を出したらしく両親を困らせていた。それに加えて、体調が優れないことも多々あり、ずっと入院と退院を繰り返すような生活をしていた。そのせいで、俺は小学校にはまともに通えなかった。勉強は、病院で週に1度先生が届けてくれる「まとめのプリント」を使って行っていた。
俺には「思い出」も「友情」も持っていなかったのだが、「夢」があった。一つだけのこんな体じゃ叶えられないような夢だ。それは「アイドルになること」。
俺が入院している時、テレビではアイドルが輝いていた。俺とは対極のような存在のアイドルに憧れ、励まされていた。そして、いつの日かそんなアイドルになりたいと思い、願うようになった。中学校は公立の中学に進学したが、まともに通えることはなかった。
だが、中学3年生の春になると、少しずつ体調は回復し保健室登校なら、出来るようになった。そこで、俺は運命を変えてくれる相棒、栄と出会った。
栄は、俺にとって初めて出来た友達だった。きっと、優しいこの性格なら栄には友達がたくさんいたのだろう。だけど、俺の話をしっかり聞いてくれた。俺の話を聞いてくれる唯一の同年代の「仲間」だった。
栄「なぁ、稜?」
稜「何?」
栄「稜の夢は何だ?」
稜「俺の夢?」
栄「あぁ、稜の夢。あるか?」
稜「あるけど...きっと、栄は笑うよ」
栄「笑わないよ」
稜「絶対笑う!家族だって、笑ったんだよ?どうせ、こんな体じゃ叶えられないよ...」
栄「他人の夢を笑うような奴に、自分の夢は叶えられない!そうだろ?だから、俺はお前の夢を笑わないし、誰にもお前の夢を笑わせない!」
俺は、栄の言葉に励まされた。きっと、栄なら俺の夢を真摯に受け止めてくれると思った。
俺の妄想に、付き合ってくれると思った。
稜「俺の夢はアイドルになること。ステージに立って、スポットライトを浴びて!カッコよくない?」
栄「あっはははははは!」
稜「あ、栄!笑わないって!」
栄「稜!叶えようぜ!その夢!俺と一緒に!」
俺は栄に手を差し伸べられる。少し戸惑ったが俺は栄の手を握った。
───ここからだった。俺の運命が変わっていったのは。
***
俺は、初めて人を殺した。怒りに身を任せていたものの、その拳に感覚は残っている。
そして、後1時間もしない内に、俺は栄に痣について触れられてしまう。
智恵「純介!どうしたの?そんな顔をして?」
純介「あ、あぁ...ちょっとね...」
俺は稜の方を見る。俺は、さっき稜を殺してしまった。この手で。




