第16話 踊り続けろ舞い続けろ
俺は智恵が踊る動画を撮る。
純介「あ、ありがとう!」
智恵「じゃ、最初から教えるから!ちゃんと覚えてよ?いいね?」
純介「はい!」
俺は智恵にみっちりダンスを教えられる。そして、夜7時に帰宅した。
純介「家でも練習しないとな...」
俺は撮っておいた智恵のダンスを見ながら練習をする。ひたすら、ただただひたすら。
手を止めるな。足を止めるな。踊り続けろ。まだ俺はスタート地点にすら立てていない。
努力をし続けろ。舞い続けろ。智恵に教えてもらった全てを体に叩きつけろ。
純介「いける!俺ならいけるぞぉ!」
俺は自分で自分を鼓舞する。そして、夜の10時だ。
彰「お兄ちゃん...まだ踊ってる...」
妹の彰の声も耳に入らず、俺は踊り続ける。
***
人間という生物は生まれながらにして、一つだけ突出した能力が授けられる。
自分の突出した人物に気づかない人間も多いのだが、純介は気づいていた。
健吾は『歌唱力』・智恵は『リズム感覚』・美緒は『運動神経の鋭敏性』だ。
そして、純介が生まれながらにして持っていたのは『集中力』だ。
純介は集中力以外何も持ち合わせていなかった。今の音楽の才能を築いたのも努力のお陰だった。だが、みんなはその内なる努力を知らない。
***
踊って、舞って、演舞して、舞踏して、舞蹈して。舞って舞って舞って舞って舞って舞い続けろ。踊って踊って踊って踊って踊って踊り続けろ。俺ができるのは努力だけだ。
体力の限界さえも忘れさせる程の集中力。時間を忘れさせる程の集中力。時刻は現在7月3日の午前1時だ。夕飯も食べずに純介は家に帰ってからずっと踊り続けている。
純介「んぁ...」
”バタッ”
俺は床に倒れる。受け身も取れずに、少し胸部に痛みを感じてから床の冷たさが頬を伝って感じられる。否、床の冷たさじゃない。汗で体が冷えていたのだ。
純介「時間は...夜の1時?嘘だろ?」
俺は時計を見て驚く。6時間も踊っていたのか。まだ1時間ほどしか経っていない感覚だ。
純介「立ち上が...れない...」
他人より、突出した集中力によって精神は疲労していないが、肉体は別だ。体は疲労している。ヘロヘロだ。体が休憩を欲しすぎるあまり運動をやめた。
純介「風呂...入らないと...でも...眠い...」
純介はそのまま床で眠りこけた。そして、目を覚ましたのは───
純介「なぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は目が覚めるとすぐに時計を見る。時刻は8月3日午前10時15分。
純介「やっべぇ!遅刻だ!1時間以上も...あれ、なんか冷静になってきた...」
ーーー
一方こちらは練習場所。
智恵「純介、サボったな!ダンスが一番出来てないのはアイツなのに!」
智恵は憤慨する。
紬「まだ、純介君は来ないって決まった訳じゃないんだし!」
健吾「LINEには連絡、来てなかったぞ?」
智恵「何なのアイツ?自分が踊れてないの理解してないの?」




