黒いゴミ袋
この町はまるで「黒いゴミ袋」だ。
真っ黒で、どことなく怪しく、嫌な雰囲気だ。
高い鉄柵で周囲の町と隔てられたこの「ソウボウ」の町。
ここに集まるものは、皆袋の外でゴミと呼ばれたもの達だ。
この町へ入る方法は1つ。
それは、高い鉄柵をひたすらよじ登ること。
ガラクタを寄せ集めたように不恰好な建物が並ぶこの町は、昼間だというのに薄暗く、町を歩く人間は、皆目つきが悪く、何かを警戒しているようだ。
無論、この町に秩序はない。
ゴミと、ゴミを掃除する別のゴミがあるだけだ。
町の中心には「清掃局」のビルが聳え立っている。
巨大なビル、数百人を超える作業員。
その規模に似合わず、彼らの仕事は、死体を回収する。ただそれだけ。
回収した死体がその後どうなるかはわからない。
その清掃局のビルを囲むように、この町は、東西南北4つの地域に分けられている。
北から時計回りに、人口が1番多い「そ番町」商業施設が多く入る「う番町」多くの清掃局員が住む「ぼ番町」そして、強盗、殺人の発生率が1番高い「第2う番町」
4つの町に壁などの隔たりはなく、町には、巨大な輪を落としたように、清掃局の回収車の通り道となる1本の道路が通っている。
建物の密度が高い町の中にいては、消して目立つことはない巨大なビル。
だが、鉄柵の外から眺めるそのビルは、まさにこの町の象徴だ。