第37話 勇者純介
ー7月3日午前9時、練習場所ー
俺は梨央がダンスレッスンで怒られ、智恵を説得し終える。
時刻は9時23分。同じように、梨央と美緒に連絡を入れる。
純介「これで、最後のループにしてやるよ!」
俺は手際よく自転車を盗み、最短ルートで紬のいるT字路まで自転車を漕ぎ進める。
ー9時31分7秒、T字路ー
俺はいつものように紬が誰かに絡まれているのを確認する。
俺は紬のところに走───
らない。
純介「紬が落とされるのを止められないのなら、俺は車を止める!」
”ポチィィィィ”
俺は信号のボタンを押す。反対側の歩行者信号が点滅し始めた。俺は急いで紬の方へ自転車を漕ぎ進める。これで───
”ブゥゥン”
純介「なっ...」
俺は浅はかだった。車道の信号はもう赤になっていた。だが、黄色になっても無理矢理渡ろうとする人はいる。青い車は止まっただろうか。
否、青い車は、信号を見て加速した。
純介「ここまでしても助けられないのかよ!なら...どうすれば...」
否、ここで諦めてはいけない。俺は───
紬「純介?」
”ガシャァン”
俺は自転車から飛び降りた。自転車はそのまま車道に出て車道の真ん中で横転した。
”キキィィー”
”ファーン”
この瞬間、紬は太った男によって車道に押し出される。
だが、車は自転車のギリギリで止まった。
純介「俺は青い車の人が、止まろうとしていたことくらい知ってんだよ!」
何度、クラクションの音を聞いただろうか。俺は紬の手を掴む。
太った男「クッ!逃げるぞ!橋本!」
橋本と呼ばれた男と、太った男は走って逃げていった。
純介「なっ!あいつら!」
紬「純介君!追わないで!」
純介「え?」
紬「きっと、ここで追ったら...純介君が殺されちゃう!」
純介「でも...」
紬「怖...かったよ...私を一人に...しないで...」
紬の目からは涙が溢れる。
運転手「あの...大丈夫そうですか?」
青い車の運転手が車から出てきて、俺らに声をかける。
純介「はい、大丈夫そうです!あの、車は...」
運転手「本当にギリギリでしたよ!自転車!でも、自転車が無ければ僕は彼女を轢いていたと思いました...」
純介「そう...ですね...」
運転手「あなたは、英雄ですよ。そして、勇者です」
俺は紬を見送った後、練習場所に自転車を返しに行った。これで一件落着だ。




