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四十九話 ルパートに感謝しなければ ①

副題にはその回の総括的な言葉を文中から拾う事にしてるんですが、今回のは総括とかでなく完全に私の気持ち。


前回のあらすじ——


杏奈であった時に感じてたこと、思いこんでたこと、見えなくなってた物

全部あの日のコルの言葉があったからやっと見えたの。ありがとう、あなたのお陰。私やっと自分に向き合えた。そのせいで悩みも増えたけれどもね

架空の世界の恋すらも遠い世界の話だったのに、急にこんな真剣な現実、しかも諸々すっ飛ばして結婚の話!

0日婚って流行ってるらしいけど、私容認出来る派じゃないみたい、理解不能! 飽きる程恋愛してきた猛者しか無理なんじゃ無い? あれ。知らんけど

って、コル? どうしたの死ぬの? 不安になるわその体型で心臓らへんを押さえるとか……

待ってよ、まだ上着の事謝ってないし、それにあの夜のあの人は、あなた、だったんだよね?

 アンナは悩んでいた。


 悩みと言うのはもちろん、あの3人から受けた求愛のことだ。通算三十路を超えて2度目の人生ではあるが、色恋沙汰に実戦経験は無く、あると言えば乙女ゲームか少女漫画から得たペラ一の知識だけだ。


「プレイ中は双子の指示に従ってただけだし、誰が好きとか考えた事もなかった……。それがここに来て後1週間足らずで、最終的には結婚まで答え出さないといけないって急ピッチ過ぎない?」

 

 アンナは自室で頭を抱える。


「確かに告白されてドキドキはしたわよ? でもそれが好きってこと? じゃ全員好きだわ、悪女エンドだわ。そうじゃ無いよねきっと、まず好きってどういう事かから始めないといけないのに1週間で答えなんて出ないでしょ……誰かに聞こうにもお姉様に昨日チラッと聞いてみたら恋愛のれの字の時点で目つき変わったから無理そうだし……」


 姉の中のアンナへの蟠りは消えた様だが、守護天使としての顔は未だ持ち合わせているようで、これ以上は再び殺戮の天使を呼び起こしかねないと思い、アンナは姉に相談することを諦めて溜息を吐いた。


「結局この世界でも相談出来るような友達って私いないのよね……」


 そこまで言って、昨日アンナが全てを話し終えるまで優しく見守ってくれたコルの事を思い出す。


「……コルなら何か言ってくれたかも知れないけど……アイテム(ストームボム)もないしそう簡単に会えないんだよなぁ……気軽に連絡取れないって不便」


 アンナは長椅子に身を投げ出して、昨日のコルの様子を思い出す。


「急に帰っちゃって……何か変だった。結局破いちゃった上着のこと謝れなかったし、あれがコルの物か、あの時のあの人がコルだったのかも……」


 昨日のコルと雨の庭の人物を思い返していた時、部屋のドアがノックされた。


「お嬢様、ご来客でございます」

「……私に?」


 約束もしていないし知り合いらしい知り合いもいないのに誰だろうと応接間に向かうと、そこに通されていたのは柔和な笑みを浮かべたマティアスと、悲壮な表情をした何処かで見たことのあるガタイの良い男だった。


(マティアス……なんで……その前に隣の男は誰? どっかで見たことある気もするけど……)


「——ゴリモブ!」


 ハッと閃いてアンナは部屋に入るなりそう叫んでしまった。アンナに気付いて立ち上がろうとしていた2人が、大声と謎のワードに驚いて中腰で一瞬固まった。


「あ……ごめんなさい、急に大声出して……ご機嫌よう、マティアス卿と、えーと……?」


「……お久しぶりです。ご連絡もせず不躾にお伺いしてすみません。このルパートがどうしてもメレディアーナ嬢に謝罪したいとのことで共に伺わせて頂きました」


 そんな名前だったか、とアンナが思っていると、中腰姿勢で固まっていたルパートがバッと姿勢を正した。

 

 あのガーデンパーティーではそれどころじゃなかったのでデカイというだけで気に留めなかったが、いざ対峙してみると身長が2㍍近くある筋肉質の大男だった。


 この体格の男の太い腕を細身の身体で止めたマティアスを思い返してアンナは改めて感心する。そして小柄な自分の無謀に改めてゾッとする。


「先日の! ピオヘルム伯爵邸でのガーデンパーティーにおきまして!」


 と、意識をあらぬ方へやっていた所、ルパートが大声を張り上げ出した。


「サーヴィニー公爵閣下が御息女であらせられますメレディアーナ嬢におかれましては、此度の私の不敬なる行いにより誠に——」


「ちょ、ちょちょ、黙って黙って! ダメだってこんな修羅の巣窟で私に不敬とかそんな危険なワードを大声で!」


 今日は父も姉も在宅している筈なので、もしも耳に入ってしまってはせっかく眠りについてくれた阿修羅と狂気の堕天使を起こしかねない。


 アンナは慌ててルパートの言葉を遮ると、アンナの分のお茶を運んできたメイドに少しの間出掛けてくる旨を言付けて、2人を連れて屋敷の外へ出た。


「危ない……聞かれなかったわね……お姉様に至っては姿を見られただけで……って事もまだあるわよ」


 前庭を抜けて門の外、姉の部屋からは死角になる道まで出て、何事かと目を丸くする2人を前にアンナは一息吐いた。


「突然ごめんなさいね。って突然きたのはそっちなんだから仕方ないと思うんだけど。で、何の御用でしたっけ?」


 マティアスはアンナの言い草に苦笑しながら、再度用件を伝える。


「先日のピオヘルム邸での一件で、ルパートの方から謝罪を申し上げたいとの事で一緒にお伺いした次第です」

「先日は大変なご無礼を働いた事を心よりお詫び致します! 女性に乱暴を、それも公爵閣下の御息女でいらっしゃったとは露も知らず、誠に失礼致しました!」


 ルパートはその体躯に見合わない程恐縮して、これでもかと言うほど身体を折りたたんで謝罪した。


「そんな改まってもらわなくても……うちはもう名ばかり公爵な所あるし大した立場じゃ……。貴方もお酒が入ってた上に私が挑発したのもいけなかったから、もう何にも気にしてないわ」


 アンナがそう言うと、ルパートは頭をあげて今にも泣き出しそうに顔をぐしゃっと歪ませた。


「……なんと……お心の広い……その温情に感謝を、なんと、申しあげたら……」


 ううっ、と嗚咽を漏らし始めた巨体の漢にギョッとしてしまったアンナにマティアスがすすっと寄って耳打ちする。


「彼、あの体躯に身合わず気弱というかほんの少し情緒が不安定な所がありまして。ついお酒に頼って行き過ぎた事をしてはまた不安定になって……の繰り返しなんです。騎士としての実力は折り紙付きなのですが、精神面で……。

 今回も酷い落ち込みようで、貴女がご不快になられるかとは思ったのですが、あまりにも見ていられなかったので……付き合わせてすみません」


「不快ってことはないし構わないけど……大変ね貴方も」

「騎士仲間ですし、根は良い男なので放って置けないんです」


 にこっと笑ったマティアスは相変わらず優しい人だ。


「ルパート、メレディアーナ嬢も驚いてらっしゃるからそろそろ落ち着こうか。謝罪も受け入れて頂けたのだし、今日はこれで……」

「いや、お心の広さに甘えて言葉一つで謝罪とするには何とも心苦しい。何か他に——」

「もういいんだってば……」

「……ルパート、メレディアーナ嬢もこう言って下さってるから、今日はもう——」

「いいや! それでは俺の気がすまない! 何か別にお詫びをしなければならないだろう! 分からんかマティアス!」


 泣きながら半分怒り始めた情緒不安定な巨体の男に、まるで小さな女の子に接するように優しく諭すマティアスの心中を察して、アンナは苦笑いした。


「あー……本当に気にしてないから、もういいのよ? 謝罪だって私よりもレイチェルさんや、あの、えと……もやし伯爵にしてさしあげて?」

「……もやし?」

「ああ、そうでした!」

 何かを思い出したようにマティアスが声をあげた。

場面は考えてあったんだけど、そこにどう繋げるねんって所でちょっと詰まったったんです。マジ急に名前のついたモブキャラ達とせっせとシナリオ考えたあの日の自分にシャインマスカットで乾杯したい。


お読みいただきありがとうございました。

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