第百三十一話 アマゾンインク
山中幸盛は「北斗」令和二年六月号で『第百十六話 妻は宇宙人のキンドル版』を発表した。2008年3月に千三百円(税別)で鳥影社から自費出版した『妻は宇宙人』を、四万円以下の経費で電子書籍化したという話である。
そして、18歳未満購入禁止のアダルト指定に引っかかる恐れのある箇所を削除したので、気の抜けたビールのごとく変貌を遂げたが、健全たる名著(?)となった。
それから時は過ぎ、今、アマゾンで紙本の『妻は宇宙人』を検索しても新品はなく、中古本も3500円の一点しか販売されていない。電子書籍の『妻は宇宙人kindle版』がメインで、kindle unlimited会員は追加料金なし(¥0)で読み放題。または非会員は税込み定価660円でダウンロードして購入することができる。
この電子書籍の奥付を見ると、発行日は2020年3月31日、著者は山中幸盛、制作は株式会社CLAP、ⒸYukimori Yamanaka+CLAPとなっているが、CLAPとメールでやり取りする中で、アマゾンのkindleのみの出版とし、ロイヤリティ(印税)は欲を出して最高額の70%を希望した。
この本が売れて印税がドバドバ入るなんてことは夢にも思わないが、一往、印税の振込先が必要というので百五銀行の口座番号を送ったら、
「すみません、kindleの登録上の仕様変更がありました。百五銀行ではkindleに登録できず、下記いずれかである必要があるようです。みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、ジャパンネット銀行、ソニー銀行、楽天銀行、新生銀行、SMBC信託銀行、あおぞら銀行」
とメールが来たので、急いで近鉄蟹江駅前にある三菱UFJ銀行まで通帳を作りに行った。もちろん、担当してくれた眉目秀麗な女性銀行員に対し、振込詐欺に悪用すると疑われたくないので、
「アマゾンから電子書籍を出したもんで、印税がガバガバ入るかもしれんもんで」
と、苦笑しながら軽口を叩くことは忘れない。
ところが、この印税専用の三菱UFJ銀行の通帳に、なんと『アマゾンインク』から六回お金が振り込まれてきた。インク(inc.)とは株式会社のことらしい。
令和2年6月29日に635円
令和2年7月29日に22円
令和2年8月31日に19円
令和2年10月29日に109円
令和3年4月30日に20円
令和3年7月29日に150円
と、合計955円の微々たる金額ではあるが、幸盛にとっては望外のくすぐったいお金である。そこで、この金額の根拠はいかなるものかと、頭を少々悩ませてみた。
最初の635円が最も多い金額だが、もしかしたら税込み660円の定価で電子書籍を買ってくださった方が幸盛以外に一名いて、印税は70%だから二人分で840円になるが、差額の205円は、電子書籍の奥付にⒸYukimori Yamanaka+CLAPとなっていることから、ちゃっかりCLAP様が懐に収められたのではなかろうか?
他の微々たる金額は、kindle unlimited会員の方が読んで下さったページ数によるものらしい。ネットで調べたら、ページ数×約0・5円が印税みたいだが、月額980円(で読み放題)の会費で、幸盛に印税を約一年間で955円(320円?)も支払えるものだろうか?
ところで、kindleダイレクト・パブリッシングチームなる部署から、時々次のようなメールが送られてくる。
kindleダイレクト・パブリッシングをご利用いただきありがとうございます。
KDPセレクトグローバル基金の二〇二一年8月の金額は約43億5千2百7万円となりました。
この8月も、米国、英国、およびドイツで最も本が読まれた著者の皆様、および最も読まれた本を『KDPセレクトオールスター』として表彰いたします。すべてのボーナスは、該当する月の既読KENP(Kindle Edition Normalized Pages)に基づいて支払われます。さらに、子供向け絵本のボーナスを新たに追加します。米国で最も多く読まれた上位100冊と、英国での上位25冊にボーナスが支給されます。
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お客様により満足していただけるサービスをご提供できるように努めてまいります。今後ともKDPをよろしくお願いします。
kindleダイレクト・パブリッシングチーム
グローバル基金とは、世界中のunlimited経由で得た収益の合計らしいが、いずれにしても、幸盛は「もらえるものは有り難くいただきます」という俗人だから、「ボーナスとは何ぞや、セレクトオールスターとは何ぞや」等と、事細かに追求・精査するつもりは毛頭無い。