第24話 話をする機会
智恵「...わかった」
智恵は話すことを承諾してくれた。これが、正解だ。
純介「自分が出来て相手が出来なくてもそれにイライラして怒っちゃ行けない。人には出来不出来がある。ほら、智恵にだって、出来ないこといっぱいあるだろ?例えば、ダンスは出来るかもしれないけど歌は歌えないかもしれない...人間っていうものは多種多様なんだ」
智恵「それは...わかってるよ...」
純介「なんで2日もあんなにキツい言い方したんだ?」
智恵「…だって、できない梨央が悪いじゃん」
純介「はぁ?なんだよそれ?さっきの俺の話聞いてたか?」
智恵「えぇ、聞いてたわよ...人には出来る事と出来ない事があるんでしょ...その位、わかってるわよ...」
純介「あぁ...俺、お前が何が苦手かわかったわ!」
智恵「何?」
純介「お前、人に物を教えるの、苦手だろ?」
はらり。ハラリ。はらはらり。智恵の目から涙が零れ落ちる。
智恵「え...」
純介「え、智恵...ごめん...」
智恵「謝らないでよ...私、物を教えるのは下手なの...わかってるよ!語彙力もさぁ...あんまりないし...すぐに怒っちゃうし...私、自分が大嫌いなの...言葉にすることが苦手な自分が...自分だって苦手なことがあるのに、人の悪い所ばかり責め立ててしまう自分が大嫌いなの...私ね...誰かに認めて欲しかったの!このグループに入れば...もしかしたら、誰かが私のことを認めてくれるかも...そう、思ってたの!私、別に{私だけを見て}だとか、{私だけを愛し続けて}なんて、言わない!ただ、私っていう存在を概念を認めて欲しかったの...」
純介「そうか...ごめんな...お前のことを知らずに...」
智恵はゆっくりと、涙を流しつつ俺に話してくれた。
純介「大丈夫、俺は...お前に教わったんだ...」
智恵「な...何を?」
純介「ダンスを...だ!」
智恵「ダンス?私...梨央にしか教えてないよ?」
純介「大丈夫、お前からしっかり教わったよ!」
智恵「私の言葉で...教えられたの?」
純介「教わったのは言葉じゃない...動きだ!」
あの時、撮らせてもらった動画はいつまでも頭の中で再生できるほどに目を通した。
何十、何千、何万回も動画を再生し、ダンスを覚えた。
純介「俺はお前に...感謝をしたかった!ありがとう!」
”ポタッ”
智恵の目からより一層大きな涙が、頬を通って洋服の上に落ち、シミを作っている。
純介「智恵...ありがとう...もう俺は、君を泣かせない...」
智恵「な...それって告白?」
純介「ちっ...違う!違うよ!」
智恵「ハハッ...じゃあ、帰ろうか!」
純介「うん、そうしよう!」
俺たちが練習場所を出る、その時だった。
”ザクッ”
智恵「んぁ...」
智恵が、季節外れの黒いコートを着て、覆面を被った男に胸をナイフで刺された。




