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北の怪奇譚  作者: 紫月 朔夜
4/10

三話

朝から紫水さんの機嫌が悪い。

「なんで、なんでもかんでも書くんだよ!」

「正直に全て書けと言われましたから。」

「だからって、普通ばばあとか書いたらまずいって解るだろう!」

「あー、僕も一応八雲さんに聞いたんですよ。でもそのままでいいって八雲さんが言うから・・・・。」ちらっと八雲さんの方をうかがう。

「紫音はあったことそのままに記録するのが仕事だ、それは紫水も知っている事だろう?なのに良く考えず発言したお前が悪い。」

「くそ~、おかげでオーナーに怒られたんだからな。だってよ、紫音の生い立ちの事だろう?自分の事を書くとは思わないだろう?」紫水さんはいまだぶつぶつ言っているが、八雲さんが気にしなくてもいいと言うので、僕は聞かなかった事にする。


「八雲さん、どこかにいいアパートありませんかね?」最近の僕の悩み事だ。

「どうした?何かあったのか?」

「ここに来てからお二人に感化されたようで、今まではただそこに入るなとか感じるだけだったのですが、今は霊が見えるようになってしまってちょっと困っているんです・・・一週間前ですが、帰り道に信号機の下でただずんでいる男がいたんです、青になっても渡らなくてなんで渡らないのだろうとつい見てしまったんですね、向こうも僕が見えている事に気付いたらしくこっちを見たんです、その顔がぐちゃぐちゃに潰れていて、ヤバイと思いすぐ目をそらして歩き続けたのですが、僕の後をずっと着いてくるんですよ。」

「あれ?お前に霊避けの守り渡してなかったっけ?」復活した紫水さんが聞いてくる。

「渡されてないですよ。」

「あ~ごめんなー、それは俺が悪かったわ~。」

そんな軽い紫水さんをつい恨みがましい目で見てしまう。


「はぁー、それはもういいですけど、その男はその後もずっと着いてきて僕は払いかたが解らないので仕方なくちょっと行ったところに神社が在ることを思い出して、その神社に向かい鳥居をくぐったんです、どうやらその男は鳥居をくぐる事が出来ないらしく、鳥居の所で立っていました。僕は手水舎で清めて本殿でお祈りをして、入ったときとは違う所から出て後ろを確認して家に帰りました、わりと上手くいったんじゃないかと、馬鹿みたいにちょっと得意になってましたよ。」

「まあでも、まっすぐ家に帰らなかったのはよく考えたんじゃないか!」八雲さんはそう言うと、僕の肩をポンポンとたたいた。


「僕もそれで上手くかわせたと思ったんです、でもその二日後夜に何気なく窓をみたんですね、その時窓の外を歩く人影がカーテンに映ったんです。人が通ったんだなーとぼんやり考えて、ここがアパートの3階だということに気付いたんです。何だか嫌な感じがして窓と玄関の所に盛り塩をして、カーテンの隙間から覗いてみるとあの男が窓の外にいて中を覗きこもうとしてました。中には入ってこれないようで、朝に窓をみると手形が窓ガラスにくっきりと付いていました。もうあそこに住むのは無理そうなので、どこか良い所がないかなと思って・・・・」


「それなら俺達と一緒に住むといいよ!ごめんな、もっと早くに気が付くべきだったね。この店の上の階は住居になっていて部屋もあるから、すぐにでもくるといい。」そう優しく八雲さんが言ってくれる。

「本当にな、俺達にしては珍しく後手に回ったよな。一番最初に気がつかなければいけない事だろう。もう困っている事はないのか?」紫水さんが申し訳なさそうに聞いてくる。

「いえ、いまのところはそれ以外はないです。」

「そうか、これは霊避けの守りだ、常に身につけておいてほしい。」紫水さんが僕に白金でできたフクロウの形をしたペンダントをくれる、フクロウの目には紫水晶が埋め込まれていた。

「じゃあこれから紫音のアパートに行こうか、一応さっき紫音にくっついていた物は祓ったから、アパートにまとわりついている物を徐霊しよう。」八雲さんがにっこり微笑む。


「えっ!一緒に行ってもらえるのですか?」

「当たり前だろう、俺達は仲間なんだから。」八雲さんが言うと紫水さんも頷く。

「う、嬉しいです。」


そして、そのまま僕のアパートに皆で行き八雲さんがあっという間に徐霊をして、紫水さんと八雲さんに急かされながらも、もともと少なかった荷物をまとめるのを手伝ってくださり、一週間後には完全にお店の上に移り住んだ。

一緒に住むといってもルームシェアみたいなもので、共用の居間と台所があって、それぞれトイレとバス付きの個室があり、一日中一緒にいるけどプライベートは守られて、なかなか快適に暮らせている。


これでやっと僕も仲間になれたような気がするが、時々良いように使われているような気がするのは、多分気のせいだろう・・・







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