第107話 廃人
仮面の男「おかえりなさい。純介君。罰は、どうだったかな?」
俺は、仮面の男のいる空間に戻ってくる。
純介「ぁ...」
声が出ない。喋れない。喋れないのだ。
仮面の男「うんうん、しっかり罰は与えられているようだね。頭で考える事はできるけど、声は出せないし動けない。恐怖が体を支配しているのさ。君は返事もできないようだし、今から私が駄弁する時間を少々取るとするか」
仮面の男は、一人喋っている。まぁ、この空間には俺と2人きりなのでしょうがないが。
仮面の男「さっきまでの罰は、君がもしかしたら歩んでいた可能性のある世界。すなわち、別の世界線さ。カッコよく言えば、パラレルワールドだね。そこで、君の精神を破壊し、一時だけ喋ることもできない廃人になってもらったのだよ。どうだった?死の感想は。慣れるもんじゃないだろう?普通、人が死ぬのは一度だけだからね」
俺は先程まで行われていた死を思い出す。思い出すだけで、吐き気を催した。
仮面の男「君を追い詰めるために、君だけじゃなく君の仲間たちにも死んでもらったよ。いやぁ...悪かったと思ってる。でもまぁ、しょうがないよね。それも、罰なんだもの」
仮面の男は俺の周りをぐるぐると歩く。
仮面の男「まぁ、純介君は私に、大層ご立腹していることだろう。でも、それはしょうがないことだったんだ。君の今後の為には重要なことだったんだ」
純介「どう...いう...ことだ...」
仮面の男「おっと、喋れるようになってきたか。まぁ、いい。話を続けよう。今後の君に大切な物───すなわち、障害を乗り越えることさ。君はこれまでに数々の困難にぶつかってきた。でも、最後の最後にどう足掻いても壊せない壁ができたって訳さ。そこで、君は70回試行錯誤しても無駄だった。智恵は連れ攫われたのさ。私も、それは納得できないし、社長だって納得できない。だから、君に託そうと思ったんだよ」
純介「何を...だよ...」
仮面の男「さっきの死のループをだよ」
純介「...は?」
仮面の男「君が、先程のように死のループを体験させたいと思った相手の前で能力を使うのさ。ただ、それだけ。相手を廃人にさせてあげよう。無理にでも心を折るのさ」
純介「そんなの...いいのかよ?」
仮面の男「私だって嫌さ。でも、妥協点。君じゃないとアイドルグループは作れない。そう見込んでいるのさ。だから、君に手伝ってもらうよ」
純介「でも...」
仮面の男「君もきっと、死ぬほど憎むだろうね。あ、文字通り死ぬなんて展開じゃないから大丈夫だよ」
純介「そう...なのか?」
仮面の男「あぁ、そうさ。って、忘れてた!死のループの誓約を付けないと駄目じゃないか!えっと...そうだな...条件はこうしよう」
仮面の男は次の条件を突きつけた。
1つ目 使用は一度のみ。
2つ目 使用後は、ループが行われなくなる。
仮面の男「うんうん、これでいいね。これが最大の妥協だ。これ以上は、曲げられない」
純介「ループが行われないって?」
仮面の男「そのまんまさ、ループは死のループを使えば行われなくなる。───って、死のループって呼び方がダサいね。そうだな...デウス・エクス・マキナなんて呼ぶのはどうだろうか?うん、決定!じゃあ、デウス・エクス・マキナって言えば能力の使用をしようか?」




