第116話 死
全員「え...」
沈黙。
稜「紅美が死んだって...どういう事だよ!」
健吾「そのまんまだよ。死んじゃったの。これ、見て」
健吾はしわくちゃになり、少し濡れてしみになっている紙を取り出した。そこには、文字が書かれていた。
栄「これは...」
健吾「遺書だよ。紅美が書いた遺書。紅美は、肝臓がんで死んじゃったんだ」
再度、沈黙。健吾が一呼吸入れる。そして───
健吾「健吾へ。この手紙を私の両親から渡された時、もう私はこの世にいないでしょう。なんて、こんなよくある遺書の───
ーーー
健吾へ。
この手紙を私の両親から渡された時、もう私はこの世にいないでしょう。なんて、こんなよくある遺書の書き始めをしてみました。
でも、実際最初になんて書けばいいかわからなかったから、これで。
私は今、この手紙を病院で書いてます。健吾と別れた後、すぐ病院行き。って、入院することになったから、早急に話をすることになっちゃったんだけどね。
健吾に伝えたいことがあります。ごめんね。
健吾のこと、大好きなのに、嘘ついちゃった。健吾のことが嫌いって。
ごめんね、傷つけちゃったよね。でも、私にはそうするしかなかった。
私は、肝臓がんだってこと知ってた。もう、末期だってことも。
でも、健吾のことを悲しませたくなかった。健吾のことだから、付き合ってたら私が死んでも他の女の人と付き合わず、そのまま生涯独身で死んじゃいそうだったから、嘘ついてまで、別れたの。って、こんな事を遺書に書いたら失敗だね。
健吾が、よりを戻そうって来た時、凄く嬉しかった。でも、そんな健吾に嘘を付く自分のことが嫌いになった。騙し続けるのが嫌になったから遺書で全部ネタばらし。
健吾が私のことを大好きで、私が自分自身のことを虐めると怒ること位わかってるから、自分を責めるのはこのくらいにするね。健吾、ありがとう。
こんな私を愛してくれてありがとう。取り柄なんか無かったのに、好きでいてくれてありがとう。でも、健吾が死ぬ時は、別の女の人と結婚してから来てね。そうしないと、私が嘘ついた意味なくなっちゃうんだから。
約束だからね。誕生日の時に健吾がくれたハンカチだったり、初デートで行った水族館。健吾との思い出は一つも忘れてないから、大丈夫。今まであり
ーーー
健吾がそこで一息つく。
健吾「ここで、手紙が終わってる。紅美の母親から、紅美はこの手紙を病院で書き途中のまま死んじゃったんだってさ。昨日の朝7時に、天国に飛び立ったって言えばいいのかな?享年17」
俺の目から、いつの間にか涙が溢れていた。話どころか、顔すら見たことがない人の死を聞いて泣いている。周りを見ると、みんな泣いていた。健吾以外の6人がだ。
純介「ごめん...」
俺は呟く。紅美が死んでもループはしない。俺達8人がグループを組むのに、関係ないからだ。俺の妹は、救えた。でも、病気で死んだとなればどう足掻いても救えない。
健吾「俺、このグループで頑張ることにするよ。紅美のために」
健吾はそう、呟いた。明日は、MVの撮影だ。
時間は無慈悲にも流れていく。
戻ることはできない。ただ、進むしか───




