第29話 怒りじゃない、憂いだ
純介「だから、それは昨日梨央が忙しかったからだって美緒も言ってただろ!」
智恵「言ってたけど!!…梨央を見てると昔の自分を見てるみたいでムカつく...」
純介「え、つまりただの八つ当たりってこと?」
智恵「ただの、って言うな!私にとっては相当なことだったんだよ!」
智恵が持っていた感情は怒りなどではなかった。憂いだ。自分に対する内患だ。
純介「…悪かった。でもな、今の智恵は昔の智恵とは違うし、梨央も昔の智恵とは違う。八つ当たりなんてするな!」
智恵「...うん」
純介「なぁ、明日、梨央に謝ってみろよ。きっと、梨央も辛い思いしてると思うぞ!」
智恵「そう、だね...」
俺は急いで時計を見る。時刻は9時23分。間に合う。別の道に行けば秘書と会わない。
純介「梨央に、ダンスを教えてあげてくれ。怒られるのを見ると少し悲しくなるから」
俺はこう、美緒にLINEを送った。そして、こう返信が来る。
美緒「わかってるよ。私だってあれだけ怒られる梨央を見るのは辛いから」
俺はいつもとは違った道で駅まで向かう。スマホの地図を見ながら。
***
グルグルグルグル。視界が回る。頭がキンキンと痛くなる。そして、少しの喪失感があり。
純介「...え?」
何故だ。何故ループしたのだ。秘書はこれまでの行動上、俺以外は殺さないはずだ。
俺は時計を見る。時刻は午前8時34分だ。また、ここにループしている。
純介「なっ...なんで!なんでループしたんだ!おかしい...おかしい!おかしい!」
秘書は俺以外を殺さない。俺を「善意」で殺そうとしてくる。智恵は成り行き上仕方なく刺されたのだ。
純介「他の...誰かが?」
秘書以外の誰かが俺以外のグループメンバーを狙っているというのか。いや、そうとしか考えられない。もしくは、梨央がダンスを嫌になって辞めた可能性がある。
純介「俺が動かなければ...確実にループする...一体、誰が?」
ー7月3日午前9時、練習場所ー
俺は梨央がダンスレッスンで怒られ、智恵を説得し終える。ここまでは10回も経験した。
時刻は9時23分。まずは、梨央と美緒に連絡を入れる。
純介「梨央に、ダンスを教えてあげてくれ。怒られるのを見ると少し悲しくなるから」
美緒「わかってるよ。私だってあれだけ怒られる梨央を見るのは辛いから」
純介「もし仮に、梨央がグループを辞めたいって言っても止めてくれ」
美緒「わかったし、梨央にやめる気はないよ。ダンスを教えるよう梨央からも頼まれた」
美緒と梨央は違うだろう。じゃあ、誰なんだ。誰がループの元凶なん───
秘書「やぁ、純介君...会いたかったよ!」
純介「なっ...まずい!」
俺は急いで反対方向に逃げる。スマホを見ていたら、いつもの道を歩いてしまった。
純介「まずい...捕まったら路地裏に連れて行かれる...」
人気のない所に行ったら確実に刺されてしまう。どこがいいだろうか。
純介「人気があって、確実に刺されないところは...ここだぁ!」
俺はMの看板が立っているハンバーガーショップに入る。
純介「ここなら...安全だよ...」
稜「お、純介じゃない?」
栄「あ、本当だ!おーい!純介!」
そこには栄と稜がいた。俺は2人の席に移動する。
絶望の始まり。




