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北の怪奇譚  作者: 紫月 朔夜
5/10

四話

北海道にしては暑い夏が続く。

気持ちの良い夏に慣れ親しんでいるどさん子には、少々厳しい。

そして今日は、この店には珍しく8人のマダム達がひしめきあっている。なかなかにかしましい。


マダム達は、八雲さんと紫水さんにまるで好きな芸能人を見つめる乙女のようなうっとりとした眼差しを向けていた。

さすがイケメンは別に宣伝しなくてもファンが付くのだなと感心していると、どうやらそういう話しでもないらしい。


「私達皆同じ住宅街に住んでいるんですけど、ここ何年か不幸な事が続いて、しかも同じ並びにあるお家ばかりで、まるで何かに呪われているみたいで、それで皆さんで相談して私達が代表でここに来たんです。」森と名乗った奥様が話しはじめると、それをかわきりに次々と奥様達が話しはじめる。

「そうなんです!私達札幌郊外の住宅街に住んでいるんですけど、そこの区画整理されている住宅地の必ず端から二番目のお宅に不幸が起きるんです!」ちょっと興奮した感じで、小泉と名乗る奥様が話す。

「はじまりは私の家のお隣でした、突然出張していたご主人が交通事故で亡くなったのです。」そう言って須賀と名乗る奥様は自分の手をぎゅっと握りしめた。

「それから半年後に、その亡くなったお家のお向かいさんが離婚なさって奥さんが出て行ったのです。その後一人残っていたご主人も出ていきました。」

「それからすぐに裏のお家のご主人が仕事帰りに大怪我をして入院しました。奥さんも3ヶ月ぐらいすれば退院するとおっしゃって待っていらしたんですけど、なかなか退院できなくていつの間にか奥さんも子供を連れて出て行って家も売りに出されました、そしてお向かいのお家のご主人が突然病気で亡くなったのです。」

そう言った奥様は、中垣と名乗った。

それをうけて北村と名乗った奥様が

「その後は、端から二番目のお宅でご主人が怪我をしたり亡くなったりが続きました。あまりにも続くので回りのお宅やそのラインのお宅で、信心深いお家の方々が神社から御札をもらってきて飾りました。それが良かったのかわかりませんが、その後しばらくは何も起きず落ち着いていたのです。」そう言うと疲れたように項垂れる。

「でも最近また始まったみたいで、私の隣のお宅のご主人が突然亡くなったのです。それをかわきりにまた同じラインでご主人に不幸が起きるようになったのです。そして今度は、ご主人を亡くされて一人残っていた奥様が亡くなったのです。」そう遠山と名乗る奥様が何かに怯えるように話した。

「私、見たんです。私のお隣は離婚して空き家になっているのですが、私の家の2階から隣の2階がドアも開いていて良く見えるのですが、そこを黒い人影がうろうろしているのを見てしまったのです。なるべく見ないようにしていたんですけど、最近2階の窓からうちをうかがっているのに気付いてしまったんです、それでカーテンを閉めて、昼でもカーテンを開けてません。」今まで黙っていた小坂と名乗る奥様がそう言うと、堺と名乗る奥様が

「私もそのお宅の隣に住んでいるのですが、家からも隣の2階が見えて私もうろつく人影を見たんです。」そう言って自分の腕を擦って、隣に座っている小坂さんに寄り添った。


「やっぱり何かに呪われているんでしょうか?私達どうしたらいいんでしょうか?、もう引っ越さないと駄目でしょうか?でも皆さん持ち家なので、簡単に引っ越す事も出来ないんです。」そう森さんが言うと、他の奥様達も頷き八雲さんと紫水さんをすがるような目で見つめる。


「うーん、聞いた感じだと問題なのはやっぱりそのラインでしょう、呪いとはちょっと違うのですが、直接見て調べてみない事には何とも言えません。こちらにも色々用意する事があるので、明日そちらに伺います。」そう八雲さんが言うと、奥様達はほっとしたように顔を綻ばせ。

「よろしくお願いいたします。」と頭を下げて、良かったねと話しながら店を出て行った。


「さて、これは冥様の出番かもしれないですね・・・」と八雲さんが何か考えるように呟くと、「げっ!」と紫水さんがこぼした

「紫音、やっとオーナーに会えますよ。優しい方ですけど何があっても邪魔しないで下さいね。」

「えっ!僕も行っていいんですか?」

「当たり前です。明日はちょっと厳しくなりそうですから色々用意しないと、多分かなり歩く事になるでしょうからそのように準備しておいて下さいね。」そう言って八雲さんは上に上がって行った。

「あーマジかー、やれやれ明日は忙しくなりそうだな。紫音、言葉使いには気をつけろよ!あともう閉めるから店のプレートは外しておいてくれ。」そう言い残し紫水さんも上に上がる。


僕はなんか大変な事になりそうだなと思いながらも、やっとオーナーに会える事にわくわくしていた。






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