第96話 地雷
健吾を慰めることに成功した。健吾が望んでいたのは、同情や励ましではない。「愛」だ。
「愛」を欲していたのだ。俺が紬に助けられた時のように、「愛」を欲していたのだ。
そして、午後3時40分。美玲さんが到着する。
美玲「みんなぁ、こんにちはぁ〜!」
智恵「あ、美玲さん。こんにちは」
美緒「あ、お姉ちゃんやっと来た!」
美玲「ごめんなさいね、仕事でどうしても遅くなっちゃってぇ〜」
美玲さんは、その長い髪をたくし上げる。
美玲「あ、今日は健吾君来てるのねぇ!てことは、彼女さんとはよりを戻せたのかしら?」
健吾「───ッ!」
美玲さんが、地雷を踏む。今、一番触れてはいけない爆弾に触れてしまった。
智恵「ちょ、」
美緒「ちょっとお姉ちゃん!健吾にそんな事聞くのやめてあげてよ!」
真っ先に反応したのは、健吾ではなく美緒だった。
美玲「でも、見た感じ元気そうだし...」
美緒「健吾は、彼女さんに振られたの!煽るようなこと言わないでよ!」
美玲「そんなの...言われてないものぉ〜、気付かないわよぉ〜!」
美玲さんは、美緒の肩を押す。すると、美緒は後ろによろけて転んでしまった。
梨央「美緒?大丈夫?」
美緒「お姉ちゃん...暴力振るったでしょ!」
智恵「ちょっと、やめてよ喧嘩なんか...」
”パシンッ”
智恵が2人の間に入り、仲介しようとすると智恵は、美緒に頬を叩かれた。
智恵「え...」
美緒「智恵には関係ないでしょ!これは、私達姉妹の喧嘩なの!」
智恵「でも...喧嘩は...」
美緒「何?智恵はお姉ちゃんの味方をするの?同じグループなのに?」
智恵「いや...違...」
美緒「会話がこじれるから入ってこないでよ!」
智恵「ご...ごめん...」
智恵は見るからに元気を無くしてしまう。励ましてやろうかと思ったが、紬が智恵の方に行ったから大丈夫だろう。きっと、俺が止めても智恵の二の舞になるだけだ。
美緒「で、なんで暴力振るったの?」
美玲「そんな人聞き悪い言い方しないでよぉ〜、いつもと変わらないじゃなーい」
美緒「でも、暴力は暴力だよ!いつもお姉ちゃんは私に暴力を振るうんだから!」
美玲「話し合いをしたいんでしょう?なら、そんなに怒らないのよ。冷静にならないと会話できないわぁ」
美緒「冷静じゃないのは、お姉ちゃんでしょ!梨央、行こう!」
梨央「え?あ...うん...」
美緒は、梨央を連れて練習場所を出ていった。ループは起こらない。
美玲「冷静じゃないのは、美緒のほうじゃない...」
美玲さんは目を細めながら、ため息をついて床に座る。
栄「きょ...今日のレッスンはこれで終わりにする?」
健吾「そうだな。ごめん...俺のせいで...」
稜「健吾は悪くないだろ?」
その日、俺らは解散となった。その日の夜のことだ。




